株式会社エクサウィザーズおよびグループ会社のExa Enterprise AIは、東京都港区が「exaBase 生成AI for自治体」を全庁に導入したことを2025年11月19日に発表した。
港区は2025年5月から同サービスの活用を開始し、10種類以上の独自プロンプトテンプレートやRAG(データ連携機能)を導入している。exaBase 生成AI for自治体は、自治体向けの専用ネットワーク環境「LGWAN」に対応し、高いセキュリティを確保した生成AIサービスである。直近の職員アンケートでは8割以上の職員が生成AIの継続利用を希望している。
活用事例には、会議議事録や通知文書の要点整理、専門資料の概要作成、キャッチコピー案の作成、イベントや地域活性化施策の企画アイデア、業務プロセス改善に関するアイデア出しなどがある。
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東京都港区が「exaBase 生成AI for自治体」を全庁に導入
【編集部解説】
今回の港区による「exaBase 生成AI for自治体」全庁導入は、日本の自治体DX推進の“分水嶺”を示す取り組みです。2025年現在、都道府県や政令指定都市では実証実験を含めるとAI利用率がほぼ100%に達し、市区町村でも約30%が導入済みとなっており、実証実験中を含めると過半数を超えています
この背景には、人手不足や住民サービス高度化への対応という現場の課題があります。これまで職員が手作業で行っていた膨大な文書作成や情報整理がAIによって自動化され、自治体ごとに実効性が生まれています。例えば広島県では全職員がAIツールを活用し、約40%は時間短縮などの「効果があった」と回答する成果を上げています。
港区の特徴は10種以上の独自プロンプトテンプレートやRAG(検索拡張生成)といった専門的な運用ノウハウを生かし、現場職員の要約や議事録作成、政策アイデア出し、住民対応など多角的な業務で生成AIの価値を引き出している点です。職員アンケートでも8割以上が利用継続を希望するなど、現場での定着が進んでいることがうかがえます。さらに、LGWAN等の高セキュリティ環境を活かして自治体データ保護や情報漏洩対策も強化されており、安心してAIを現場運用できる環境が整いつつあります。
一方、自治体AI活用が広がるにつれ「AIブラックボックス化による透明性不足」「人材や予算の格差」「運用現場のスキルギャップ」など新たな課題も表面化しています。特に小規模自治体では人と予算・ITリテラシーの壁から導入が進みにくい現実がありますが、港区の全庁モデルや他自治体の連携事例が今後の全国展開へとつながるでしょう。
生成AIの進化は、職員がより創造的な仕事に専念できるDX基盤となり、住民参加に根ざした新しい自治体像の形成を後押ししています。行政×AIが当たり前となる日も、そう遠くありません。
【用語解説】
exaBase 生成AI for自治体
株式会社エクサウィザーズが提供する自治体向け生成AIプラットフォームでLGWAN対応、高セキュリティ環境、独自プロンプトとRAG機能を備える
RAG(Retrieval-Augmented Generation)
生成AIが外部のデータベースから関連情報を検索・取得し、その上で回答を生成する仕組み。AIのハルシネーション抑制と正確性向上に寄与
LGWAN
総合行政ネットワーク。地方自治体間の閉域通信を担い、高度なセキュリティを確保する専用ネットワーク
プロンプトテンプレート
生成AIへの指示文のひな型で業務用途ごと最適化したフォーマット。標準化と効率化を実現
【参考リンク】
株式会社エクサウィザーズ 公式サイト(外部)
AIによる産業革新・社会課題の解決を掲げる企業。生成AIプラットフォーム「exaBase」等ソリューション提供。
exaBase 生成AI for自治体(外部)
LGWAN対応の自治体専用生成AIサービス。固定料金制・業務テンプレート等の機能を備える。
東京都港区公式ホームページ(外部)
先進的な行政サービス・DX推進に積極的な東京都の自治体。人口約26万人。
総務省 LGWAN概要資料(外部)
総務省公開のLGWAN解説資料。自治体向け通信・セキュリティ基盤の技術詳細。
【参考記事】
自治体における生成AI導入状況(総務省)(外部)
2025年6月時点の自治体AI導入率をまとめた公式統計。実証中、導入予定を含めると都道府県・指定都市は100%、その他の市区町村は51%が生成AIの導入に向けて取り組んでいる。
過半数が生成AIをほぼ毎日使用(Graffer)(外部)
2025年9月調査による自治体デジタル化の最新事情。AIの日常的活用事例も多数解説。
exaBase 生成AIが4万人突破(エクサウィザーズ)(外部)
2024年1月のユーザー数4万突破。同サービスの自治体向け新展開の解説。
Japan’s AI Governance: Major Government Steps Since the AI Act(外部)
日本政府のAI規制・ガバナンスと自治体導入政策の2025年最新動向。
【編集部後記】
今回の港区の取り組みは、生成AIが自治体の「日常」になりつつある現実を示しています。みなさんがお住まいの自治体では、どのような行政サービスでAIが活用されているでしょうか。
窓口対応や問い合わせ、防災情報の発信など、身近なところで既に恩恵を受けているかもしれません。自治体のDXは私たち住民の生活の質に直結するテーマです。今後、自治体がAIをどう活用し、どんな新しいサービスを提供していくのか、一緒に注目していきたいと思います。
























