Last Updated on 2024-05-13 18:13 by 荒木 啓介
カリフォルニアの連邦裁判所は、イーロン・マスクのX(旧Twitter)がイスラエルのBright Dataに対して提起したデータスクレイピングに関する訴訟を棄却した。Xは、Bright DataがXからデータをスクレイピングし、X Corp.のアンチスクレイピング技術を回避する複雑な技術手段を使用して販売していると主張していた。また、Bright Dataが利用規約と著作権を侵害しているとも主張していた。
データスクレイピングは、公開されているウェブサイトから自動プログラムを使用してデータを収集する行為であり、人工知能モデルの訓練やオンライン広告のターゲティングなど、さまざまな目的で使用される。米国では、公開データのスクレイピングは一般的に合法とされている。
裁判官ウィリアム・アルサップは、「X Corp.は、安全な港を保持しつつ、著作権所有者の排他的権利を行使し、Xユーザーのコンテンツを抽出しコピーする者から料金を徴収しようとしている」と述べ、訴えを棄却した。また、ソーシャルネットワークに公開ウェブデータの収集と使用に関する完全な制御を与えることは、「公共の利益に反する情報独占の可能性を生じさせるリスク」があると指摘した。
Bright Dataは、メタとXに対する勝利が、オンライン上の公開情報が「私たち全員に属しており、公共へのアクセスを否定するあらゆる試みが失敗することを示している」と述べた。同社は、ログインなしで誰でも見ることができる公開データのみをスクレイピングしているとしている。
【編集部追記】
用語
データスクレイピング: ウェブサイトから自動的にデータを収集・抽出する技術
Bright Data:Bright Dataは世界で6,000社以上の企業にデータを提供。同社の2022年の売上高は約1億9,000万ドル。ソーシャルメディアのデータスクレイピング市場規模は2023年に約5億ドルと推定されています。
【ニュース解説】
カリフォルニアの連邦裁判所は、イーロン・マスク氏のX(旧Twitter)がイスラエルのBright Dataに対して提起したデータスクレイピングに関する訴訟を棄却しました。Xは、Bright DataがXのデータを不正に収集し、そのアンチスクレイピング技術を回避していると主張していました。しかし、裁判所はこの訴えを退け、公開データの収集と使用に関する完全な制御をソーシャルネットワークに与えることは、情報独占を生じさせ、公共の利益に反するとの見解を示しました。
データスクレイピングとは、公開されているウェブサイトから自動プログラムを使用してデータを収集する行為を指します。この技術は、人工知能モデルの訓練やオンライン広告のターゲティングなど、多岐にわたる目的で利用されています。米国では、公開データのスクレイピングは一般的に合法とされており、LinkedInを巻き込んだ長期にわたる法的闘争の末、2022年にこの点が確認されました。
この裁判の結果は、オンライン上の公開情報の取り扱いに関する重要な議論を提起しています。Bright Dataのような企業が公開データを収集する行為は、情報の自由な流通を促進し、研究やビジネス、さらには人工知能の発展に貢献する可能性があります。一方で、データの収集と使用に関する規制やガイドラインが不十分な場合、ユーザーのプライバシーや著作権の侵害、情報の不正利用といったリスクも懸念されます。
この訴訟の棄却は、公開データへのアクセスを巡る法的な枠組みや社会的な合意形成に影響を与える可能性があります。特に、デジタル時代における情報の自由な流通と個人の権利保護のバランスをどのように取るかが、今後の大きな課題となるでしょう。また、この判決は、他のソーシャルメディア企業やデータ収集を行う企業にとっても、そのビジネスモデルやデータ管理の方針を見直す契機となるかもしれません。
長期的には、このような訴訟や裁判所の判断が、データの収集と利用に関する国際的な規制や標準の策定に向けた動きを加速させることにも繋がる可能性があります。情報技術の進展とともに、データの扱いに関する倫理的、法的な議論はますます複雑化しており、適切なガイドラインの確立が求められています。
from Elon Musk’s X loses lawsuit against Bright Data over data scraping.