最新ニュース一覧

人気のカテゴリ


なぜマンジャロは『危険薬』扱いされるのか?実は海外では普通に使われている薬だった

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-08-04 01:01 by 荒木 啓介

テレビで話題の「痩せる注射」マンジャロって何?

最近テレビやネットで「マンジャロ」という薬の名前を聞いたことはありませんか?「週1回の注射で10kg痩せる」「でも危険かも」といった情報が飛び交っていますが、実際のところはどうなのでしょうか。

マンジャロ(正式名:チルゼパチド)は、元々糖尿病の治療薬として開発された注射薬です。週に1回だけ自分で注射するだけで、血糖値が下がり、しかも体重も大幅に減るという、今までにない効果を持つ薬です。

日本では2023年4月から糖尿病の薬として使えるようになりましたが、アメリカやヨーロッパでは既に「肥満症の治療薬」として正式に認められています

でも、なぜ日本では「危険」と言われているのでしょうか?実は、これには日本特有の理由があるのです。

【重要】この記事は情報提供が目的です。マンジャロの使用を勧めるものではありません。医療に関することは必ず医師にご相談ください。

マンジャロの効果って本当にすごいの?

実際の効果を数字で見てみましょう

  • 平均10kg以上の減量:多くの人が半年から1年で達成
  • 血糖値の大幅改善:糖尿病患者の97%が目標値を達成
  • 週1回の注射だけ:毎日薬を飲む必要がない

従来のダイエット薬や糖尿病薬と比べて、圧倒的に効果が高いことが分かっています。

どうしてそんなに効くの?

マンジャロは「お腹がすかなくなる」効果があります。具体的には:

  • 食欲が自然に落ちる:無理に我慢しなくても食べたくなくなる
  • 満腹感が続く:少し食べただけでお腹いっぱいになる
  • 血糖値が安定:血糖値の急上昇を抑える

つまり、「我慢しないダイエット」ができるということです。

なぜ日本では「危険」と言われているの?

実は、マンジャロが「危険」と報道される理由は、薬自体の危険性よりも日本の制度の問題が大きいのです。

1. 日本では「痩せる薬」として認められていない

海外の状況

  • アメリカ:2023年11月に肥満症の治療薬として正式承認
  • ヨーロッパ:2024年に肥満症の治療薬として承認
  • イギリス:国の医療制度でも使用可能

日本の状況

  • 糖尿病の薬としてのみ承認済み
  • 痩せる目的での使用は「適応外使用」(本来の使い方ではない使用)
  • 2024年5月に肥満症の薬として承認申請中(まだ認められていない)

2. 個人輸入のリスクと薬自体のリスクが混同されている

日本の報道では、以下の2つの全く違う問題が混ぜて語られることが多いです:

問題の種類何が危険なのか対策
個人輸入での購入偽物の可能性、品質不良、医師の指導なし正規の病院で処方してもらう
薬自体の副作用吐き気、便秘など(適切に管理すれば軽減可能)医師による定期的なチェック

3. 日本は薬の安全性にとても慎重

実は、日本は世界で最も薬の安全管理が厳しい国の一つです:

  • 承認後に問題が見つかって販売中止になる薬の割合:日本0.3%、アメリカ2.1%
  • 過去の薬害事件の反省から、新しい薬には特に慎重
  • 薬剤師による指導:日本は世界で最も薬剤師の数が多い

つまり、日本が慎重なのは「安全性を最優先にしているから」なのです。

海外ではどのように使われているの?

アメリカの場合

  • 8人に1人がマンジャロのような薬を使用経験あり
  • 医師が「この人には必要」と判断すれば処方可能
  • 「Zepbound」という名前で肥満症の薬として販売

ヨーロッパの場合

  • 国の医療制度の中で使用可能
  • 運動や食事療法と組み合わせて使うことが条件
  • 厳格な基準(BMI30以上など)を満たした人のみ

副作用はあるの?

主な副作用と頻度

副作用どのくらいの人に起こる?対処法
吐き気5人に1人程度少量から始める、慣れると軽くなる
便秘6人に1人程度水分・食物繊維を多く取る
食欲不振5人に1人程度効果の一部、栄養バランスに注意
重篤な副作用100人に1人未満定期的な医師のチェックで予防

重要なポイント

  • 副作用の多くは軽いもので、時間とともに慣れる
  • 医師の指導があれば、副作用は管理できる
  • 他の薬と比べて特別危険というわけではない

日本ではどこで処方してもらえるの?

正規のルート(推奨)

  • 内科・糖尿病専門医:糖尿病の診断があれば保険適用
  • 肥満外来のある病院:自費診療(月3-5万円程度)
  • 一部の美容クリニック:自費診療

避けるべきルート

  • SNSでの購入:違法、健康被害のリスク大

将来的にはどうなるの?

日本での今後の予想

  • 2024年5月に肥満症薬として承認申請済み
  • 早ければ2025年中に肥満症薬として正式承認される可能性
  • 正式承認されれば、「危険薬」扱いは大幅に減ると予想

世界的なトレンド

  • 肥満症は「病気」として治療する時代へ
  • 「我慢するダイエット」から「医学的なダイエット」へ
  • AI技術と組み合わせた個別化治療の発展

まとめ:正しい情報で判断しよう

マンジャロについて知っておくべき重要なポイント

  1. 海外では安全性が認められた薬:アメリカ・ヨーロッパで正式承認済み
  2. 日本が慎重なのは安全性重視のため:「遅れている」のではなく「慎重」
  3. 個人輸入は慎重に:正規の医療機関での処方が安全
  4. 副作用はあるが管理可能:医師の指導があれば安全に使用できる
  5. 近い将来、日本でも正式承認される可能性:既に申請済み

