Firefly AerospaceのAlpha Flight 7ロケットの第1段が試験中に失われた。この事故は同社のテキサス州ブリッグスの施設にある試験台で発生し、全職員の安全は確認されている。このロケットの打ち上げは2025年第4四半期に予定されており、顧客はロッキードマーティンだった。
同社は4月にも打ち上げ中の事故を経験しており、分離時の第1段の破裂により第2段のエンジンノズルが脱落し、ペイロード展開に失敗していた。調査後、米国連邦航空局からFlight 7の実施許可を得ていたが、今回の事故により2025年末までの打ち上げは困難となった。
同社CEOのJason Kimは2025年9月22日の決算説明会で「今後数週間以内にFlight 7を打ち上げる予定」と述べていた。一方、同社の月着陸船Blue Ghostは2025年3月に月面着陸に成功している。
From: Second time unlucky for Firefly as an Alpha rocket stage explodes
【編集部解説】
Firefly Aerospaceにとって、今回の事故は極めて痛手となります。わずか半年前の4月に発生した打ち上げ失敗から復帰の兆しを見せていた矢先の出来事でした。
特に注目すべきは、この事故が「打ち上げ」ではなく「地上試験」で発生した点です。同社は各コンポーネントを実際の打ち上げ前に徹底的に試験する方針を掲げており、今回もその哲学に基づいた試験中の事故でした。地上で問題を発見できたという意味では、この方針が一定の機能を果たしたとも言えます。しかし、ステージそのものを失ったことで、スケジュールへの影響は避けられません。
顧客がロッキードマーティンという大手防衛・航空宇宙企業である点も重要です。商業宇宙輸送市場では信頼性が何よりも重視されるため、連続する不具合は顧客との信頼関係に影響を与える可能性があります。
一方で、同社の月着陸船Blue Ghostが2025年3月に商業ミッションとして初めて「完全な」月面着陸を達成したことは、技術力の証明となっています。ロケット打ち上げと月着陸は異なる技術領域ですが、同社が複数の先進的プロジェクトを並行して進められる能力を持つことを示しました。
今後、Northrop Grummanと共同開発中のEclipseロケットが2026年に初打ち上げを控える中、Alpha Flight 7の事故調査と復旧作業がどれだけ迅速に進むかが、同社の競争力を左右することになるでしょう。
【用語解説】
Alpha(アルファ)ロケット
Firefly Aerospaceが開発した小型衛星打ち上げ用の2段式ロケット。低軌道への打ち上げ能力を持ち、商業・政府向けのペイロードを運搬する。
第1段(First Stage)
ロケットの最下部に位置し、打ち上げ初期の推進力を提供する部分。燃料を消費した後、分離されて地上に落下する。
第2段(Second Stage)
第1段の分離後に点火され、ペイロードを目標軌道まで運ぶロケットの上部セクション。より精密な軌道投入を担当する。
ペイロード(Payload)
ロケットが運搬する実際の荷物。人工衛星や科学実験装置などを指す。
連邦航空局(FAA)
米国の航空および宇宙飛行を規制する政府機関。商業宇宙打ち上げの許可権限を持つ。
Eclipse(旧Beta)ロケット
Firefly AerospaceがNorthrop Grummanと共同開発中の次世代ロケット。Alphaより大きなペイロード能力を目指している。
【参考リンク】
ロッキードマーティン(外部)
世界最大級の防衛・航空宇宙企業。NASA向けの宇宙探査機や軍事衛星など、幅広い宇宙関連プロジェクトを手がける。
Northrop Grumman(外部)
防衛・航空宇宙分野の大手企業。Firefly Aerospaceと共同でEclipseロケットの開発を進めている。
NASA Artemis Program(外部)
NASAの有人月探査プログラム。2027年以降に予定されているArtemis IIIミッションで宇宙飛行士を月面に着陸させる計画。
【参考記事】
Firefly Aerospace’s Alpha rocket explodes during preflight test(外部)
宇宙専門メディアによる事故の速報。テキサス州の試験施設でのAlphaロケット第一段の爆発と、負傷者はいなかったことの報告。
Ground testing anomaly destroys Firefly Aerospace’s Alpha booster intended for next flight(外部)
近隣の監視カメラ映像を含む事故詳細のレポート。事故のわずか1週間前のCEOによる楽観的な発言との対比。
Firefly Stock Drops After Alpha Rocket Test Ends in Mishap(外部)
経済メディアによる株価への影響の報道。事故発表後の同社株価の急落と、技術的トラブルがもたらす経済的打撃の解説。
【編集部後記】
民間宇宙企業の挑戦には、常に失敗のリスクが伴います。Fireflyは地上試験で問題を発見するという慎重なアプローチを取っていますが、それでも予期せぬ事態は起こり得ます。こうした挫折を経験しながらも、同社は月着陸という偉業を成し遂げました。
宇宙開発における「失敗」をどう捉えるべきでしょうか。SpaceXもロケットを何度も爆発させながら今日の地位を築きました。試行錯誤のプロセスこそが、技術革新の本質なのかもしれません。みなさんは、商業宇宙開発におけるこうした失敗と成功のサイクルについて、どのようにお考えですか。