Meta、ChatGPT対抗の独立型AIアプリ「Meta AI」を発表 ─ Llama 4搭載、ソーシャル機能で差別化

2025年4月30日11:15

AI（人工知能）ニュース

Last Updated on 2025-04-30 13:03 by admin

Meta Platforms Inc.は、OpenAIのChatGPTやGoogleのGeminiといった競合に対抗するため、最新の大規模言語モデル「Llama 4」を基盤とする新しい独立型（スタンドアロン）の対話型AIアプリケーション「Meta AI」を発表した。このアプリは、従来の「Meta View」アプリ（Ray-Ban Metaスマートグラスのコンパニオンアプリ）を統合する形で、2025年4月29日にiOS、Android、およびウェブ（meta.ai）向けにリリースされた。

Meta AIは、テキストおよび音声による対話機能に加え、アプリ内で直接画像を生成・編集する機能も統合している。さらに、Metaの強みであるソーシャルグラフを活用し、連携されたFacebookやInstagramアカウントの情報（プロフィール、いいね、エンゲージメントなど）に基づいて、よりパーソナライズされた応答を提供することを目指している（この機能は当初、米国とカナダで提供）。

特筆すべき新機能として、ユーザーがAIとの対話プロンプトや生成結果を任意で共有し、他のユーザーが閲覧・リミックスできるソーシャルハブ「Discoverフィード」が導入された。また、より自然な会話体験を実現するため、ユーザーとAIが同時に話したり聞いたりできる実験的な「フルデュプレックス音声」デモも一部地域（米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど）で提供される。

このアプリの投入は、急速に進化するAIアシスタント市場におけるMetaの競争力を高め、同社のエコシステム（Facebook、Instagram、WhatsApp、Messenger、Ray-Ban Metaスマートグラスなど）全体でのユーザーエンゲージメント向上を図る戦略的な一手と位置づけられる。

from メタがChatGPTに対抗する独立型AIアプリをリリース

※この記事はPerplexityのDiscoverを参照し、さらに情報探索と解釈、解説を加えたものです。上記URLにてこの記事に関する質問ができます。（登録不要で無料）

【編集部解説】

Metaが満を持して投入した独立型AIアプリ「Meta AI」は、単なるChatGPTの模倣を超え、同社ならではの強みを活かした野心的な試みと言えるでしょう。SFの世界がまた一歩、現実に近づいた感があります。

・Llama 4：強力なエンジンとオープンソース戦略の融合
このアプリの心臓部には、Metaが開発した最新世代の大規模言語モデル「Llama 4」があります。Llama 4は、計算効率を高める「Mixture-of-Experts（MoE）」アーキテクチャや、テキストと画像を統合的に扱うネイティブなマルチモーダル能力、そして一部モデル（Llama 4 Scout）では1000万トークンという驚異的なコンテキスト長を実現するなど、技術的に注目すべき進化を遂げています。MetaはLlamaモデル群をオープンソースとして公開し、開発者コミュニティからのフィードバックや貢献を得ながら技術を進化させてきました。このオープンな開発アプローチで培われた技術力を、Meta AIというプロプライエタリな消費者向けアプリに注ぎ込むことで、オープンソースの革新性と、クローズドな製品としての洗練されたユーザー体験やエコシステム連携の両立を目指していると考えられます。これは、技術開発と市場競争におけるMeta独自のハイブリッド戦略と言えるでしょう。ただし、Llama 4の性能については、特にコーディング能力などで期待外れだったという初期の評価も一部で見られ、今後の改善が待たれる側面もあります。

