KDDI株式会社と日本電気株式会社は、サイバーセキュリティ分野の強化を目的とした合弁会社United Cyber Force株式会社を設立し、2025年11月28日に活動を開始する。同社設立は2025年5月に締結した両社の協業の一環である。
近年、国内外でサイバー攻撃による被害が拡大しており、日本企業もグローバルサプライチェーンを含めたリスクに直面している。United Cyber Forceは、日本政府が推進する能動的サイバー防御領域において、政府機関や法人企業向けにグローバルなサイバーセキュリティソリューションの企画・提案を行う。
同社は東京都港区高輪に所在し、代表取締役社長は中谷昇が予定されている。資本金は5,000万円で、株主構成はKDDIとNECが各50%である。両社は今後、グループ会社である株式会社ラックとNECセキュリティ株式会社と共に、能動的サイバー防御対応の体制構築を進める。
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サイバーセキュリティ分野の強化に向け合弁会社を設立
【編集部解説】
KDDI株式会社とNEC株式会社が設立したUnited Cyber Force株式会社は、日本国内外のサイバー脅威に対応し、セキュリティ分野の基盤強化を目指す合弁事業です。この背景には2025年5月に両社が締結した協業の流れがあり、最新のサイバー攻撃に直面する企業や政府機関の防衛力向上が求められています。
今年5月に日本で成立した「能動的サイバー防御」関連法は、従来の受動的対策から攻撃に先んじて対応する事前防衛の枠組みを初めて法的に認めました。これにより日本政府はサイバー脅威に対して予防的なサイバー作戦や、攻撃者の活動妨害を実行できるようになりました。国家主体による防御力の強化は、外交・地政学的リスクへの対策を含め、企業・公共インフラの信頼性向上にも資する動きです。
UCFはKDDIのAI基盤「WAKONX」とNECの「BluStellar」など、両社とグループ会社が保有する技術・ノウハウ・海外展開力を結集し、情報分析や脅威検知、レスポンスを知性化させるセキュリティ運用体制の構築を進めます。グローバルに拠点を持つラック、NECセキュリティも連携し、国内外におけるセキュリティ監視・運用の枠組みを拡張します。
一方、こうした能動的サイバー防御の法制化・事業化には社会的課題も伴います。攻撃側に先立つ情報収集や妨害行為は、国家の安全保障と個人のプライバシー権とのバランスを慎重に管理する必要があり、監督体制や民間との情報共有ルール整備が今後の焦点となります。
今回のUCF設立は、日本のサイバー領域が欧米主要国と同等の防衛体制、国際協力を模索する長期戦略の延長線上にあります。サイバー空間の安全性確保は国家・企業・個人すべてに波及し、日本発のグローバルなセキュリティエコシステム形成へ貢献する可能性が高まっています。
【用語解説】
能動的サイバー防御(Active Cyber Defense)
サイバー攻撃に対して、攻撃を受ける前に予防や妨害行動を含む積極的な防御策を講じる考え方。
サイバーセキュリティソリューション
情報システムやネットワークの安全を確保し、外部からの不正アクセスや攻撃を防ぐための製品・サービス群。
【参考リンク】
KDDI株式会社(外部)
通信事業やネットワーク、ICTソリューションを展開する日本の大手通信会社です。
日本電気株式会社(NEC)(外部)
IT・ネットワーク技術、通信インフラ、セキュリティ事業などを展開する日本の電機メーカーです。
株式会社ラック(外部)
サイバーセキュリティ事業や情報リスク管理サービスを扱う日本の専業企業です。
【参考記事】
KDDI, NEC partner for security venture(外部)
KDDIとNECがサイバーセキュリティ合弁事業を開始し、日本市場で能動的サイバー防御の推進を強化している英文記事です。
Japan’s Active Cyberdefense Law: A New Era in Cybersecurity Strategy(外部)
日本政府によるサイバー防御法の成立と企業・政府機関の役割や影響を解説した英文記事です。
Japan’s New Cybersecurity Law Signals More Offensive Posture(外部)
日本の新しいサイバーセキュリティ法の目的や海外反応について伝える英文記事です。
【編集部後記】
サイバー攻撃や情報漏えいのリスクは、”自分には関係ない”、”専門家に任せていれば安心”と思われがちですが、いまや誰にでも関わるテーマです。どんな技術や仕組みも、使う人がどんな未来を望むかによって、その可能性やリスクの広がり方も変わります。
今回のニュースをきっかけに、ご自身の仕事や生活にサイバーセキュリティがどのように関わるのか、一度立ち止まってみませんか?皆さんの目線や気づきを、ぜひご意見をお寄せいただけると嬉しいです。
























