ドイツの連邦軍装備・情報技術・運用支援局(BAAINBw)は、2025年2月27日、ブレーメンを拠点とするスタートアップ企業ポラリス・ラウムフルークツォイゲ(POLARIS Raumflugzeuge GmbH)に、極超音速研究機の開発を委託した。
この研究機「オーロラ(AURORA)」は以下の特徴を持つ
- 全長28メートル
- 2段式で完全再使用可能
- 滑走路からの離着陸が可能
- マッハ5(時速6,125km)以上の速度に到達
- 最大1トンの積載物を地球低軌道に投入可能
ポラリスは2019年にドイツ航空宇宙センター(DLR)のスピンオフとして設立された。同社はすでに3つのデモンストレーター機(ミラI、II、III)を製作しており、ミラIIとIIIは長さ5メートル、重量240kgで、100回以上の試験飛行を完了している。
オーロラの開発には、ポラリスが独自に開発したAS-1エアロスパイクロケットエンジンが使用される。このエンジンは2024年10月にミラII機に搭載され、バルト海上空で3秒間の点火に成功している。
BAAINBwとの契約では、オーロラは防衛研究用の極超音速テストベッドとしての役割と、小型衛星打ち上げ機としての役割を担う。ポラリスは2028年までにプロトタイプの完成を目指している。
開発予算は5000万ユーロ(約80億円)未満とされている。
from:German defence ministry asks startup to build hypersonic spaceplane
【編集部解説】
ポラリス社が開発を進める極超音速宇宙機「オーロラ」は、宇宙へのアクセスを根本から変革する可能性を秘めています。この革新的な技術は、宇宙開発のあり方を大きく変える可能性があります。
オーロラの最大の特徴は、その再使用性と運用の柔軟性です。通常の滑走路から離着陸できる能力は、宇宙への往復を飛行機のように日常的なものにする可能性があります。これにより、宇宙開発のコストを大幅に削減し、宇宙ビジネスの新たな地平を開く可能性があります。
また、オーロラの多目的性も注目に値します。衛星打ち上げだけでなく、極超音速飛行の研究や防衛目的での利用など、幅広い用途が想定されています。これは、宇宙開発と防衛技術の融合という新たな領域を切り開く可能性があります。
しかし、この技術には課題もあります。極超音速飛行は高度な技術を要し、安全性の確保が最重要課題となります。また、軍事利用の可能性は国際的な緊張を高める恐れもあります。
エアロスパイクエンジンの実用化は、宇宙推進技術に革命をもたらす可能性があります。これまで冷却の困難さから実用化が進まなかったこの技術が、ポラリス社の取り組みによって克服されれば、宇宙開発の新たな地平が開かれるかもしれません。
長期的には、オーロラのような宇宙機が実用化されれば、地球上のどこからでも宇宙へのアクセスが可能になり、宇宙旅行や超高速輸送など、これまで夢物語だった技術が現実のものとなる可能性があります。
一方で、この技術の軍事利用や、宇宙空間の商業利用の加速は、新たな国際的な規制や協調の枠組みの必要性を浮き彫りにするでしょう。宇宙の平和利用と安全保障のバランスをどう取るかが、今後の大きな課題となりそうです。
オーロラの開発は、まさに宇宙時代の新章を開く可能性を秘めています。技術的な挑戦と社会的な影響の両面から、今後の展開が注目されます。