FydeOS は Fyde Innovations が開発する ChromiumOS の再構築版である。Google アカウント不要で動作し、Android アプリの実行が可能だ。同社は英国と中国に拠点を持つ。
FydeOS for PC は無料で提供され、Intel ベース PC 用の 3 つのバリエーションと AMD GPU 搭載 PC 用の 1 つがある。ARM エディションは Raspberry Pi 4、400、5、XpressReal T3、Orange Pi 5、5B、5 Plus、Khadas Edge 2、Radxa Rock 5B をサポートする。
FydeOS for You はサブスクリプション版で、Chromebook Pixel の 2013 年と 2015 年モデル、Microsoft Surface の Pro 3、4、5、6、7、7+、8、Go、Go 2、Go 3 などをサポートする。価格は年間 14.99 ポンド(約20ドル)である。
現在のバージョンは FydeOS 20 で、ChromiumOS バージョン 132-16093 に基づく。マイナーアップデートは無料だが、メジャーバージョンアップグレードは 2.49 ポンド(3.35 ドル)かかる。ChromeOS LTS リリースに従い、年間約 2 回のメジャーアップデートが予定されている。
From: FydeOS offers ChromeOS without the Google strings attached
【編集部解説】
FydeOSが注目される背景には、テック業界で高まる「脱Google化」の流れがあります。プライバシー意識の高まりとデータ主権への関心が、このような代替OSへの需要を押し上げています。
特に興味深いのは、FydeOSが中国と英国の両拠点から展開されている点です。中国のグレートファイアウォール内でも機能するよう設計されており、地政学的な技術分断が進む中で、重要な意味を持ちます。これは単なる技術的選択肢以上に、デジタル主権の観点から注目すべき動向と言えるでしょう。
ChromeOS FlexとFydeOSの最大の違いは、Android アプリサポートです。GoogleはChromeOS FlexからAndroid アプリ機能を意図的に除外していますが、FydeOSはこれを実現しています。これにより、古いPCでもモバイルアプリエコシステムを活用できるようになります。
価格モデルも興味深い特徴です。基本機能は無料ですが、メジャーアップデートが有料(£2.49/$3.35)という仕組みは、オープンソースソフトウェアの持続可能な収益化モデルの一例として注目されます。年間約2回のメジャーアップデートということは、年間コストは約£5($6.70)程度となる計算です。
技術的な観点では、FydeOSはChromiumOSをベースとしながら、Microsoft 365統合やOneDriveサポートなど、Googleエコシステム以外との連携を強化している点が特徴的です。これは企業ユーザーにとって重要な選択肢となり得ます。
一方で注意すべき点もあります。中国企業が関与していることから、2017年の中国国家情報法により、政府からの要請があれば情報開示が求められる可能性があります。プライバシーを重視してFydeOSを選択する際は、この点も考慮する必要があるでしょう。
長期的には、FydeOSのようなオープンソース代替OSの成功が、大手テック企業の独占的地位に対する健全な競争圧力となることが期待されます。特にWindows 11非対応の古いPCの再活用という実用的価値は、サステナビリティの観点からも重要な意味を持ちます。
【用語解説】
ChromiumOS – Googleが開発するChromiumブラウザをベースとしたWebベースオープンソースオペレーティングシステム。ChromeOSの基盤となる。
LTS(Long Term Support) – 長期サポート版のこと。安定性を重視した バージョンで、通常より長期間のサポートが提供される。
SBC(Single Board Computer) – CPUやメモリ、ストレージなどが1枚の基板に実装された小型コンピュータ。Raspberry Piが代表例。
OVA(Open Virtualization Appliance) – 仮想マシン環境で使用するための標準化されたパッケージ形式。VMwareなどで利用される。
フォーク – 既存のオープンソースソフトウェアから分岐して独自に開発を進めること。元のプロジェクトとは別の方向性で発展する。
FOSS(Free and Open Source Software) – 無料かつオープンソースのソフトウェアを指す。ソースコードが公開され、自由に利用・改変できる。
【参考リンク】
FydeOS公式サイト(外部)
FydeOSの公式サイト。製品の詳細情報、ダウンロード、企業向けソリューションなどを提供している。
Fyde Innovations GitHub(外部)
FydeOSのオープンソース版「openFyde」のソースコードを公開。技術的な詳細や開発状況を確認できる。
ChromeOS LTSリリース情報(外部)
GoogleによるChromeOS LTSリリースサイクルの公式情報。FydeOSのアップデート頻度の参考となる。
【参考記事】
FydeOS v20 Released: Microsoft 365 Integration, OneDrive(外部)
FydeOS v20の新機能について報告。Microsoft 365統合とOneDriveサポートの追加により、Googleエコシステム以外との連携が強化されたことを解説。
Considering FydeOS for Work Use: Privacy Concerns and Questions(外部)
RedditでのFydeOSのプライバシーに関する議論。中国企業の関与に対する懸念と、それに対する反論が展開されている。
FydeOS: A Better X64 ChromeOS(外部)
仮想化技術専門メディアによるFydeOSの技術的評価。x64環境でのChromeOS代替としての性能と機能を詳細に分析。
【編集部後記】
古いPCやタブレットが眠っている方も多いのではないでしょうか。FydeOSのような代替OSの登場は、廃棄予定だったデバイスに新たな価値を与える可能性を秘めています。
みなさんは、プライバシーを重視してGoogleサービスから距離を置きたいと感じたことはありませんか?一方で、完全に脱Googleするのは現実的に難しい場面もあります。FydeOSのような「選択肢がある」ということ自体が、テック企業の独占に対する健全なバランス感覚を保つ上で重要かもしれません。
古いデバイスの再活用体験や、代替OS への期待について、ぜひお聞かせください。