三菱ふそうトラック・バス株式会社、三菱自動車工業株式会社、Ample Inc.、ヤマト運輸株式会社の4社は、バッテリー交換式電気自動車とバッテリー交換ステーションの物流事業者の業務における実用性に関する実証を2025年9月から東京都で行う。
本実証では150台超のバッテリー交換式EVと14基のバッテリー交換ステーションを使用する。三菱ふそうはEV小型トラック「eCanter」バッテリー交換式車両の企画・提供・整備を担当し、三菱自動車は軽商用EV「ミニキャブEV」バッテリー交換式車両の企画・提供・整備を行う。
Ampleはバッテリー交換ステーションの設置・運用を担い、ヤマト運輸は集配業務でバッテリー交換式EVを使用する。バッテリー交換の目標時間は5分間に設定されている。
本実証は東京都および東京都環境公社の2024年度「新エネルギー推進に係る技術開発支援事業」に採択されている。
From: バッテリー交換式EVの実用化に向けて、
150台超の車両を用いた実証を2025年9月から東京都で実施
【編集部解説】
今回の発表は、日本の商用EV普及において画期的な転換点を示しています。従来の充電式EVが抱えていた「時間」の課題を、バッテリー交換という手法で解決しようとする野心的な試みです。
注目すべきは実証規模の大きさです。150台超の車両と14基のステーションという規模は、これまでの実証実験とは一線を画する本格的な展開を意味します。2024年の京都での小規模実証から一気に規模を拡大しており、技術の成熟度と実用性への確信が窺えます。
技術的な側面では、5分間という交換時間の短さが革新的です。現在の急速充電でも30分程度を要することを考えると、物流業界にとって劇的な効率化を実現できます。特にヤマト運輸のような大規模配送事業者にとって、車両の稼働率向上は直接的な競争優位性につながります。
Ample社のバッテリー交換システムは完全自動化されており、ドライバーが車両から降りる必要がありません。この点は労働負荷軽減の観点から重要で、物流業界の人手不足解決にも寄与する可能性があります。
一方で、潜在的な課題も存在します。標準化されたバッテリー規格の普及が前提となるため、他メーカーとの協調が不可欠です。また、初期投資コストの回収期間や、バッテリーの劣化管理といった運用面での課題解決が実用化の鍵となります。
長期的視点では、このシステムが普及すれば電力網への負荷分散効果も期待できます。バッテリー交換ステーションが蓄電機能を持つことで、再生可能エネルギーの有効活用にも貢献する可能性があります。
日本政府の2030年温室効果ガス46%削減目標に対し、運輸部門が占める19%という数値は無視できない規模です。商用車の電動化加速は国家戦略として不可欠であり、今回の実証がその突破口となる期待が高まっています。
【用語解説】
バッテリー交換式EV
従来の充電方式ではなく、専用ステーションでバッテリーパック全体を短時間で交換可能な電気自動車。Battery Swapping Electric Vehicle(BSEV)とも呼ばれる。
eCanter
三菱ふそうトラック・バス株式会社が開発・製造するEV小型トラック。物流・配送業務に特化した商用電気自動車である。
ミニキャブEV
三菱自動車工業株式会社が製造する軽商用電気自動車。ワンボックスタイプのデザインで、2011年から軽商用EV市場に投入されている。
2050年カーボンニュートラル
日本政府が掲げる2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標。運輸部門では商用車の電動化が重要な取り組みとして位置づけられている。
WP.29
国連自動車基準調和世界フォーラム。自動車の国際基準を決める国連機関で、日本主導でバッテリー交換式EVの基準策定が進められている。
【参考リンク】
三菱ふそうトラック・バス株式会社(外部)
商用トラック・バス製造メーカー。バッテリー交換式EV『eCanter』を開発・提供している企業。
三菱自動車工業株式会社(外部)自動車メーカー。軽商用EV『ミニキャブEV』のバッテリー交換式車両を提供。
Ample Inc.(外部)
アメリカのバッテリー交換インフラ企業。日本の大規模バッテリー交換式EV実証に技術提供。
ヤマト運輸株式会社(外部)
日本の大手配送・物流企業。バッテリー交換式EVの実用化に向けた実証に参加。
【参考記事】
International Consortium Rolls Out Major EV Battery Swapping Initiative in Tokyo(外部)
三菱ふそうトラック・バス、三菱自動車、Ample、ヤマト運輸が2025年9月から東京都で150台超のバッテリー交換式EVと14基の交換ステーションを用いた大規模実証を開始。環境省の支援を受け、商用車の電動化促進を目指す。
Battery swapping for commercial vehicles expands in Japan(外部)
日本でのバッテリー交換式商用車の実証が拡大。ヤマト運輸が主要ユーザーとして参加し、Ample社の技術を活用。商用車の電動化を加速させるプロジェクトである。
Mitsubishi to trial battery swap technology for electric trucks and buses(外部)
三菱が電動トラック・バス向けバッテリー交換技術の試験を開始。ヤマト運輸とAmple社と共同で東京都での大規模実証実験を計画。2030年までの温室効果ガス削減目標達成に資する。
【編集部後記】
いよいよ2025年9月、このバッテリー交換式EVの大規模実証が東京都でスタートします。150台超の車両が街を走り回る姿を想像すると、本当にワクワクしませんか?
配送トラックが静かになり、排気ガスのない街並みが現実になる第一歩がまさに目前に迫っています。一方で、バッテリー交換ステーションの設置場所や運用コストなど、まだ見えていない課題もありそうです。
皆さんは、このバッテリー交換式EVが普及した未来をどう想像されますか?また、物流業界以外でも応用できそうな分野があれば、ぜひSNSで教えてください。技術の進歩を一緒に見守っていきましょう。