・「Discoverフィード」：AIをソーシャルな体験へ
Meta AIの最もユニークな特徴の一つが「Discoverフィード」です。これは、ユーザーが任意で共有したAIとの対話（プロンプトと結果）を、他のユーザーが閲覧し、「いいね」やコメント、共有、さらには「リミックス」して自分のアイデアとして試すことができるソーシャル機能です。従来のAIチャットボットが基本的に個人的なツールであったのに対し、MetaはAIの利用体験そのものをソーシャル化しようとしています。これにより、AIの活用方法がコミュニティを通じて発見・共有され、新たな使い方が生まれる可能性があります。これは、単なる技術力だけでなく、ネットワーク効果をAI利用に適用しようとする試みであり、Metaのソーシャルメディア企業としてのDNAが色濃く反映された戦略です。AIの「使い方」自体がコンテンツとなり、共有されることで、AIの普及と進化が加速するかもしれません。

・究極のパーソナライズか、プライバシーの悪夢か
Meta AIは、連携されたFacebookやInstagramアカウントのプロフィール情報、いいね、エンゲージメント履歴などを活用し、「あなたを理解する」パーソナルAIを目指しています。ユーザーが明示的に「これを覚えておいて」と指示できる記憶機能も搭載されています。これにより、例えば「私の過去の旅行の投稿とハイキングへの興味に基づいて、週末の旅行先を提案して」といった、極めて個人的な文脈に基づいた応答が可能になるかもしれません。

この深いパーソナライズは、他のAIアシスタントにはない強力な利便性をもたらす可能性があります。しかし、それは同時に、Metaが持つ膨大な個人データをAIがどのように利用するのかという、深刻なプライバシー懸念を引き起こします。Metaはその歴史から、データ利用に関してユーザーからの厳しい視線にさらされてきました。パーソナライズの利便性がプライバシーリスクを上回るとユーザーを納得させられるかどうかが、この機能の成否を分ける鍵となるでしょう。パーソナライズ機能が当初、米国とカナダという限られた地域で提供されるのは、こうした懸念に対する慎重な姿勢の表れかもしれません。

・「フルデュプレックス音声」：会話AIの未来像
Meta AIは音声対話にも力を入れており、特に実験的な「フルデュプレックス音声」デモは注目に値します。これは、人間同士の会話のように、ユーザーとAIが同時に話したり聞いたりできる技術で、従来の「話す→待つ→応答」というターン制の対話とは一線を画します。これにより、より自然で流れるような、割り込みや相槌も可能な会話体験が期待されます。現在はまだ実験段階であり、リアルタイムのウェブ情報にアクセスできないなどの制限がありますが、Metaが目指すAIインタラクションの未来像を示唆しています。特にRay-Ban Metaスマートグラスとの連携を考えると、キーボード入力から解放された、より自然な音声ベースのアンビエントAIアシスタントへの布石と見ることができます。

・日常を変える可能性
これらの機能を踏まえると、Meta AIは私たちの日常や仕事の進め方を大きく変える可能性を秘めています。例えば、ユーザー提供の例にあったように、「東京タワーが見えるおしゃれなカフェの写真を生成して」と頼めば、Llama 4の画像生成能力で瞬時にイメージを提供してくれるでしょう。プレゼンテーション資料作成時に、アイデアを言葉で伝えるだけで、AIが関連性の高い画像や、場合によってはテキストと画像を組み合わせたドキュメントの草案を作成してくれるかもしれません（文書生成機能はテスト中）。Discoverフィードで見つけた面白いプロンプトを参考に、自分のプロジェクト用のロゴデザインを生成させる、といった使い方も考えられます。

