SBIホールディングスは2025年8月22日、Web3メディア事業を展開する株式会社CoinPostの株式過半数を取得し、連結子会社とする株式譲渡契約を締結したと発表した。本グループ・ジョインの完了は2025年10月1日を予定している。
CoinPostは国内最大級の暗号資産・Web3特化メディア「CoinPost」の運営とアジア最大級のWeb3カンファレンス「WebX」の企画・運営を手掛ける。同社はYahoo!ファイナンスとの情報連携も行っている。
SBIグループは従前よりSBI VCトレードをはじめとするサービス展開、HashHubやDeFimansなどのWeb3ベンチャーのM&A、Ripple社やCircle社への投資や提携を進めてきた。また傘下にSBIネオメディアホールディングスを設立し、ネオメディア生態系の構築を目指している。
今回の買収により、SBI証券が2025年8月25日から開始予定の店頭CFDサービス「SBI CFD」での情報提供や、SBIグローバルアセットマネジメントとの連携、HashHub社との協力によるリサーチ・レポート提供などの取り組みを推進する。
From: 株式会社CoinPostの株式の譲渡契約締結に関するお知らせ
【編集部解説】
今回のSBIホールディングスによるCoinPostの過半数取得は、国内Web3メディア業界における大きな再編の始まりを意味しています。
この買収の本質は、単純なメディア企業の買収ではありません。SBIグループが推進する「メディアと金融の融合」戦略の象徴的な動きです。従来の金融メディアは情報提供に留まっていましたが、CoinPostのグループ入りにより、情報提供から投資実行まで一気通貫のエコシステムが構築されます。
特に注目すべきは、SBI証券の「SBI CFD」サービス開始と今回の買収のタイミングです。8月25日から暗号資産、株価指数、コモディティが1つの口座で取引可能になるサービスと、その3日前の8月22日に発表されたCoinPost買収は、明らかに連動した戦略です。これにより読者は情報収集から実際の投資まで、SBIエコシステム内で完結できるようになります。
Web3カンファレンス「WebX」の影響力も軽視できません。2023年に開始されたこのイベントは、既にアジア最大級のWeb3カンファレンスに成長し、今年8月25-26日の東京開催では180社以上の企業が参加します。SBIのグローバルネットワークとCoinPostのイベント運営力の組み合わせは、日本をアジアのWeb3ハブとしてポジショニングする上で極めて重要な意味を持ちます。
しかし、この買収には潜在的なリスクも存在します。メディアの独立性確保が最大の課題です。各務代表取締役は「メディアとしての独立性と公正性を厳格に維持する」と明言していますが、親会社の金融サービスを推奨する記事が増加したり、競合他社の情報が制限される可能性は否定できません。
長期的視点では、この動きは日本の金融DXを加速させる触媒となる可能性があります。Yahoo!ファイナンスとの情報連携で一般層への暗号資産情報普及が進む中、SBIグループのリソースが加わることで、より幅広い層への啓蒙活動が期待されます。
また、AI技術の積極的活用も明言されており、今後はパーソナライズされた投資情報提供や自動翻訳による海外情報の迅速な国内配信なども実現するでしょう。これは情報の非対称性解消という同社の使命達成に向けた重要な一歩となります。
【用語解説】
Web3
ブロックチェーン技術をベースとした分散型インターネットの概念。従来の中央集権的なWeb2.0に対し、ユーザーがデータやデジタル資産の所有権を持つ次世代インターネットを指す。
SBI CFD
SBI証券が2025年8月25日から開始予定の店頭差金決済取引サービス。暗号資産、株価指数、コモディティを1つの口座で取引可能とする。
M&A(企業買収・合併)
Mergers and Acquisitionsの略。企業の合併・買収を指し、企業価値向上や事業領域拡大を目的として実施される。
セキュリティトークン
有価証券などの権利をブロックチェーン上でデジタル化した金融商品。株式、債券、不動産などの資産をトークン化したもの。
デジタルアセット
デジタル化された資産の総称。暗号資産、NFT、セキュリティトークンなど、ブロックチェーン上で管理される資産を含む。
ネオメディア生態系
SBIが提唱する新しいメディア戦略で、プラットフォーム、IPコンテンツ、タレント、先端技術、制作機能を組み合わせて「発掘」「拡散」「投融資」を連動させるシステム。
【参考リンク】
CoinPost(外部)
国内最大級の暗号資産・Web3特化メディア。ビットコイン、イーサリアム等の価格情報、ブロックチェーン技術に関するニュースを配信。
SBIホールディングス(外部)
1999年創業の金融サービス会社。証券、銀行、保険を中心とした金融サービス事業に加え、資産運用事業を展開する。
WebX(外部)
CoinPost主催のアジア最大級Web3カンファレンス。世界各国からWeb2・Web3の有望プロジェクトや企業が集まる国際イベント。
【参考記事】
Japan’s Giant Financial Conglomerate SBI Holdings Partners with Startale Group(外部)
SBIホールディングスがStartale Groupと提携してトークン化株式とRWA(現実資産)を対象とした24時間365日稼働のブロックチェーン取引基盤を共同開発することを発表。
SBI Holdings Company Profile – Wikipedia(外部)
SBIホールディングスの会社概要と歴史を詳細に解説。1999年の創業以来の事業拡大、地方銀行統合による第4のメガバンク構想など。
CoinPost Corporate Profile(外部)
CoinPost社の企業概要と成長軌跡。2017年創業から国内最大級の暗号資産メディアに成長し、月間訪問者数で世界3位を継続している実績を紹介。
【編集部後記】
今回のSBIによるCoinPost買収は、単なるM&Aを超えて「メディアと金融の境界が曖昧になる未来」を示しているのではないでしょうか。情報収集から投資実行まで一つのエコシステム内で完結する世界が現実になろうとしています。
みなさんは、メディアの独立性と利便性のバランスをどう考えますか?また、AI技術を活用した個人向けカスタマイズされた金融情報提供が実現した時、私たちの投資判断はより良いものになるのでしょうか。それとも、情報の偏りや依存のリスクが高まるのでしょうか。
Web3時代の金融メディアがどのような形に進化していくのか、みなさんの視点もぜひお聞かせください。