シャープ・インターステラテクノロジズなど日本勢も参加──Space Tech Expo Europe 2025、ブレーメンで10周年を迎える宇宙産業の最前線

[更新]2025年11月18日

シャープ・インターステラテクノロジズなど日本勢も参加──Space Tech Expo Europe 2025、ブレーメンで10周年を迎える宇宙産業の最前線 - innovaTopia - (イノベトピア)

ヨーロッパ最大のB2B宇宙イベント「Space Tech Expo Europe」が本日2025年11月18日ドイツ・ブレーメンで開催10周年を迎える。

2015年に100社の出展で始まったこのイベントは、2025年には950社以上が出展する規模に成長した。シャープは化合物太陽電池や衛星通信端末を出展、インターステラテクノロジズ(IST)はCOOがカンファレンス登壇予定。

JAXAや三菱重工業などの日本発の宇宙関連技術・スタートアップも参加が確認されている。

2024年の実績として来場者の95%が新たな人脈を構築し、87%がネットワーキングや製品アクセスを目的としていた。

From: 文献リンクSpace Tech Expo Europe: The Largest B2B Space Event in Europe

【編集部解説】

Space Tech Expo Europeは単なる見本市ではなく、ヨーロッパの宇宙産業エコシステムそのものを体現するイベントへと成長しました。10年間で出展社数が100社から950社超へと約9.5倍に増加した背景には、宇宙産業の構造変化があります。

世界の宇宙技術市場は2025年に5,120億ドル規模に達し、2034年には1兆ドルを超えると予測されています。年平均成長率7.86%という堅調な拡大が見込まれる中、ヨーロッパは重要な転換点を迎えています。​

2024年、欧州の宇宙セクターは過去最高となる15億ユーロ(約17億ドル)の投資を獲得しました。この急成長の原動力は、防衛・セキュリティ分野です。投資全体の40%が防衛関連企業に集中しており、地政学的緊張の高まりがヨーロッパの「戦略的自律性」への意識を強めています。​

ブレーメンがこのイベントの開催地として選ばれ続けている理由は明確です。この都市には140社を超える航空宇宙企業と20以上の研究機関が集積し、OHB、アリアングループ、エアバスといった業界大手が本拠を構えています。1961年から続く宇宙開発の歴史を持ち、国際宇宙ステーションのコロンバス実験棟やNASAのオリオン宇宙船欧州サービスモジュールなど、欧州宇宙開発の中核プロジェクトを支えてきました。​

B2Bマッチング機能の充実は、このイベントの実践的価値を示しています。来場者の87%がネットワーキングと新製品へのアクセスを目的としており、95%が新たな人脈を構築できたという実績は、単なる情報収集の場を超えた商談プラットフォームとしての機能を証明しています。​

注目すべきは、宇宙産業の民主化が進んでいることです。スタートアップから大企業まで、サプライチェーン全体が一堂に会するこのイベントは、打ち上げサービス、衛星運用、地上システム、材料供給、ソフトウェアまで、あらゆる技術レイヤーを網羅しています。

今後、宇宙産業は通信インフラ、地球観測、宇宙旅行、小惑星採掘など多様な応用分野へ拡大していきます。ヨーロッパは投資額で米国・中国に次ぐ第3位ですが、その成長軌道は急峻です。2025年のこのイベントは、単なる10周年記念ではなく、ヨーロッパ宇宙産業の新時代の幕開けを象徴する場となるでしょう。

【用語解説】

B2Bマッチング
企業間(Business to Business)の商談や提携を効率的に実現するためのシステム。事前予約により最適なビジネスパートナーを探し、商談の場を提供する。従来の偶発的なネットワーキングとは異なり、構造化されたアプローチで効率的かつ有益なコネクションを生み出す。

サプライチェーン
製品やサービスが最終消費者に届くまでの全工程。宇宙産業では原材料供給から打ち上げ・運用まで。欧州では専門化が進み分業体制が構築されている。

戦略的自律性
外部依存を排し、独自に重要技術や能力を確保・運用できる状態。欧州宇宙産業では打ち上げ能力や衛星技術、通信インフラの自前確保が安全保障や経済的独立性維持につながる。

【参考リンク】

Space Tech Expo Europe(外部)
ヨーロッパ最大のB2B宇宙イベント公式サイト。2025年11月18日から20日開催、最新情報や事前登録が可能。

シャープ株式会社 ニュース(外部)
宇宙用化合物太陽電池やLEO衛星通信用端末の出展内容、欧州宇宙展示会への取組について紹介。

インターステラテクノロジズ株式会社(外部)
ブース出展やカンファレンス登壇案内、ISTのロケット量産化・宇宙輸送サービス事業を解説。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)(外部)
日本の宇宙政策と先端基盤技術開発、衛星・打上げ事業、国際連携の実績等を掲載。

三菱重工業株式会社(外部)
H-IIA/Bロケットや小型ロケット、人工衛星、射場インフラ等、日本を代表する宇宙産業メーカー。

【参考記事】

Space Technology Market Size 2025 to 2034(外部)
世界の宇宙技術市場規模、需要拡大と分野別成長率の解説。5,120億ドル→1.04兆ドルの予測。

Defense Drives EU Space Funding to Record Highs(外部)
2024年欧州宇宙投資の記録的伸長と戦略的自律性・安全保障の強化動向。

All on Bremen: Europe SpaceTech Powerhouse(外部)
ブレーメンの宇宙産業拠点としての歴史、主力企業と研究機関の現状分析。

【編集部後記】

ヨーロッパの宇宙産業が10年で約10倍に成長した背景には、私たちの生活を支えるインフラの変化があります。衛星通信、GPS、気象予測、災害監視──これらはすでに日常の一部です。

2025年の宇宙市場は5,120億ドル規模、2034年には1兆ドルを超えるとされています。日本の宇宙産業も存在感を高めており、グローバル化が急速に進んでいます。宇宙はもはや遠い世界ではなく、実はビジネスの最前線でもあります。皆さんは日本企業の挑戦をどう捉えますか?

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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