NASAとIBM、太陽フレア予測AI「Surya」を発表|オープンソース化で宇宙天気予報が進化

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NASAとIBMが太陽フレア予測を行う人工知能モデル「Surya」を開発した。Suryaはサンスクリット語で太陽を意味し、3億6600万パラメータを持つオープンソースモデルである。

これはHugging FaceやGitHubで一般公開されており、時空間トランスフォーマーを使用して太陽フレア予報、活動領域セグメンテーションを行う。また、太陽風予測などへの応用も期待されている。

このAIモデルは2010年から太陽を監視しているNASAの太陽観測衛星(Solar Dynamic Observatory)のデータとIBM、他8つの研究センターのデータで訓練されている。南西研究所の太陽物理学者アンドレス・ムニョス=ハラミージョ氏が主任研究者を務める。

現在NOAAは宇宙天気予報センターを通じて太陽フレア予報を実施しているが、従来の手法には限界がある。NASAは以前、太陽のコロナ内の光の閃光を使用して太陽フレアを部分的に予測していた。IBMのNASAとの科学協力担当ディレクターであるフアン・ベルナベ=モレノ氏は、IBMとNASAが2023年から協力関係にあると述べている。

From: 文献リンクMeet Surya, a New AI Model From NASA and IBM That Can Predict Solar Flares

【編集部解説】

Suryaの技術的革新は、実は太陽観測の長年にわたる課題を解決する重要な一歩です。従来の宇宙天気予測では、科学者が太陽コロナ内の光の閃光を手掛かりに1時間前程度の警告しか出せませんでした。Suryaはこの予測時間を2時間に延ばし、さらに約15〜16%の精度向上を実現しています。

この数時間の差は、実は極めて重要な意味を持ちます。人工衛星の運用者は軌道調整や機器の保護措置を講じる時間を確保でき、電力網の管理者は負荷調整によってカスケード障害を防ぐことが可能になります。

Suryaが特に画期的なのは、視覚的な予測を生成する初の基盤モデルという点です。太陽フレアの形状、太陽上の位置、強度を予測でき、これにより科学者は従来以上に直感的に太陽活動を理解できるようになりました。

Suryaがオープンソース化された意図は明確です。世界中の研究者がHugging FaceやGitHubでアクセスできることで、宇宙天気研究のイノベーションが加速される狙いがあります。これは従来の閉鎖的な予測システムとは対照的なアプローチです。

リスクの観点では、AI依存による新たな脆弱性も考慮する必要があります。自律システムが太陽嵐への対応で失敗した場合の責任所在や、予測精度の限界を理解した運用が重要になってきます。

長期的視点では、Suryaのような基盤モデルは宇宙天気予測の民主化を促進し、衛星運用者や電力会社が独自の予測システムを構築する基盤となる可能性があります。ただし、太陽活動の複雑性を考慮すれば、完璧な予測は困難であり、継続的な改良と検証が不可欠です。

【用語解説】

パラメータ
AIモデルが学習によって調整する数値の総数。Suryaの3億6600万パラメータは、モデルが持つ複雑な関係性を表現する能力の指標である。

時空間トランスフォーマー
時間的変化と空間的分布を同時に処理する機械学習アーキテクチャ。太陽画像の時系列変化を理解して将来の状態を予測する。

活動領域セグメンテーション
太陽表面の磁場が活発な領域を画像から自動識別する技術。太陽フレア発生の可能性が高い場所を特定する。

基盤モデル
大量のデータで事前学習され、様々なタスクに応用可能なAIモデル。特定の問題に特化せず、汎用的な理解能力を持つ。

【参考リンク】

NASA Solar Dynamics Observatory(外部)
2010年から太陽を観測し続けているNASAの宇宙望遠鏡公式サイト

Hugging Face – Surya 1.0(外部)
Suryaモデルが無料公開されているAIプラットフォーム

NOAA宇宙天気予報センター(外部)
現在の太陽フレア予報を担当する米国海洋大気庁の機関

【参考記事】

NASA, IBM’s ‘Hot’ New AI Model Unlocks Secrets of Sun(外部)
NASAの公式発表、Suryaの15%性能向上と2時間予測を報告

IBM and NASA create first-of-its-kind AI(外部)
Live Science記事、16%精度向上と218TBの学習データ詳細

IBM and NASA Release Open Source AI Model(外部)
衛星業界専門誌、衛星運用者への実用的影響を解説

Introducing Surya, a new heliophysics foundation model(外部)
IBMリサーチの技術ブログ、13チャンネルデータセットの詳細

【編集部後記】

太陽フレアによる大規模停電や衛星障害のリスクは、私たちの日常生活にとって決して他人事ではありません。スマートフォンからGPS、クレジットカード決済まで、現代社会は宇宙インフラに依存しています。Suryaのようなオープンソース技術が、どのように私たちの生活基盤を守る役割を果たすのでしょうか。

皆さんは普段、宇宙天気予報を意識されたことはありますか?もし2時間前に太陽嵐の到来が予測できるとしたら、どのような備えが可能になると思われますか?宇宙天気が日常生活に与える影響について、ご自身の考えをぜひSNSでお聞かせください。

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TaTsu
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