2025年6月28日、CNBCが報じたところによると、フォーチュン500企業、ウォール街銀行、決済大手がステーブルコインを主流に押し上げている。
USDC発行者CircleのIPOが実施され、6月中に最大750%上昇した。CoinbaseはeコマースプラットフォームのShopifyとUSDC決済の提携を発表した。決済会社Fiservは年間900億件の取引処理に対応するステーブルコインを発表した。
Mastercardは今週、マルチトークンネットワークで4つのステーブルコインサポートを発表し、24時間決済を約束している。
JPMorganは米ドルではなく商業銀行預金に裏付けられたJPMDトークンを立ち上げた。米国上院はGENIUS法と呼ばれるステーブルコイン規制枠組みを可決した。同法案には消費者保護、発行者準備金要件、マネーロンダリング防止ガイダンスが含まれる。
ドナルド・トランプ大統領の家族運営企業World Liberty FinancialがドルペッグトークンUSD1を発行している。ニルソンレポートによると、2024年のマーチャント決済処理手数料は記録的な1872億ドルに達した。
From: Stablecoins go mainstream: Why banks and credit card firms are issuing their own crypto tokens
【編集部解説】
2025年6月のステーブルコイン市場は、まさに転換点を迎えています。これまでクリプト業界の内部で使われていたデジタル通貨が、ついに伝統的金融機関の中核戦略に組み込まれ始めたのです。
規制環境の劇的変化
最も注目すべきは、米国上院で可決されたGENIUS法です。この法案は、ステーブルコイン発行者に準備金の1対1保持や定期監査を要求しています。これにより、これまで規制の空白地帯にあったステーブルコインが、初めて明確な法的枠組みの下で運営されることになります。
金融インフラの根本的変革
特に興味深いのは、JPMorganが展開するJPMDトークンのアプローチです。従来のステーブルコインが現金や短期国債で裏付けられるのに対し、JPMDは商業銀行預金を担保としています。これは既存の銀行規制の枠内で運営できるため、規制リスクを大幅に軽減できる革新的な設計といえるでしょう。
一方、MastercardとVisaは自社でステーブルコインを発行するのではなく、複数のステーブルコインに対応するインフラ提供者として位置づけています。Mastercardのマルチトークンネットワークは、4つのステーブルコインをサポートし、24時間決済を実現します。
市場拡大の可能性
現在数千億ドル規模のステーブルコイン市場は、今後さらなる成長が期待されています。特に国際送金やB2B決済分野での活用が期待されており、従来の国際銀行間決済システムの非効率性を解決する可能性を秘めています。
潜在的リスクと課題
しかし、急速な成長には懸念もあります。トランプ大統領の家族企業World Liberty FinancialによるUSD1の発行は、政治的利益相反の問題を浮き彫りにしています。また、ステーブルコインの多くが米ドルに連動しているため、米国の金融政策や規制変更が世界的な影響を与える可能性があります。
長期的な展望
今回の動きは、デジタル通貨が投機的資産から実用的な決済インフラへと進化している証拠です。2024年の決済処理手数料が1872億ドルに達した現状を考えると、ステーブルコインによるコスト削減効果は企業にとって無視できない魅力となっています。
この変化は、金融業界全体のデジタル化を加速させ、最終的には消費者の日常的な決済体験も大きく変える可能性があります。ただし、その実現には技術的成熟度の向上と、さらなる規制整備が不可欠でしょう。
【用語解説】
ステーブルコイン
価格の安定性を実現するように設計された暗号資産(仮想通貨)。法定通貨担保型、暗号資産担保型、コモディティ型、無担保型の4種類に分類される。
GENIUS法
米国上院で可決されたステーブルコイン規制法案。発行者に1対1の準備金保持、定期監査、マネーロンダリング防止対応を義務付ける。
レイヤー2ネットワーク
既存のブロックチェーン(レイヤー1)上に構築される第二層のネットワーク。取引速度の向上とコスト削減を実現する技術。
マルチトークンネットワーク(MTN)
Mastercardが開発する複数のデジタル資産に対応するプライベートブロックチェーンネットワーク。機関投資家向けに24時間決済を提供する。
Kinexys
JPMorganのブロックチェーン部門(旧Onyx)。JPMコインやJPMDトークンの開発・運営を担当する。
【参考リンク】
Circle(外部)
USDC発行者。世界で最もライセンスを取得したステーブルコイン企業として、規制準拠のデジタル通貨サービスを提供している。
Coinbase(外部)
米国最大級の暗号資産取引所。Baseネットワークの運営やUSDC決済ソリューションの開発を行っている。
JPMorgan(外部)
米国最大級の金融機関。ブロックチェーン技術を活用した金融サービスの開発を推進している。
Fiserv(外部)
年間900億件の取引を処理する世界的な決済・金融サービステクノロジー企業。
Visa(外部)
世界最大級の決済ネットワーク企業。ステーブルコイン関連の最新動向を発信している。
【参考記事】
米上院、画期的なステーブルコイン規制法案を可決
GENIUS法の詳細な内容と、ステーブルコイン発行者への規制要件について解説している。
Fiserv Launches New FIUSD Stablecoin for Financial Institutions(外部)
Fiservが金融機関向けに新しいFIUSDステーブルコインを立ち上げ、既存の銀行・決済インフラに統合する計画を発表している。
仮想通貨領域に本格参入:注目集まるJPMDトークンの全貌(外部)
JPMorganのJPMDトークンの技術的特徴と既存ステーブルコインとの違いについて詳細に解説している。
米ドル預金トークン「JPMD」をイーサL2「Base」で発行へ(外部)
JPMorganがBaseネットワーク上でJPMDトークンを発行する計画と、その技術的詳細について報じている。
How Coinbase and Shopify Are Redefining Cross-Border Payments(外部)
CoinbaseとShopifyのパートナーシップによるUSDC決済ソリューションの詳細と、越境決済への影響について分析している。
Visa and Bridge Partner to Make Stablecoins Accessible for Everyday Purchases(外部)
VisaとBridgeの提携により、ステーブルコイン連動カードが日常的な決済で利用可能になることを発表している。
【編集部後記】
今回のステーブルコイン主流化は、私たちの日常的な決済体験が根本的に変わる可能性を秘めています。海外送金の手数料が劇的に下がったり、24時間いつでも瞬時に決済が完了する未来が現実味を帯びてきました。
皆さんは普段の買い物や送金で、手数料の高さや処理時間の遅さにストレスを感じたことはありませんか?また、企業の経営者や財務担当の方であれば、決済コストの削減は切実な課題かもしれません。
このステーブルコイン革命が進む中で、どの企業のソリューションが最も実用的になるのか、規制はどう整備されていくのか、一緒に注目していきませんか?変化の最前線を追いかけることで、新たなビジネスチャンスも見えてくるかもしれません。