Last Updated on 2025-07-29 17:57 by 乗杉 海
Googleは2025年4月24日、年次開発者会議「Google I/O 2025」(5月20~21日開催)のスケジュールを公開し、新たなXR(拡張現実)オペレーティングシステム「Android XR」に関する開発者向けセッションを発表した。Android XRは、2024年12月にSamsung(韓国・ソウル)と共同発表されたミックスドリアリティ(MR)ヘッドセット「Project Moohan」(2025年3月MWC 2025で正式発表済み)と連携する。Project Moohanは、Snapdragon XR2+ Gen 2プロセッサ、パンケーキレンズ、自動IPD調整機能を搭載する。
Android XRは、既存のAndroidアプリの多くが追加開発なしで利用可能となるほか、パススルーカメラ、ハンドトラッキング、3Dモデル、ステレオスコピックビデオなどのXR機能をサポート。Jetpack SceneCoreやARCoreを統合した新しい開発ツールチェーン「Jetpack XR」も提供される。さらに、GoogleのAI「Gemini」と連携し、リアルタイム物体認識やシーン理解、AI生成環境などの機能も今後実装予定。Android XRは、AppleのvisionOSやMetaのHorizon OSといった既存のXRプラットフォームと競合する見通しである。
from Android XR Is Coming – Just Don’t Expect Google to Shout About It Yet
【編集部解説】
Android XRの登場は、スマートフォン時代から空間コンピューティング時代への大きな転換点となります。既存のAndroidアプリがほぼそのままXRデバイスで動作するため、開発者やユーザーにとって導入のハードルが低く、XR体験の普及が加速する可能性があります。Samsungの「Project Moohan」は、Snapdragon XR2+ Gen 2プロセッサや高性能パンケーキレンズ、自動IPD調整機能など、最新のハードウェアを搭載し、快適な装着感と高い没入感を両立しています。
Googleは、Jetpack XRやJetpack Composeの拡張により、モバイル・タブレット・XR間でのUIやUXの一貫性を重視しています。これにより、既存アプリのXR対応や新規XRアプリ開発が容易になるだけでなく、ユーザー体験の質も高まるでしょう。
AI「Gemini」との連携によって、リアルタイムでの物体認識やシーン理解、AI生成コンテンツなど、従来のスマートフォンやPCでは実現できなかった新しい体験が可能になります。一方で、XRデバイスの普及には価格や装着感、バッテリー持続時間、プライバシー保護といった課題も残されています。
Apple visionOSやMeta Horizon OSとの競争も激化しており、各社が独自の強みを活かしてエコシステムの拡大を図っています。Android XRは、Androidの巨大なアプリ資産と開発者コミュニティを活かし、XR市場での主導権獲得を目指しています。2025年はXR業界にとって大きな転換点となる年と言えるでしょう。
【用語解説】
XR(エックスアール):AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)など、現実世界とデジタル世界を融合させる技術全般を指す。
Android XR:Googleが開発するXR(拡張現実)デバイス向けの新しいオペレーティングシステム。既存のAndroidアプリをそのまま使えるだけでなく、空間コンピューティングやAI機能にも対応する。
Project Moohan:Samsungが開発したXRヘッドセットのコードネーム。2025年3月MWC 2025で正式発表。Snapdragon XR2+ Gen 2プロセッサ、パンケーキレンズ、自動IPD調整機能を搭載。
パススルーカメラ:ヘッドセットのカメラで現実世界の映像を取り込み、ディスプレイに表示する機能。
Jetpack XR / Jetpack Compose / ARCore:Androidアプリ開発用のライブラリ群「Jetpack」のXR対応版。Jetpack Composeは宣言的UI開発ツール、ARCoreはGoogleのAR開発プラットフォーム。
【参考リンク】
Android XR公式サイト(外部)Googleが開発するXRデバイス向け新OSの公式情報サイト。特徴や開発者向け情報を掲載。