最新ニュース一覧

人気のカテゴリ


Alibaba、AIスマートグラス2025年後半発売へ|Tmall GenieチームがQualcomm AR1採用で開発

 - innovaTopia - (イノベトピア)

中国のAlibaba Groupが、2025年後半にAI搭載スマートグラスを発売する予定である。開発はTmall Genieチームが主導し、QualcommのAR1チップとBES2800チップのデュアルチップ構成を採用してバッテリー寿命を改善する。

製品は2バージョンを計画しており、ディスプレイなしバージョンと、緑色Micro LEDと回折導波管光学系を使用したAI+ARバージョンを開発中である。ソフトウェア面では、AlibabaのQuarkアプリと統合され、Tongyi大規模言語モデルを活用してスマート検索、タスク実行、対話機能を提供する。Alibabaは過去にRokid、RayNeoなどのAR企業と提携し、元SmartisanとHuawei幹部のWu Dezhou氏が設立したスタートアップARknovvに投資している。
From:
文献リンクAlibaba’s Tmall genie team reportedly developing AI smart glasses for 2025 launch

【編集部解説】

Alibabaが開発中のAIスマートグラスについて、注目すべきは、この製品が単なるガジェットではなく、中国テック企業によるウェアラブルAI市場への本格参入を意味する点です。

デュアルチップ構成の技術的意味

QualcommのAR1とBestechnic(恒玄科技)のBES2800というデュアルチップ構成は、技術的に興味深い選択です。AR1は高性能な画像・映像処理を担当し、BES2800は6nmプロセスの超低消費電力AIチップとして音声処理や基本的なAI機能を担います。この組み合わせにより、バッテリー寿命を大幅に改善できる可能性があります。

ただし、2つの異なるシステムを同期させる技術的課題は決して小さくありません。Meta Ray-Banが単一チップで成功している中、Alibabaがあえて複雑な構成を選んだのは、より高度なAI機能の実現を目指しているからでしょう。

Quarkアプリとの統合が持つ戦略的意味

このスマートグラス最大の特徴は、AlibabaのQuarkアプリとの深い統合にあります。Quarkは単なる検索アプリから、AI対話、深度研究、タスク実行を統合した「AIスーパーアシスタント」へと進化しています。

スマートグラスとQuarkの組み合わせにより、ユーザーは視覚情報を基にした質問や、リアルタイムでの情報検索が可能になります。これは従来のスマートフォン操作から解放された、新しいインターフェース体験を提供する可能性があります。

ハードウェア仕様の競争力

報道によると、このAIスマートグラスはRay-Ban Metaの仕様を上回るハードウェア性能を目指しているとされています。特にデュアルチップ構成による省電力設計は、現在のスマートグラス市場の最大の課題であるバッテリー寿命を大幅に改善する可能性を秘めています。

緑色Micro LEDと回折導波管光学系の組み合わせは、将来のフルARグラスへの技術蓄積にもつながる重要な選択です。これにより、屋外環境でも十分な視認性を確保しながら、軽量な設計を実現できると期待されます。

中国市場での戦略的優位性

Alibabaの強みは、中国国内での圧倒的なエコシステム統合にあります。高德地図(Gaode Maps)、支付宝(Alipay)、淘宝(Taobao)といったサービスとの統合により、中国市場では日常生活により深く根ざした体験を提供できる可能性があります。

これは、単なるハードウェア競争を超えた、プラットフォーム戦略の違いを示しています。Meta Ray-Banが西欧市場で成功している一方、Alibabaは中国特有のデジタルエコシステムを活かした差別化を図ろうとしているのです。

プライバシーと規制への影響

スマートグラスの普及において最も重要な課題の一つがプライバシー問題です。アイルランドやイタリアのデータ保護当局は、既にMeta Ray-Banの録画インジケーターが不十分であることを指摘しています。

特にAlibabaの場合、過去に顔認識技術に関する報道があった経緯を考慮すると、同社のスマートグラスに対する規制当局の監視は、他の企業以上に厳しくなる可能性があります。

長期的な技術進化への布石

このプロジェクトで最も注目すべきは、2025年後半という比較的早期のローンチ予定です。開発が予想以上に順調に進んでいることが伺えます。

ディスプレイなしバージョンとAI+ARバージョンという2段階アプローチは、市場受容性を確認しながら段階的に技術を向上させる戦略として理にかなっています。特にAR版で採用予定の技術は、将来のフルARグラスへの技術蓄積にもつながるでしょう。

