Rokid AI Glasses、49gの軽量ARグラスでリアルタイム翻訳とテレプロンプター機能を実現

[更新]2025年8月27日15:20

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Digital TrendsがRokidの新しいAI搭載ARグラス「Rokid AI Glasses」をハンズオンレビューした。同製品はリアルタイム翻訳機能を搭載し、会話と画像の翻訳が可能である。テレプロンプターモード、オブジェクト・シーン認識、HUDナビゲーション機能も備える。

ハードウェア仕様はQualcomm AR1プロセッサー、2GBのRAM、32GBストレージを搭載する。各目に480×398ピクセル解像度、1,500ニットの輝度を持つマイクロLEDディスプレイを装備し、23度の視野角を提供する。12MP写真撮影と1680p動画録画に対応し、AIノイズキャンセレーション付き4つのマイクを内蔵する。

重量は49グラム、IPX4防滴性能を持つ。210mAhバッテリーと充電ケースで最大10回の再充電が可能である。処方レンズ対応の磁気アタッチメントも提供される。ChatGPTを含むAIアシスタントが機能を支える。

Kickstarterで499ドルで販売中で、これは599ドルのMSRPから100ドル割引である。

From: 文献リンクI tried Rokid’s new AI-powered AR glasses. They’re incredible

【編集部解説】

今回のRokid AI Glassesのレビュー記事を深く分析すると、現在のスマートグラス業界における重要な転換点を示している内容であることがわかります。

まず、このデバイスが解決しようとしている根本的な課題について考えてみましょう。Google Glassが13年前に登場して以来、私たちはディスプレイ機能を備えたARグラスが日常的に使える段階に到達するまで長い時間を要しました。Ray-Ban Metaのようなスマートグラスは確かに優秀ですが、主にコンテンツ制作に特化しており、日常業務や旅行での実用性という面では限定的でした。

Rokidが注目すべき点は、AI機能とAR技術を統合したアプローチです。特にリアルタイム翻訳機能は、従来の翻訳アプリやデバイスとは一線を画す体験を提供します。画像翻訳においては、メニューや看板などの静的コンテンツを瞬時に理解できる利点がありますが、記事で言及されているように翻訳の一貫性にはまだ課題があります。これは現在のAI技術の限界を示しており、実際の使用場面では複数回の試行が必要になる可能性があります。

技術仕様の面では、Qualcomm AR1プロセッサーと49グラムという軽量設計が印象的です。従来のARヘッドセットが重量による装着疲れで普及を阻まれてきた中で、この軽量化は大きな前進といえるでしょう。1,500ニットの輝度と23度の視野角は、屋内環境では十分な性能を発揮しますが、明るい屋外環境での視認性については実証が待たれます。

テレプロンプター機能は、特にコンテンツクリエーター市場において差別化要因となる可能性が高いです。従来のテレプロンプター設備は大型で持ち運びが困難でしたが、これをウェアラブルデバイスに統合したことで、動画制作の機動性が大幅に向上します。

バッテリー性能については、210mAhの本体バッテリーに加えて3000mAhの充電ケースが付属し、最大10回の再充電が可能です。公式情報では適度な使用で一日中の使用が可能とされていますが、AI機能やディスプレイを頻繁に使用する場合の実際の持続時間は使用パターンによって大きく左右されるでしょう。また、ChatGPTに依存したAI機能は、ネットワーク接続が不安定な環境では期待通りの性能を発揮できない可能性があります。

プライバシーの観点では、常時装着型のカメラとマイクを搭載したデバイスが一般に普及することで、社会的な議論が活発化することが予想されます。公共スペースでの録画・録音機能の使用については、法的・倫理的なガイドラインの整備が急務となるでしょう。

市場戦略として、Kickstarterでの499ドルという価格設定は、早期採用者層にアピールする適切な水準と考えられます。しかし、一般消費者への普及を考えると、さらなるコスト削減と機能の安定性向上が必要になります。

長期的な視点では、RokidのようなAI統合型ARグラスが成功することで、スマートフォンに次ぐ主要なコンピューティングプラットフォームとしての地位を確立する可能性があります。特に、多言語環境でのビジネス活動や教育分野での活用が期待され、グローバル化が進む現代社会において重要な役割を果たすかもしれません。

【用語解説】

AR(拡張現実)
現実世界にデジタル情報を重ね合わせて表示する技術。Virtual Reality(VR)が完全な仮想空間を作り出すのに対し、ARは現実の視界にデジタルコンテンツを追加する。

マイクロLEDディスプレイ
従来の液晶ディスプレイよりも小型で高輝度、低消費電力を実現するディスプレイ技術。ARグラスのような小型デバイスに適している。

HUD(ヘッドアップディスプレイ)
視線を下に向けることなく情報を確認できる表示システム。自動車のフロントガラスに速度を表示する技術が代表例で、ARグラスでも同様の機能を提供する。

IPX4防滴性能
水の飛沫に対する保護等級を示す国際規格。あらゆる方向からの水の飛沫に対して保護される性能を持つ。

ChatGPT
OpenAIが開発した大規模言語モデル。自然言語での質問に対して人間のような応答を生成するAIシステム。

【参考リンク】

  1. Rokid公式サイト(外部)
    中国発のAR・AI技術企業Rokidの公式サイト。ARグラスやスマートデバイスの製品情報、技術仕様、購入方法などを掲載。
  2. Digital Trends(外部)
    アメリカの大手テクノロジーメディア。最新のガジェット、ソフトウェア、デジタルトレンドに関するニュースやレビューを提供。
  3. Qualcomm(外部)
    アメリカの半導体企業。スマートフォンやARデバイス向けのプロセッサーチップを開発・製造。Rokid GlassesにはAR1プロセッサーが搭載。
  4. Kickstarter(外部)
    クリエイティブプロジェクトのクラウドファンディングプラットフォーム。Rokidは新製品の資金調達と市場テストのために活用。

【参考記事】

  1. AR you ready? Rokid’s smart glasses stole the show at CES 2025 – Gadget Flow(外部)
    CES 2025でのRokid製品の反響と評価をレポート。300インチの大画面体験や旅行での翻訳機能の有用性について言及。
  2. Best Smart Glasses of 2025 — Top AR and AI Glasses to buy right now – Tom’s Guide(外部)
    2025年の最優秀スマートグラス特集でRokid製品を評価。1200p解像度の画質とサウンド品質について専門的な分析を提供。

【編集部後記】

スマートグラスがついに「普通のメガネ」に近づいてきました。49グラムという軽さで、リアルタイム翻訳やテレプロンプター機能を実現したRokid AI Glasses。海外旅行での言語の壁、プレゼンテーションでの緊張、日々の情報収集—これらの課題をウェアラブルデバイスが解決する時代が現実となりつつあります。一方で、常時カメラを装着することへの社会的な受容性や、AIに頼りすぎることで失われる能力についても後々話題として取り上げられる日も来るかもしれません。そんな中、現代技術とどう向き合っていくのかという点も注目だと思います。


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