・競合との比較
Meta AIは、既存の主要なAIアシスタントとどのように異なるのでしょうか。以下の表で比較してみましょう。

特徴	Meta AI	ChatGPT (GPT-4o)	Google Gemini	主要な差別化要因の分析
基盤モデル	Llama 4 (Scout, Maverick等)	GPT-4o	Gemini (Pro, Ultra等)	Metaは自社開発のLlama 4を活用。オープンソース版も存在。
パーソナライズ	Facebook/Instagramのソーシャルデータ連携、記憶機能	チャット履歴に基づく	Googleアカウントデータ連携（限定的）	Metaのソーシャルデータ活用が最大の武器であり、プライバシー懸念も大きい。
ソーシャル機能	Discoverフィード（プロンプト共有・リミックス）	限定的（共有リンクなど）	なし	Meta独自の機能。AI利用体験のソーシャル化を目指す。
音声対話	フルデュプレックス音声デモ（実験的）	高度な音声対話	音声対話	Metaはより自然な同時会話を目指す技術を実験投入。
画像生成	統合（アプリ内で生成・編集）	統合（DALL-E経由）	統合（Imagen経由）	各社とも統合済みだが、Metaはアプリ内での編集機能も強調。
エコシステム連携	Metaアプリ群、Web、Ray-Ban Meta	アプリ、Web、API	Google Workspace、Googleアプリ群、Web	Metaは自社SNSとハードウェア（グラス）連携が強み。Googleは生産性ツール連携。
データソース（学習・パーソナライズ）	公開ウェブデータ、ユーザーのソーシャルデータ	公開ウェブデータ、ユーザーのチャットデータ	公開ウェブデータ、ユーザーのGoogleデータ	Metaのソーシャルデータ利用が際立つ。
オープンソースとの関連	Llamaモデルはオープンソース公開	モデルは非公開	モデルは非公開	Metaはオープンソース開発を活用しつつ、アプリはクローズド。

この比較から明らかなように、Metaは単に高性能なAIモデルを開発するだけでなく、自社の持つ膨大なソーシャルデータ、巨大なユーザーベース、そしてハードウェア（スマートグラス）を含むエコシステムを最大限に活用し、他社とは異なる「ソーシャルでパーソナルなAI」という独自のポジションを築こうとしています。

Meta AIの登場は、AIアシスタント市場における新たな競争軸を生み出すものです。技術的な性能競争に加え、「ソーシャル性」や「深いパーソナライズ」といった要素が、今後のAIの進化と普及において重要な役割を果たす可能性を示唆しています。ユーザーがこれらの新機能をどのように受け入れ、活用していくのか、そしてMetaがプライバシーへの懸念にどう応えていくのか、今後の展開から目が離せません。このアプリが、AIを単なるツールから、私たちの創造性を刺激し、日々の生活に寄り添う真のパートナーへと進化させる一歩となるのか、非常に興味深いところです。

【用語解説】

対話型AIアプリ (Conversational AI App): ユーザーが自然言語で質問や指示を入力すると、AIがテキストや画像などで応答するアプリケーション。ChatGPTなどの例があり、情報検索、文章作成、アイデア出しなど、多岐にわたる用途で活用されている。

Llama 4: Meta AIアプリの基盤となっている、Metaが開発した最新世代の大規模言語モデル群。計算効率を高めるMixture-of-Experts (MoE) アーキテクチャ、テキストや画像を統合的に扱えるネイティブなマルチモーダル能力、非常に長いコンテキストウィンドウ（例：Llama 4 Scoutで1000万トークン）といった特徴を持つ。Llama 4 ScoutやLlama 4 Maverickなどのモデルがあり、OpenAIやGoogleの最先端モデルに対抗することを目指している。

Discover Feed: Meta AIアプリに搭載されたユニークなソーシャル機能。ユーザーが任意で自身のプロンプトやAIの応答（テキスト、画像など）を共有できる。他のユーザーはこれを閲覧し、「いいね」、コメント、共有、さらには「リミックス」して自身のAI対話に活用することが可能。AIの活用方法に関するコミュニティ学習や発見を促進する。

Full-Duplex Voice (フルデュプレックス音声): Meta AIアプリでデモ提供されている先進的な実験的音声対話技術。従来のターン制（交互に話す）音声アシスタントとは異なり、ユーザーとAIが同時に話したり聞いたりできるため、割り込みや重複発話を含む、より自然な会話の流れを実現する。現在、リアルタイムのウェブ情報アクセス不可などの制限があり、一部地域でのみ利用可能。