ウェアラブルAI市場への示唆

Alibabaの参入は、ウェアラブルAI市場の競争激化を意味します。現在Meta Ray-Banが独走している市場に、中国最大級のテック企業が本格参入することで、技術革新のペースが加速する可能性があります。

2025年後半には複数の新製品が市場に投入される予定であり、スマートグラス市場にとって重要な転換点となることが予想されます。このように、AlibabaのAIスマートグラスは単なる新製品発表を超えて、ウェアラブルAI時代の本格的な到来を告げる重要な分岐点となる可能性を秘めています。

【用語解説】

デュアルチップ構成
異なる機能を持つ2つのチップを組み合わせて動作させる設計手法である。本記事では、高性能なAR1チップと低消費電力のBES2800チップを組み合わせることで、処理能力とバッテリー寿命の両立を図っている。

回折導波管光学系
光を微細な溝構造で制御し、薄型のディスプレイ表示を実現する光学技術である。ARグラスでは、この技術により軽量でありながら鮮明な映像表示が可能になる。

Micro LED
従来のOLEDより小型で高輝度、長寿命を実現する次世代ディスプレイ技術である。スマートグラスにおいては、明るい屋外環境でも視認性を保つために重要な技術となっている。

Wu Dezhou氏
元SmartisanとHuaweiの幹部で、ARスタートアップARknovvの創設者である。中国のスマートフォンとAR業界で豊富な経験を持つ人物として知られている。

【参考リンク】

Alibaba Group公式サイト(外部)
中国最大のEコマース企業であるAlibabaグループの公式サイト。同社の事業領域、企業情報、最新の技術開発について包括的な情報を提供している。

通义(Tongyi)公式サイト(外部)
AlibabaのAI大規模言語モデル「通義千問(Tongyi Qianwen)」の公式サイト。AIアシスタント機能を直接体験でき、対話型AIサービスへのアクセスが可能である。

Qualcomm Snapdragon AR1プラットフォーム(外部)
スマートグラス向けに設計されたQualcommのAR専用チップセットの公式情報ページ。AR1チップの技術仕様と機能について詳細な情報を提供している。

Bestechnic公式サイト(外部)
BES2800チップの開発元である恒玄科技(Bestechnic)の公式サイト。Bluetooth音声処理やウェアラブル向けチップソリューションの詳細情報を掲載している。

RayNeo公式サイト(外部)
TCL傘下のARグラス専門ブランドRayNeoの公式サイト。消費者向けARグラス製品ラインナップと技術仕様、開発者向け情報を提供している。

Rokid公式サイト(外部)
産業用および消費者向けARグラス開発企業Rokidのグローバル公式サイト。AR技術とスマートグラス製品の最新情報、開発者向けリソースを提供している。

【参考動画】

【参考記事】

Alibaba Confirms AI Smart Glasses Plan, Expected to Launch by End of 2025(外部)
AlibabaのAIスマートグラス計画の確定とハードウェア仕様について、技術的詳細を含めて詳しく報じた記事。

Alibaba will release its first self-developed AI glasses this week(外部)
Alibabaの自社開発AIグラスの最新情報と、同社のAI戦略における位置づけについて報じた記事。

Snapdragon AR1+ Is A New Chip For High-End Smart Glasses(外部)
QualcommのSnapdragon AR1+チップについて、技術仕様とスマートグラス業界への影響を詳しく解説した記事。

【編集部後記】

AlibabaのAIスマートグラスが描く未来、皆さんはどう感じられましたか?私たちは今、スマートフォンの次を担うデバイスが姿を現す歴史的瞬間に立ち会っているのかもしれません。

Meta Ray-Banとは異なる中国式のアプローチが、どのような体験をもたらすのでしょうか。特にQuarkアプリとの統合やTongyi大規模言語モデルの活用は、日常生活をどう変えていくのか興味深いところです。

VR/ARニュースをinnovaTopiaでもっと読む

投稿者アバター
乗杉 海
新しいものが大好きなゲーマー系ライターです!

読み込み中…
読み込み中…