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JAXA 大西卓哉船長、SpaceX Crew-10での指揮とExpedition 73の記録

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-08-10 14:40 by TaTsu

2025年8月9日(日本時間)、太平洋カリフォルニア沖。
SpaceX「Crew-10」カプセルが白いパラシュートを広げ、静かに海面へ降り立った。

約5か月の任務を終えたクルーの帰還は、NASAにとって50年ぶりとなる太平洋への着水という歴史的瞬間でもあった。
その中心にいたのが、日本人宇宙飛行士 大西卓哉(JAXA)
ISS船長として多国籍クルーを率い、第73次長期滞在(Expedition 73)を指揮してきた。


Expedition 73で率いたメンバー(2025年4月〜8月現在)

2025年4月19日(日本時間)に始まった 第73次長期滞在(Expedition 73)
大西船長が指揮を執ったメンバーは以下の7人だった。

  • 大西卓哉(JAXA) – 指揮官(Commander)
  • アン・マクレイン(NASA) – ミッションスペシャリスト
  • ニコール・エアーズ(NASA) – ミッションスペシャリスト/パイロット
  • キリル・ペスコフ(ロスコスモス) – ミッションスペシャリスト
  • ジョニー・キム(NASA) – フライトエンジニア
  • セルゲイ・リジコフ(ロスコスモス) – フライトエンジニア
  • アレクセイ・ズブリツキイ(ロスコスモス) – フライトエンジニア

文化も言語も異なる7人の精鋭をまとめ上げ、ISS運用を支えた。


ミッションの内容

生命科学・医療研究

  • 微生物遺伝子の宇宙環境応答
  • タンパク質結晶生成
  • 再生医療用細胞実験

物理・材料科学

  • 流体挙動実験
  • 金属合金の結晶成長

地球・宇宙環境観測

  • 気候変動モニタリング
  • 宇宙放射線測定

EVA(船外活動)

  • 2025年5月1日(日本時間)、マクレイン飛行士とエアーズ飛行士が約6時間の船外活動を実施。ソーラーアレイ(iROSA)の設置や通信アンテナ移設などを完了。

人柄がにじむ船長エピソード

夜明けのコーヒー

1日に16回訪れる夜明けのうち、1回をクルー全員のコーヒータイムに設定。
窓越しに地球の青を眺めながら、互いの文化や人生について語り合った。

イントボール2は相棒

球形カメラロボット「イントボール2」を“相棒”と呼び、作業の記録だけでなく心の支えとしても活用。

SNSでのユーモア

任務の合間にSNSで地球の絶景やクルーの日常を発信。地上のファンから「船長の投稿はほっとする」と評された。

フライトディレクター経験を活かした調整力

危機管理能力を支え、突発的なトラブルでも冷静に各国の管制と連携した。


油井亀美也、Crew-11で合流

2025年8月2日(日本時間)、SpaceX「Crew-11」がISSに到着。
ゼナ・カードマン(NASA)、マイケル・フィンク(NASA)、オレグ・プラトノフ(ロスコスモス)、油井亀美也(JAXA)が参加。
油井さんは大西船長のチームに加わり、共同実験や運用引き継ぎに参加した。


次のステージへ

Crew-10での帰還は、大西卓哉船長にとってひとつの区切りであり、次なる挑戦の始まりでもある。
第73次長期滞在(Expedition 73)ではISSのコマンダーを務め、日本人としては若田光一さん、星出彰彦さんに続く3人目の船長として、多国籍クルーを率い任務をやり遂げた。

地球に戻ったこれからは、JAXAや国際パートナーとのミッション報告や分析、次世代宇宙飛行士の育成、ISS運用の地上支援などに携わる予定だ。
また、自身の体験を生かし、教育活動や講演を通じて、宇宙の魅力を次世代や社会へ広く発信していく。

将来は月面探査や深宇宙ミッションへの関与も期待される大西さん。
宇宙で培ったリーダーシップと経験を武器に、これからも人類のフロンティアに挑み続ける姿を、私たちは応援し続けたい。

【用語解説】

Expedition(長期滞在ミッション)
ISSにおける数か月単位の乗組員の交代と任務のこと。各回には「第○次長期滞在」と番号が付けられる。

EVA(船外活動)
宇宙飛行士が宇宙服でISS外に出て行う作業のこと。点検、修理、新規機器設置などを行う。

【参考リンク】

ISS(国際宇宙ステーション)(外部)
国際的な有人実験施設であり、JAXA公式ページでは構成や日本の貢献が詳しく説明されている。

JAXA(宇宙航空研究開発機構)(外部)
日本の宇宙開発を担う機関。有人宇宙、無人探査、技術開発など総合的に扱う。

NASA(アメリカ航空宇宙局)(外部)
アメリカの宇宙機関。ロボット探査から有人宇宙飛行まで幅広く執り行う。

ロスコスモス(ロシア連邦宇宙局)(外部)
ロシアの宇宙機関。ISSへのクルー派遣や補給船運用などを行う。

SpaceX(スペースX)(外部)
再利用ロケットや有人宇宙船「クルードラゴン」を開発する民間宇宙企業。

Crew-10(スペースXの有人ミッション名)(外部)
SpaceXによる10回目の有人宇宙船によるISS往復ミッション。NASAにより公式解説がある。

iROSA(ISS Roll-Out Solar Array)(外部)
ISSの電力供給能力を強化するための新型ロールアウト方式ソーラーパネル。JAXAによる船外活動記録あり。

イントボール2(Int-Ball2、船内ドローンカメラ)(外部)
ISS内部の撮影を支援するJAXA開発の自律移動型球形カメラロボットの後継機。地上操作で撮影。

【編集部後記】

ISSの窓から笑顔で手を振る大西卓哉さんの姿は、いつ見ても胸を打つ。
それは単に「宇宙飛行士」という肩書きではなく、人としての温かさ、仲間を思う優しさ、そして挑戦を恐れない背中があるからだと思う。

今回の取材を通じて、大西さんがコマンダーとして発揮したリーダーシップや、夜明けのコーヒータイムのような心温まるエピソードに、改めて「この人の指揮するチームなら絶対にうまくいく」と感じた。

ファンとしては、Crew-10での帰還が一区切りなのは少し寂しい。しかし、大西さんはもう次のステージへ向かっている。地上での後進育成、そしていつか再び宇宙へ――その日を心から楽しみに待ちたい。

宇宙は遠い存在かもしれない。けれど、大西卓哉さんの姿を見ていると、「夢は手を伸ばせば届くかもしれない」と本気で思えてしまう。これからも、その背中を追い続けたい。

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TaTsu
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