地球の酸素消失に関する研究が2025年2月19日、Nature Geoscience誌に掲載された。
主な研究結果
約10億年後、地球の大気中の酸素が現在の約100万分の1まで激減する
この変化は地質学的な時間スケールでは急速に進行する
原因は太陽の明るさの増加による大気中の二酸化炭素の分解
研究チーム
東邦大学 尾崎和海准教授
ジョージア工科大学 クリス・ラインハード准教授
研究の重要な指摘
地球は約24億年前の大酸化イベント(GOE)以降、現在の酸素が豊富な状態を維持
酸素減少後は、メタンが支配的な環境に戻る
オゾン層も消失し、有害な太陽放射が地表に到達
嫌気性微生物以外の生命体は生存が困難になる
関連プロジェクト
NASA NExSS(系外惑星システム科学のためのネクサス)が、酸素以外の生命の痕跡を探索中
数値データ
現在の地球大気中の酸素濃度:約21%
10億年後の予測酸素濃度:現在の約100万分の1(約0.0000021%)
from:Earth’s Oxygen Is Disappearing—And It’s Bad News for Humanity!
【編集部解説】
この研究は2021年に発表された重要な論文を基にしており、Nature Geoscience誌に掲載された信頼性の高い研究成果です。東邦大学の尾崎和海准教授とジョージア工科大学のクリス・ラインハード准教授による40万回以上のシミュレーションに基づいています。
まず注目すべき点は、この研究がNASAのNExSS(系外惑星システム科学のためのネクサス)プロジェクトの一環として行われたことです。これは単なる地球の未来予測ではなく、系外惑星における生命探査の方法論を見直す重要な示唆を含んでいます。
研究チームは、生物圏の有無による2つのシナリオをモデル化しましたが、興味深いことに両者とも約10億年後に急激な酸素減少を示しました。これは、植物の光合成による影響よりも、地球のマントルと表層環境の間の長期的な相互作用が重要であることを示唆しています。
特筆すべきは、この変化が地質学的な時間スケールでは「急激」に起こるという点です。約1万年という期間で大気中の酸素が現在の100万分の1まで減少するとされています。これは生物の進化による適応が難しいスピードです。
また、この研究は地球型惑星における生命探査の方法論に大きな影響を与える可能性があります。現在、系外惑星の生命探査では酸素の存在が重要な指標とされていますが、この研究結果は、酸素が豊富な期間は惑星の生命保有期間の20-30%程度に過ぎないことを示唆しています。
ただし、この研究結果は決して悲観的なものではありません。むしろ、生命を持つ惑星の多様性についての理解を深め、より効果的な生命探査方法の開発につながる可能性があります。例えば、メタンなどの炭化水素による大気のもや(ヘイズ)が、より長期的な生命の痕跡となる可能性が指摘されています。
最後に、この研究は地球環境の「一時性」を改めて認識させるものです。現在の酸素に富んだ環境は、地球の46億年の歴史の中でも特殊な時期であり、私たちはその貴重な時期に生きているということを意識する必要があるでしょう。