トライアルGO西荻窪店オープン、顔認証決済と30人時運営を実現

トライアルGO西荻窪店オープン、顔認証決済と30人時運営を実現 - innovaTopia - (イノベトピア)

株式会社トライアルホールディングスのグループ会社である株式会社トライアルGOは、2025年11月7日に都内初となる「TRIAL GO 西荻窪駅北店」を東京都杉並区にオープンした。

同店は既存の大型店舗を拠点に高頻度で商品を配送するサテライト型店舗として、約50坪の限られた売場面積で豊富な品揃えと生鮮・惣菜を提供する。

店舗運営では顔認証決済やリモート年齢確認による決済の完全無人化に近い体制を実現し、棚モニタリングシステム「Retail EYE」による遠隔店舗管理を導入している。

これらの取り組みにより30人時で運営できるローコストオペレーションを実現した。

福岡で実証を重ねてきた都市型ローコストオペレーションを、西友との経営統合を経て東京で展開・検証する。店舗は24時間年中無休で営業する。

From: 文献リンク福岡で実験を重ねた”次世代ローコスト小売モデル”がついに東京展開 街の生活必需店「TRIAL GO」都内初出店11月7日にオープン

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出所(PRTIMES)

【編集部解説】

トライアルが西荻窪で都内初出店した「TRIAL GO」は、単なる小型店舗の展開ではありません。2025年7月に完了した西友との経営統合を背景に、福岡で磨き上げてきたリテールテック技術を首都圏で本格展開する試金石となっています。

注目すべきは「30人時」という運営体制です。約50坪の店舗面積ながら大幅な省人化を実現しており、この効率化を支えるのが顔認証決済とリモート年齢確認による完全無人化に近い決済システムです。財布やスマートフォンを取り出す必要がなく、カメラで本人確認するだけで支払いが完了します。

さらに興味深いのが「Retail EYE」という棚モニタリングシステムの活用です。トライアルは自社でRetail AI社を設立し、小売業に特化した低コストなAIカメラを独自開発してきました。フラッグシップ店舗には1,500台のカメラが設置され、商品の欠品検知や棚割り最適化をリアルタイムで行っていると報じられています。TRIAL GOではこの技術を使って遠隔から複数店舗を管理し、現場スタッフの負担を大幅に削減しているのです。

リテールメディアとしての側面も見逃せません。店内サイネージで顧客の購買時間に合わせた商品訴求を行う仕組みは、日本のリテールメディア市場が2024年に4,692億円規模となり、2028年には1兆円超に成長すると予測される中で、新たな収益源として期待されています。デジタル広告配信による販売促進効果が、店舗運営コストをさらに圧縮する可能性を示しています。

「サテライト型店舗」という概念も革新的です。西友の大型店舗を物流拠点として活用し、高頻度配送によって小規模店舗でも豊富な品揃えを実現する。この垂直統合モデルは、都市部の限られた物件でも出店可能にし、トライアルの地理的制約を一気に解消します。

ただし課題もあります。顔認証決済は利便性が高い一方で、プライバシーへの懸念から普及には時間がかかる可能性があります。また、省人化が進むほど、緊急時の対応や高齢者への配慮といった人的サポートの在り方が問われるでしょう。

西荻窪という住宅地での実証は、コンビニとスーパーの中間業態として、都市生活者の日常を支えるインフラになり得るかを測る重要な試みです。このモデルが成功すれば、日本の小売業界全体に大きな変革の波が訪れることになります。

【用語解説】

サテライト型店舗
大型店舗を物流拠点として活用し、そこから高頻度で商品を配送することで小規模店舗でも豊富な品揃えを実現する店舗運営モデルである。限られた売場面積でも多様な商品を提供でき、都市部への出店を可能にする。

顔認証決済
顔の特徴を登録し、カメラで本人確認を行うことで支払いを完了させる決済システムである。財布やスマートフォンを取り出す必要がなく、完全非接触での買い物が可能になる。

リモート年齢確認
酒類やたばこなどの年齢制限商品を購入する際、店舗スタッフではなく遠隔地のオペレーターがカメラを通じて年齢確認を行うシステムである。店舗の省人化に寄与する。

Retail EYE
トライアルが独自開発した棚モニタリングシステムである。AIカメラで商品の欠品や陳列状況をリアルタイムで把握し、遠隔から複数店舗の管理を可能にする。

リテールメディア
小売店舗内のデジタルサイネージやアプリなどを広告媒体として活用するマーケティング手法である。購買時点での訴求により高い販売促進効果が期待できる。

30人時
店舗運営に必要な労働時間の単位である。30人時とは、1日あたり延べ30時間分の人員配置で運営できることを意味し、例えば24時間営業の場合は平均1.25人で回せる計算になる。

【参考リンク】

株式会社トライアルホールディングス(外部)
福岡を拠点とする小売企業で、AIやIoTを活用したスマートストア開発を推進。2025年7月に西友と経営統合完了。

西友(SEIYU)(外部)
全国に店舗展開する総合スーパーマーケットチェーン。トライアルと経営統合し技術活用店舗を展開中。

Retail AI株式会社(外部)
トライアルグループの小売業向けAIソリューション企業。棚モニタリングシステムなどの技術を提供。

【参考記事】

トライアルの西友買収でどんな”化学変化”が起こるのか?(外部)
EnterpriseZineによる統合分析。トライアルのリテールテック技術と西友店舗網の相乗効果を論じる。

【編集部後記】

皆さんの近所にこうした省人化店舗が現れたら、どんな使い方をしてみたいですか?顔認証決済は便利そうだけど、まだ少し抵抗があるという方もいるかもしれません。あるいは、24時間営業だからこそ仕事帰りの深夜に立ち寄れる安心感を感じる方もいるでしょう。

テクノロジーが進化する一方で、私たちの暮らしに本当に必要な「人の温もり」とは何か、改めて考えるきっかけにもなりそうです。TRIAL GOのような新業態が、これからの街の風景をどう変えていくのか、一緒に見守っていきませんか。

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Ami
テクノロジーは、もっと私たちの感性に寄り添えるはず。デザイナーとしての経験を活かし、テクノロジーが「美」と「暮らし」をどう豊かにデザインしていくのか、未来のシナリオを描きます。 2児の母として、家族の時間を豊かにするスマートホーム技術に注目する傍ら、実家の美容室のDXを考えるのが密かな楽しみ。読者の皆さんの毎日が、お気に入りのガジェットやサービスで、もっと心ときめくものになるような情報を届けたいです。もちろんMac派!

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