フランス系イタリアのアイウェア大手EssilorLuxotticaは2025年7月28日の第2四半期決算説明会で、Ray-Ban Metaスマートグラスの2025年上半期売上が前年同期比3倍以上(200%超)に増加したと発表した。
CEOのFrancesco Milleriは業績が極めて好調だと述べた。同社は2026年末までに年間生産能力を1000万台に引き上げる予定で、2025年2月時点でRay-Ban Metaの累計販売台数は200万台に達している。Metaは2025年7月初旬にEssilorLuxotticaの3%の株式を30億ユーロで取得し、将来的に5%まで引き上げる可能性がある。
新製品のOakley Meta HSTNグラスの限定版は既に予約開始され、通常版は数週間内に発売される。次期製品のOakley Meta Sphaeraグラスは中央配置カメラを搭載予定だ。競合他社ではGoogleが2025年5月14〜15日開催のGoogle I/Oで、Warby ParkerとGentle Monsterとの提携を発表し、6月にGentle Monster株4%を約1億ドルで取得した。AppleもBloombergのMark Gurmanによると2026年後半に同様のスマートグラスを発売予定とされる。
From:Ray-Ban Meta Sales Have More Than Tripled This Year So Far
【編集部解説】
スマートグラスが”実験機”から”量産製品”へ
Ray-Ban Metaが短期間で200%超の成長を示した最大の理由は、AIアシスタントを含む実用機能が生活導線に溶け込んだ点にあります。撮影・通話・翻訳といった複数のユースケースが一台で完結し、価格も300ドル台からと、可処分所得に見合う水準に収まったことが追い風になりました。
Google・Apple参戦で生じるプラットフォーム競争
Googleが6月にGentle Monster株4%を約1億ドルで取得した事実は、ハードウェアOEMとの資本提携を軸にした”第二のウェアラブル戦争”の幕開けを示唆します。Android ウェアラブルOSがメガネ型へ拡張されれば、スマホ市場で見られたエコシステム競争が再現される可能性があります。アップルはVision Proのノウハウを活かしつつ2026〜27年を視野に「より軽量なAR端末」で巻き返しを狙うとみられます。
利便性とプライバシーのせめぎ合い
ディスプレイ非搭載・録画時LED点灯といった配慮はあるものの、街中での常時カメラ装着は監視社会への懸念を呼びます。欧州ではGDPR、米国では州単位のプライバシー法が議論を活発化させており、日本でも同様の議論が加速するでしょう。
産業インパクトと次の5年
EssilorLuxotticaは2026年末に年間1,000万台の量産体制を敷きます。これは初代Apple Watchの年間出荷台数(推定1,200万台/2015年)に迫る規模であり、”メガネ型AI端末”が本格的な量産フェーズへ入ることを意味します。音声・画像・翻訳というマルチモーダルAIの接点が日常生活に常駐する世界は、広告、ヘルスケア、リテールなど複数産業に波及効果を与えるでしょう。
【参考リンク】
Ray-Ban Meta公式サイト(外部)
MetaとRay-Banが共同開発したスマートグラスの公式サイト。日本語での製品紹介、機能説明が掲載されている。
EssilorLuxottica公式サイト(外部)
世界最大のアイウェア企業EssilorLuxotticaの公式サイト。グループ概要、ブランドポートフォリオ、財務情報、戦略について記載。
Oakley Meta HSTN公式サイト(外部)
Oakley Meta HSTNスマートグラスの公式製品ページ。仕様、価格、購入可能国、サポート情報が提供されている。
Gentle Monster公式サイト(外部)
韓国発のアイウェアブランドGentle Monsterの公式サイト。Googleとの提携でスマートグラス開発を進める競合企業。
Warby Parker公式サイト(外部)
アメリカのD2Cアイウェアブランド公式サイト。Googleとの提携によりGeminiスマートグラス開発を進める競合企業。
【参考記事】
Ray-Ban Meta smart glasses revenue tripled over the year(外部)
CNBC記事。EssilorLuxottica決算でRay-Ban Metaの売上が3倍増したことを報じ、Meta投資の背景も解説。
Google to invest $100m in Gentle Monster to develop AI-powered glasses(外部)
GoogleがGentle Monsterに1億ドルを投資し、AI搭載スマートグラスを共同開発することを詳報。
Apple Smart Glasses Launching in 2026(外部)
MacRumors記事。AppleのスマートグラスがMeta Ray-Ban対抗として2026年末に発売予定と報じ、詳細な機能も紹介。
【編集部後記】
Ray-Ban Metaの急成長は、私たちの日常にスマートグラスが本格的に浸透する時代の始まりを示しています。あなたは普段、どのような場面でスマートグラスを使ってみたいと思いますか?旅行先での翻訳、料理中のレシピ確認、ハンズフリーでの写真撮影など、想像するだけでワクワクしませんか。一方で、常時録画可能なデバイスが普及することで生まれるプライバシーの課題についても考えてみてください。便利さと安全性のバランスを保つには、私たち利用者一人ひとりの意識が重要になってきます。みなさんはこの新しい技術をどのように受け入れ、活用していきたいと考えていますか?ぜひコメントでお聞かせください。