ヤマハ初のバッテリーシェア対応「JOG E」登場|原付一種の電動化が加速する理由

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ヤマハ発動機販売は、電動スクーター「JOG E」を2025年12月22日に東京・大阪の地域限定で先行発売する。価格は15万9500円(税込)で、車体のみの販売となる。

動力用電源には交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」を採用し、ヤマハとして二輪車に初めて使用する。

利用にはGachacoが提供するバッテリーシェアリングサービスの契約が必要で、現在Gachacoステーションは東京都42カ所、埼玉県2カ所、大阪府7カ所に設置されている。販売は東京都と大阪府のヤマハEV取扱店のうちGachaco取扱店のみで行う。

2026年後半にはバッテリーと充電器をセットにした通常販売を予定している。1充電あたりの走行距離は53km(30km/h定地走行テスト値)で、後輪にインホイールモーターを採用した。カラーはダークグレーとライトグレーの2色展開である。

From: 文献リンクエレクトリックコミューター「JOG E」(原付一種)地域限定先行発売~当社として国内初のバッテリーシェアサービス採用二輪車~

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出所:公式
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【編集部解説】

今回のヤマハ「JOG E」発売の背景には、2025年11月から施行された原付一種(50cc以下)に対する新たな排出ガス規制があります。この規制により炭化水素(HC)の排出量が従来の300ミリグラムから100ミリグラムへと厳格化され、既存のガソリンエンジン原付の開発コストが事業採算に見合わなくなったことで、各メーカーが電動化へとシフトしています。

注目すべきは、ヤマハがホンダからのOEM供給という形で電動スクーター市場に参入した点です。両社は2024年8月に、ホンダの交換式バッテリー「Mobile Power Pack e:」を動力源とする車両のOEM供給について合意しており、今回の「JOG E」はその第1号となります。これは競合他社同士が環境対応という共通課題に対して協業する、業界の新しい動きを象徴しています。

バッテリーシェアリングサービスを提供する「Gachaco」は、ホンダ、カワサキ、スズキ、ヤマハの国内4大バイクメーカーとENEOSホールディングスが2022年に共同出資して設立した企業です。現在、東京都42カ所、埼玉県2カ所、大阪府7カ所にステーションを展開していますが、まだ限定的なネットワークに留まっています。

この「充電」から「交換」へというパラダイムシフトは、電動モビリティの最大の課題である「充電時間」と「航続距離への不安」を解決する可能性を秘めています。ガソリンスタンドで給油するように、数秒でバッテリーを交換できる仕組みは、電動二輪車の利便性を大きく向上させるでしょう。

一方で、課題も存在します。バッテリーシェアリングサービスの月額料金は別途発生するため、車両価格15万9500円に加えてランニングコストを考慮する必要があります。また、Gachacoステーションが設置されているエリアが限定的なため、当面は東京・大阪の都市部に住むユーザーに限られた選択肢となります。

ホンダは既にインドでも同様のバッテリー交換システム「Honda e:Swap」を展開しており、グローバルでこの標準化された交換式バッテリーシステムの普及を目指しています。日本国内でも2026年後半には通常販売が予定されていることから、インフラ整備とともに電動原付の選択肢が広がっていくことが期待されます。

【用語解説】

原付一種
排気量50cc以下の原動機付自転車の区分。免許は普通自動車免許でも運転可能で、法定最高速度は30km/h、二段階右折が必要など、原付二種(51cc~125cc)とは異なる交通ルールが適用される。

インホイールモーター
車輪(ホイール)の内部に組み込まれた電動モーター。駆動系の部品を削減でき、スペース効率が高く、メンテナンスも容易になる。電動車両特有の技術で、静かで振動が少ない走行が特徴である。

OEM供給
Original Equipment Manufacturingの略。他社ブランドで販売される製品を製造・供給すること。今回はホンダが製造した電動スクーターをヤマハブランドで販売する形態である。

バッテリーシェアリング
複数のユーザーが充電済みバッテリーを共有し、ステーションで交換しながら利用するサービス。充電時間を待つ必要がなく、ガソリンスタンドでの給油と同様の利便性を提供する。

【参考リンク】

ヤマハ JOG E 製品サイト(外部)
電動スクーター「JOG E」の公式製品ページ。仕様、機能、価格など詳細情報が掲載されている。

Gachaco 公式サイト(外部)
国内4大バイクメーカーとENEOSが出資するバッテリーシェアリングサービス企業のサイト。

Honda Mobile Power Pack(英語)(外部)
ホンダの交換式バッテリーシステムの公式グローバルサイト。各国での展開状況を紹介。

【参考記事】

原付(ガソリン車)がなくなるって本当?排ガス規制と「2025年問題」(外部)
2025年11月施行の原付一種の新排出ガス規制について解説した記事。HC排出量の厳格化が背景。

Gachaco battery swapping service launched by Japanese bike manufacturers(外部)
日本4大バイクメーカーとENEOSがGachacoを設立した経緯と業界協力の意義を報じる記事。

Honda begins sales of Honda Power Pack Exchanger e(外部)
ホンダのバッテリー交換ステーション販売開始のニュース。インフラ整備拡大への取り組みを紹介。

Japanese battery swapping consortium Gachaco(外部)
Gachacoのバッテリーをホンダとヤマハが共同製造する取り組みについて報じた記事。

【編集部後記】

電動スクーターの「充電」から「交換」への転換は、私たちの日常の移動体験を根本から変える可能性を秘めています。ガソリンスタンドで給油するように、わずか30秒でバッテリーを交換できる未来。

皆さんは、この新しいモビリティの形をどう捉えますか?充電の手間から解放される利便性と、月額料金というランニングコスト、そしてまだ限定的なステーションネットワーク。実際に使ってみたいと思いますか?それとも、もう少しインフラが整うまで様子を見たいでしょうか。テクノロジーが描く未来と、私たちの暮らしの接点について、一緒に考えてみませんか。

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Ami
テクノロジーは、もっと私たちの感性に寄り添えるはず。デザイナーとしての経験を活かし、テクノロジーが「美」と「暮らし」をどう豊かにデザインしていくのか、未来のシナリオを描きます。 2児の母として、家族の時間を豊かにするスマートホーム技術に注目する傍ら、実家の美容室のDXを考えるのが密かな楽しみ。読者の皆さんの毎日が、お気に入りのガジェットやサービスで、もっと心ときめくものになるような情報を届けたいです。もちろんMac派!

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