家庭用ヒューマノイドロボットNeo予約開始|1X開発、2026年米国で出荷予定

[更新]2025年10月31日07:38

家庭用ヒューマノイドロボットNeo予約開始|1X開発、2026年米国で出荷予定 - innovaTopia - (イノベトピア)

カリフォルニア拠点のスタートアップ企業1Xが開発したヒューマノイドロボット「Neo」の予約注文が開始された。

身長5フィート6インチ、体重66ポンドのNeoは、洗濯物を畳む、掃除機をかける、食器洗い機への積み込み、階段の昇降などの家事を行う。価格は20,000ドルで、頭金200ドルから予約可能。月額499ドルのサブスクリプション方式も後日提供予定である。1Xの腱駆動モーターシステムにより、最大154ポンドを持ち上げ、55ポンドを運搬でき、稼働音は22dB以下と冷蔵庫より静かである。

稼働時間は4時間、ChatGPTやGeminiと同様のLLMを搭載し、Wi-Fi、Bluetooth、5Gで接続可能である。ただし、現時点では主にVRヘッドセットとコントローラーによる遠隔操作が必要である。

1XのCEO ベルント・ボルニッチ氏は、2026年には大部分を自律動作させるとしている。米国での出荷は2026年開始予定、国際展開は2027年を予定している。

From: 文献リンクThis Robot Is Ready to Fold Your Laundry. It’ll Only Cost You $20K

【編集部解説】

1Xが発表したNeoは、家庭用ヒューマノイドロボット市場における重要な転換点を示しています。これまでTeslaのOptimusやFigureの03といった競合製品は主に工場や物流施設での利用を想定してきましたが、Neoは最初から家庭環境への導入を前提に設計されている点が大きく異なります。

このロボットの技術的な特徴は、1X独自の腱駆動アクチュエーターシステムにあります。従来の金属製モーターを使用する競合製品と比較して、人間の筋肉や腱に近い動作を実現し、22dB以下という極めて静かな動作音を達成しました。体重66ポンド(約30kg)という軽量設計でありながら、154ポンド(約70kg)の持ち上げ能力と55ポンド(約25kg)の運搬能力を持つこのバランスは、安全性と実用性の両立を追求した結果といえます。

しかし、現時点でのNeoには重要な制約があることを理解する必要があります。Wall Street JournalのJoanna Sternによる実地取材では、デモンストレーションの大部分が人間によるVRヘッドセットを使った遠隔操作であったことが明らかになっています。CEOのBernt Børnichは2026年に大部分を自律動作させると約束していますが、「品質は最初は遅れを取るかもしれない」と認めており、完全自律動作の実現には時間がかかる見込みです。

購入者が実質的にロボットの「教師」になるというビジネスモデルも注目に値します。早期採用者は単に製品を購入するのではなく、Neoが家庭環境で学習するためのデータ提供者となるのです。これは将来のバージョンの性能向上に貢献する一方で、プライバシーの観点からは慎重な検討が必要となります。

ロボットは視覚、聴覚、文脈情報を組み合わせて家庭内の状況を把握し記憶します。1Xは人間の映像をぼかす処理や、所有者の承認なしには遠隔操作を行わないといった対策を講じているとしていますが、AI搭載デバイスが24時間家庭生活を観察する環境は、データ保護やセキュリティに関する新たな課題を提起します。

価格設定も普及における重要な要素です。20,000ドルという価格は、ヒューマノイドロボット産業においては妥当な価格帯に位置しますが、一般家庭にとっては依然として高額です。月額499ドルのサブスクリプションモデルは、初期投資のハードルを下げる試みですが、長期的なコストは購入価格を上回る可能性があります。

調査によれば、ヒューマノイドロボット購入の最大の障壁は価格であり、購入意欲を持つ回答者の多くがこれを挙げています。技術的な完成度と価格のバランスが、Neoの市場浸透速度を決定する鍵となるでしょう。

【用語解説】

LLM(Large Language Model / 大規模言語モデル)
膨大なテキストデータを学習したAIモデルで、人間の言語を理解し生成する能力を持つ。ChatGPTやGeminiなどがこれに該当する。質問応答、文章生成、翻訳などの自然言語処理タスクを実行できる。

3D Lattice Polymer
1X独自開発の軽量で柔軟な素材。複雑な3次元の格子構造を持ち、ロボットの体を覆う「ソフトボディ」として機能する。安全性と耐久性を両立させながら、従来の金属製ボディと比べて大幅な軽量化を実現する。

Human-in-the-Loop(ヒューマン・イン・ザ・ループ)
人間とAIが相互作用しながら進む学習方式。1Xの場合、人間がNeoを遠隔操作しながら動画を記録し、その動画データをAIの学習に用いることで、ロボットの性能を段階的に向上させていく仕組みを指す。

【参考リンク】

1X Technologies公式サイト(外部)
カリフォルニア州パロアルトに本社を置くAI・ロボティクス企業。家庭用ヒューマノイドロボットの開発に特化。

Neo製品ページ(外部)
1X TechnologiesのヒューマノイドロボットNeoの公式製品ページ。仕様詳細と予約情報を掲載。

Cloudflare – LLM解説ページ(外部)
大規模言語モデルの基本的な仕組みと応用例を解説する技術資料。

【参考動画】

【参考記事】

What to know about NEO, the humanoid robot that’ll do your chores(外部)
USA Todayによる2025年10月29日の記事。Neoの基本仕様と価格設定を解説。

1X Details NEO’s Human-in-the-Loop Strategy and Hardware(外部)
Humanoids Dailyによる2025年10月27日の記事。技術詳細と学習戦略を専門的に分析。

1X Launches NEO: The Robot Redefining Life at Home(外部)
Yahoo Finance掲載の2025年10月28日記事。公式発表ベースの仕様詳細を報告。

Humanoid robot Neo to be in private households from 2026(外部)
2025年10月28日の詳細分析記事。市場展望と購入障壁を分析。

【編集部後記】

ヒューマノイドロボットが家庭に入ってくるという未来は、もう想像の話ではなくなりました。

innovaTopiaでは、今年2月にプロトタイプ「Neo Gamma」の発表を、3月には家庭での実証実験のニュースをお伝えしてきました。それから約半年、ついに製品版「Neo」が20,000ドルという価格と共に予約可能になった今、私たち一人ひとりが技術との共生を具体的に考えるべき時が来ています。

当時「未来の入り口」としてお伝えしたこの技術は、今や私たちの「玄関先」にまで到達しました。月額499ドルのサブスクリプションモデルは、この新しい家族を迎え入れるための現実的な選択肢となるでしょうか?

また、AIが家庭生活を24時間観察し学習することに対して、私たちは利便性とプライバシーのバランスをどう取るべきなのか。技術の進化と共に暮らす私たちにとって、まさに答えを探すべき問いが目の前に提示されています。

みなさんは、ロボットと共生する暮らしに何を期待し、何を懸念されますか?ぜひ、ご意見をお聞かせください。

投稿者アバター
omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。

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