大切なのは、正しい情報に基づいて判断することです。「危険」「安全」といった極端な情報に惑わされず、医師と相談しながら適切な選択をすることが重要です。

もしマンジャロに興味があるなら

  • まずは信頼できる医療機関で相談
  • 正式承認を待つのも一つの選択肢

技術の進歩によって、私たちの健康管理の選択肢は確実に広がっています。正しい情報を持って、自分に最適な選択をしていきましょう。

【用語解説】

GIP/GLP-1デュアル受容体作動薬
GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)とGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)という2つのホルモン受容体に同時に作用する医薬品。従来のGLP-1受容体作動薬よりも血糖降下作用と体重減少効果が高いとされる世界初の作用機序を持つ。

チルゼパチド(Tirzepatide)
マンジャロの有効成分である持続性GIP/GLP-1受容体作動薬。週1回の皮下注射により、血糖依存性のインスリン分泌促進と食欲抑制・胃排出遅延による体重減少効果を発揮する。

適応外処方(オフラベル使用)
薬事承認された適応症以外の目的で、医師の裁量により薬剤を処方すること。医学的根拠があれば合法だが、副作用が起きた場合の医薬品副作用被害救済制度の対象外となることがある。

BMI(Body Mass Index)
体格指数。体重(kg)を身長(m)の2乗で割った数値。肥満症の診断基準として世界的に使用され、日本では25以上を肥満、米国では30以上を肥満とする。

薬事・食品衛生審議会
厚生労働省に設置される審議会で、医薬品や医療機器の承認可否を審議する。議事録の公開が遅れることが多く、承認プロセスの透明性向上が課題とされている。

リアルワールドデータ(RWD)
臨床試験以外の実世界で収集される患者データ。電子カルテ、レセプトデータ、患者レジストリなどが含まれ、薬剤の実際の効果や安全性を評価する際に活用される。

ICH(医薬品規制調和国際会議)
日本、米国、欧州の薬事規制当局と製薬業界が参加し、医薬品の規制要件の国際調和を図る組織。新薬開発の効率化と患者への早期提供を目的とする。

【参考リンク】

日本イーライリリー株式会社 – マンジャロ製品情報(外部)
マンジャロの製造販売元である日本イーライリリーの医療関係者向け製品情報ページ。添付文書、よくある質問、臨床試験データなどの詳細な医学的情報を提供している。

田辺三菱製薬株式会社(外部)
マンジャロの国内販売・流通を担当する製薬会社。ニュースリリースでマンジャロの発売情報や肥満症治療薬としての承認申請状況などの最新動向を確認できる。

米国食品医薬品局(FDA)(外部)
米国でマンジャロ(糖尿病治療薬)とZepbound(肥満症治療薬)を承認した規制当局。承認情報や安全性情報の公開において高い透明性を持ち、薬事審査の透明性を重視する。

欧州医薬品庁(EMA)(外部)
欧州でのマンジャロ承認を担当する規制当局。CHMPによる承認勧告や評価報告書を公開し、承認プロセスの透明性確保に取り組んでいる。

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)(外部)
日本での薬事承認を担当する機関。審査報告書や安全性情報の公開を行っており、アジア地域の薬事規制当局者向けトレーニングセンターとしての役割も果たしている。

【参考記事】

肥満症に対するチルゼパチド承認申請および日本における販売提携のお知らせ – 田辺三菱製薬(外部)
2024年5月8日に発表された日本でのマンジャロ肥満症適応承認申請に関する公式発表。日本イーライリリーと田辺三菱製薬の販売提携継続と、肥満症治療薬としての承認申請完了を報告している。

世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ皮下注」新発売 – 田辺三菱製(外部)
2023年4月18日のマンジャロ日本発売を発表した公式ニュースリリース。製造販売承認の経緯、販売体制、関係者コメントなど、日本市場導入の背景情報を提供している。

米FDAが閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療薬を承認 – 薬事日報(外部)
2024年12月20日に米FDAがZepbound(チルゼパチド)を肥満成人における閉塞性睡眠時無呼吸症候群治療薬として承認したニュース。OSAの処方薬承認としては初めてとなる画期的な承認を報じている。

イーライ・リリー、肥満症治療薬を承認申請 – 日本経済新聞(外部)
2024年5月8日の日本経済新聞による報道。チルゼパチドの肥満症治療薬としての承認申請について、ノボノルディスクのウゴービに続く第二の肥満症治療薬となる可能性を分析している。

糖尿病薬、皮下注市場に「ゲームチェンジャー」参入…リリーの「マンジャロ」 – AnswersNews(外部)
2023年5月10日の詳細な市場分析記事。マンジャロの臨床試験結果、薬価算定における有用性加算、GLP-1製剤市場への影響などを専門的に解説している。

【編集部後記】

今回のマンジャロ報道を調査して感じたのは、「情報のねじれ」の複雑さでした。

当初は「日本の制度が遅れているから危険視されている」と考えていましたが、調べを進めると各国それぞれに合理的な理由があり、どちらが正解とも言い切れないという現実が見えてきました。

日本の承認後薬剤撤回率0.3%(米国2.1%)という数字は、慎重なアプローチの有効性を示しています。一方、米国では「8人に1人がGLP-1製剤使用経験あり」という患者アクセスの差も実感しました。

私たちテクノロジー業界も、同様の「情報のねじれ」を生み出していないでしょうか。AIの「脅威論」、クラウドの「セキュリティリスク」——これらにも今回と同じ構造的問題があるのではないでしょうか。

ヘルスケアテクノロジーニュースをinnovaTopiaでもっと読む

投稿者アバター
TaTsu
デジタルの窓口 代表 デジタルなことをまるっとワンストップで解決 #ウェブ解析士 Web制作から運用など何でも来い https://digital-madoguchi.com

読み込み中…
読み込み中…