2025年2月19日、米国アリゾナ州のキットピーク国立天文台の暗黒エネルギー分光器(DESI)を使用した研究チームが、新たに約2,800個のブラックホールを発見したと発表しました。
この中には、300個の中間質量ブラックホール候補と、約2,500個の矮小銀河の中心で活発に物質を取り込んでいるブラックホール候補が含まれています。
中間質量ブラックホールは、太陽の質量の100倍から10万倍の範囲にあり、これまで観測例が少なかったものです。今回の発見により、既知の中間質量ブラックホール候補の数が3倍以上に増加しました。
研究チームは、DESIを使用して41万個の銀河のスペクトルを分析しました。その結果、約2,500個の矮小銀河の中心に活動的な銀河核(AGN)が存在することを確認しました。
DESIは、一度に5,000個の銀河の光を捉えることができる最先端の観測装置で、米国エネルギー省(DOE)と国立科学財団(NSF)の資金提供により運用されています。現在、DESIの観測は4年目に入っており、最終的に4,000万個の銀河を観測する予定です。
この発見は、銀河とブラックホールの形成・進化の理解に新たな視点をもたらし、特に小規模な銀河におけるブラックホールの存在と役割について、これまでの理論に挑戦する結果となりました。
from:Scientists May Have Discovered 300 of the Rarest Black Holes in the Universe
【編集部解説】
この発見が私たちの宇宙理解にどのような影響を与えるのか、詳しく解説していきましょう。
まず、この研究の重要性について説明します。中間質量ブラックホールと矮小銀河の中心にある活動的なブラックホールの大規模なサンプルが発見されたことは、宇宙の進化と構造形成に関する私たちの理解を大きく前進させる可能性があります。
特に注目すべきは、これまで観測が困難だった中間質量ブラックホールの発見です。これらのブラックホールは、宇宙初期に形成された最初のブラックホールの名残である可能性があり、超巨大ブラックホールの種となった可能性があります。この発見により、ブラックホールの成長過程や銀河との共進化についての新たな洞察が得られるかもしれません。
また、矮小銀河における活動的な銀河核(AGN)の発見率が従来の予想を大きく上回ったことも重要です。これは、これまで見逃されていた多くの低質量ブラックホールが存在する可能性を示唆しています。この結果は、銀河の形成と進化に関する現在のモデルに再考を促す可能性があります。
DESIの技術的革新も注目に値します。DESIの高感度な光ファイバーにより、銀河の中心をより詳細に観測することが可能になりました。これは、今後の宇宙観測技術の発展にも大きな影響を与えるでしょう。
しかし、この発見にはまだ多くの謎が残されています。例えば、中間質量ブラックホール候補と矮小銀河のAGN候補の重複が予想よりも少なかったことは、ブラックホールの形成と進化に関する現在の理論に挑戦を投げかけています。
この研究結果は、宇宙の構造形成や銀河の進化に関する私たちの理解を深める一方で、新たな疑問も提起しています。今後の研究により、これらの謎が解明されていくことが期待されます。
最後に、この発見が私たちの日常生活に直接的な影響を与えることは少ないかもしれませんが、宇宙の成り立ちや私たちの存在の起源に関する根本的な問いに答えるための重要な一歩となることは間違いありません。宇宙の謎を解き明かすこの壮大な探求に、今後も注目していく価値があるでしょう。