ノースダコタ州で2025年7月下旬、iSightが運航するSupervoloドローンが医療用物資をウィリストンからワトフォードシティまで80マイルの距離を35分で輸送した。
これは従来の輸送手段の半分の時間である。この試験は「プロジェクト・ルーラル・リーチ」の一環として、ノースダコタ大学イノベーションセンターとVantisが主導した。
使用されたドローンは6フィート長、10フィート翼幅で、目視外飛行(BVLOS)により実施された。プロジェクト・ルーラル・リーチは米国経済開発庁のARPAプログラムから資金提供を受けている。
iSightドローンサービスは長距離配送テストのために5万ドルを受け取った。全米初の州全体UASシステムであるVantisネットワークがリアルタイム監視と指揮統制を提供した。
この試験は計画された3つのユースケースの最初のもので、将来の飛行では災害対応と緊急対応者とのパートナーシップを探求予定である。
From:
North Dakota Drone Delivery: “Medical Supplies Transported 80 Miles in 35 Minutes”
【編集部解説】
今回のノースダコタ州での医療用ドローン配送は、単なる技術実証を超えて、農村部の医療格差解決への実用的なアプローチを示しています。
この飛行で最も注目すべきは、管制塔のない複雑な空域での長距離BVLOS運用の実現です。一般的にドローン配送は都市部の管制された環境で行われることが多い中、この試験では低空飛行機や無線通信を行わない航空機も存在する農村空域を横断しました。
80マイル(約128km)という距離は、現在実用化されている医療ドローン配送としては極めて長距離です。従来の地上輸送では90分かかっていた距離を35分で短縮したことで、緊急医療において決定的な時間短縮効果を実証しました。
技術面では、全米初の州全体BVLOS ネットワークであるVantisシステムの役割が重要です。リアルタイム航空機検出と指揮統制機能により、従来の航空管制が届かない地域での安全運航を可能にしています。
このプロジェクトが農村部の医療アクセスに与える影響は深刻です。医療従事者不足と地理的隔離に悩む農村コミュニティにとって、ドローンによる迅速な医薬品・検体輸送は生命線となり得ます。
一方で、航空安全規制や天候条件への対応、運用コストの持続可能性といった課題も存在します。今回の成功を受けて、他州での同様のネットワーク構築や、災害時緊急対応への応用が注目される段階に入りました。
【用語解説】
BVLOS(Beyond Visual Line of Sight)
操縦者が機体を目視できない距離でのドローン運航。従来の目視内飛行に比べて長距離配送が可能だが、安全確保のため高度な監視システムが必要である。
UAS(Unmanned Aircraft Systems)
無人航空機システム。機体、操縦システム、地上設備を含む包括的なドローンシステムを指す。
Project Rural Reach
米国経済開発庁のARPAプログラムから資金提供を受ける農村部医療支援プロジェクト。ドローンを農村医療インフラに統合することを目的とする。
Critical Access Hospital
人口の少ない農村地域に設置される小規模病院制度。25床以下で緊急医療を提供し、地域の医療アクセスを確保する役割を担う。
【参考リンク】
iSight Drone Services(外部)
ノースダコタ州拠点の商業用ドローンサービス企業。47州でサービス展開中。
Vantis UAS(外部)
全米初の州全体BVLOSネットワーク。4,800万ドル投資の安全確保システム。
ノースダコタ大学イノベーションセンター(外部)
起業家精神育成機関。今回プロジェクトの主導組織として活動。
McKenzie Health(外部)
ワトフォードシティの24床Critical Access Hospital。2004年設立。
Northern Plains UAS Test Site(外部)
2013年設立のFAA指定UASテストサイト。全米7カ所のうちの一つ。
【参考記事】
North Dakota Completes Historic 80-Mile BVLOS Medical Drone Delivery(外部)
80マイル・35分飛行データと従来90分配送からの大幅短縮効果を詳述。
UND’s Center for Innovation, partners complete landmark medical drone delivery trial(外部)
ノースダコタ大学公式プレスリリース。プロジェクト背景と今後展開を説明。
North Dakota Completes Landmark BVLOS Medical Drone Delivery(外部)
技術的詳細とBVLOS運航の安全性確保について公式解説。
iSight Drone Services, Northern Plains UAS Test Site, and Vantis collaborate(外部)
参加企業・組織間協力体制と5万ドル資金調達詳細を報じる業界記事。
【編集部後記】
今回のノースダコタでの実証実験は、私たちの身近な医療体験を根本から変える可能性を秘めています。日本でも過疎地の医師不足や救急搬送の時間短縮は深刻な課題ですが、このドローン技術が実用化されれば、離島や山間部での医療アクセスが劇的に改善するかもしれません。
皆さんの住む地域では、緊急時の医療体制はどうでしょうか?もしドローンによる医薬品配送が実現したら、どのような場面で最も価値を感じるでしょうか?技術の進歩が私たちの生活にもたらす変化について、ぜひ一緒に考えてみませんか。