Last Updated on 2024-06-16 10:51 by 門倉 朋宏
サノフィとデナリセラピューティクスが共同開発した筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬候補が中間段階の臨床試験で主要な目標を達成できなかった。この薬は、脳に浸透する小分子で、RIPK1という炎症と細胞死を制御するシグナルタンパク質をブロックすることを目的としている。サノフィは将来の科学会議で詳細な有効性と安全性の結果を発表する予定である。
2018年にサノフィとデナリは神経疾患と炎症性疾患に関する複数の薬剤研究のための提携を結び、このパートナーシップはデナリに対して最大10億ドルのマイルストーン支払いを含む125万ドルの前払い金で開始された。ALS研究は当初、DNL747というデナリの分子に焦点を当てていたが、その後DNL788(サノフィによってSAR443820と改名)に研究の焦点が移された。
ALSに対するフェーズ2試験は305人の参加者を募り、24週間にわたって試験薬またはプラセボを1日2回投与した。この試験の失敗は、RIPK1の阻害がALS治療の正しいアプローチではない可能性を示唆している。しかし、試験の52週間のオープンラベル延長研究から、薬の安全性と有効性についてさらに学ぶことが期待されている。一方、多発性硬化症(MS)に対するフェーズ2試験は174人の患者の登録を完了し、サノフィはこの研究を継続している。
RIPK1をブロックするアプローチがALS治療に効果がない場合、その影響はサノフィとデナリにとどまらない。2021年、エリ・リリーはRigel Pharmaceuticalsとの提携を開始し、そのバイオテックのRIPK1ブロッキング小分子に対して前払い金125万ドルを支払った。この提携の主要プログラムはリウマチ性関節炎に対するフェーズ2試験に進んでいる。
【ニュース解説】
サノフィとデナリセラピューティクスが共同で開発していた筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬が、中間段階の臨床試験で主要な目標を達成できなかったというニュースは、医療界にとって大きな関心事です。この治療薬は、脳に浸透し、RIPK1という炎症と細胞死を制御するシグナルタンパク質をブロックすることを目的とした小分子薬剤です。RIPK1は、体内の組織で炎症や細胞死を調節する重要な役割を果たしています。
この臨床試験の失敗は、ALS治療におけるRIPK1の阻害が効果的なアプローチではない可能性を示唆しています。しかし、この試験の結果が、ALS治療法の研究において重要な情報を提供することは間違いありません。特に、52週間のオープンラベル延長研究から得られるデータは、この薬剤の安全性と有効性に関するさらなる洞察を提供することが期待されています。
一方で、多発性硬化症(MS)に対する同じ薬剤のフェーズ2試験は継続中であり、この研究の結果がどのように出るかはまだ未知数です。RIPK1の阻害がMS治療において有効である可能性がまだ残されているため、この研究の進展にも注目が集まっています。
このニュースは、ALSやMSなどの神経変性疾患の治療法開発における課題を浮き彫りにしています。神経変性疾患は複雑で、多くの場合、複数の病理学的経路が関与しているため、効果的な治療法を見つけることは非常に困難です。このような研究の失敗は、新しい治療法の開発において避けられないものであり、科学者たちは失敗から学び、より効果的な治療法の開発に向けて前進する必要があります。
また、このニュースは、医薬品開発におけるリスクと挑戦を浮き彫りにしています。新しい治療法の開発は時間とコストがかかるプロセスであり、成功する保証はありません。しかし、このような研究を通じて得られる知見は、将来的に他の疾患の治療法開発に役立つ可能性があります。
最終的に、このニュースは、ALSやMSなどの難治性疾患に対する治療法の開発における挑戦を示していますが、同時に、科学的探求の重要性と、研究を通じて得られる新たな知識の価値を強調しています。
from Sanofi, Denali Neuro Drug Fails Mid-Stage Trial in ALS; MS Study Is Continuing.
“ALS治療薬候補、主要目標達成ならず – サノフィとデナリの共同開発失敗” への1件のコメント
このニュースは、医療研究が直面する挑戦と、それにも関わらず前進し続ける重要性を浮き彫りにしています。筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する新たな治療法の開発は、多くの患者やその家族にとって切実な問題です。RIPK1をブロックするというアプローチがALS治療において期待された効果を示さなかったことは残念な結果ですが、科学的研究においては、失敗もまた重要な学びとなり得ます。
この臨床試験の結果は、ALS治療法の研究において新たな方向性を模索する上で貴重な情報を提供します。特に、52週間のオープンラベル延長研究から得られるであろうデータは、この薬剤の安全性や有効性についての理解を深めることに寄与するでしょう。このように、研究過程で得られる知見は、今後の治療法開発において重要な役割を果たします。
また、多発性硬化症(MS)に対する同様の薬剤の臨床試験が継続中であることは、RIPK1の阻害が他の神経変性疾患に対して有効である可能性を示唆しています。神経変性疾患はその性質上複