名古屋大学が解明!30億年前の緑の海と現代の海洋変化 – 地球の歴史を海の色から読み解く

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2025年2月、名古屋大学の研究チームが、地球の海が約30億年前から6億年前まで緑色だったという「緑の海仮説」を科学誌「Nature Ecology & Evolution」で発表した。

主な要点は以下の通り

海が緑色だった原因は、海中の鉄イオンが青色光と紫外線を吸収したため。
この環境下で、シアノバクテリアが緑色光を吸収するフィコビリン色素を進化させた。
約24億年前の大酸化イベントにより、海中の鉄が酸化され沈殿し始めた。
約6億年前に2回目の酸化イベントが起こり、海は現在の青色に変化した。
研究チームは、コンピューターモデルと環境再現実験を用いてこの仮説を検証した。
現代の類似環境として、日本の薩南諸島・硫黄島近海が調査された。
この研究は、地球の生命進化と海洋環境の変遷の理解に新たな視点を提供している。
現在、気候変動の影響で海が再び緑色に変化しつつある可能性が指摘されている。

from:Earth’s Oceans Were Once Green—And They Might Be Turning Green Again

【編集部解説】

名古屋大学の研究チームが発表した「緑の海仮説」は、地球の歴史における海の色の変化を新たな視点から解明しています。約30億年前から6億年前まで、地球の海は緑色をしていました。これは、海水中に溶けていた大量の鉄イオンが原因でした。

この緑色の海の環境下で、シアノバクテリアという光合成を行う微生物が進化しました。シアノバクテリアは、フィコビリンという特殊な色素を発達させ、緑色光を効率的に吸収できるようになりました。これは、当時の海の環境に適応した結果であり、生命の進化における重要な一歩だったと考えられます。

約24億年前に起こった大酸化イベントにより、大気中の酸素濃度が上昇し始めました。この酸素が海中の鉄と反応して酸化鉄となり、海底に沈殿していきました。さらに、約6億年前に2回目の酸化イベントが起こり、海水中の鉄濃度が大幅に低下し、現在のような青い海になりました。

しかし、興味深いことに、現在の海が再び緑色に変化しつつある可能性が指摘されています。これは、地球温暖化による海水温の上昇や、二酸化炭素濃度の増加が原因とされています。

MITの研究によると、2023年の時点で世界の海洋の56%が測定可能な緑化を経験しているそうです。この変化は、海洋生態系に大きな影響を与える可能性があります。植物プランクトンの増加は、一見すると海洋生物にとって良いことのように思えますが、実際には食物連鎖のバランスを崩す可能性があります。

また、海の色の変化は、地球規模の気候システムにも影響を与える可能性があります。海の色が変わることで、太陽光の反射率や吸収率が変化し、これが地球全体の熱バランスに影響を与える可能性があるのです。

さらに、この研究は地球外生命の探索にも応用できる可能性があります。他の惑星で緑色の海が観測されれば、そこに生命が存在する可能性を示唆する重要な手がかりとなるかもしれません。

最後に、この研究は私たちに地球環境の複雑さと、人間活動が及ぼす影響の大きさを再認識させてくれます。海の色の変化は、私たちが目で見て確認できる環境変化の一つです。これを通じて、私たち一人一人が環境保護の重要性を実感し、行動を起こすきっかけになることを願っています。

【用語解説】

  • シアノバクテリア
    藍藻とも呼ばれる光合成を行う原核生物です。地球上で最初に酸素を作り出した生物として知られています。
  • フィコビリソーム
    シアノバクテリアの光合成に必要な「アンテナ」のような役割を果たす複合体です。光を効率よく集める働きがあります。
  • フィコビリン
    光を吸収する色素分子です。フィコビリソームの主要な構成要素で、光の色によって異なる種類があります。
  • 大酸化イベント
    約24億年前と6億年前に起こった、地球の大気に大量の酸素が蓄積された出来事です。生命の進化に大きな影響を与えました。

【参考リンク】

  • 名古屋大学(外部)
    「緑の海仮説」研究を行った大学。最新の研究成果や学術情報を提供しています。
  • 東京工業大学(外部)
    シアノバクテリアのフィコビリソーム研究を行っている大学。先端的な科学技術研究の情報を発信しています。

【参考動画】

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