Last Updated on 2025-06-24 17:29 by 乗杉 海
2025年5月12日(現地時間、日本時間5月13日)、イギリスのThe Guardianは、シリコンバレーのテクノロジー企業や起業家がAI(人工知能)による雇用の全面的な代替を現実的な目標としている現状を報じた。記事では、AIの進化が一部の仕事だけでなく、知的労働を含む多くの職種に影響を与えつつあることが強調されている。特にカリフォルニア州サンフランシスコやサンノゼなどの都市部では、AIや自動化による雇用の再編と格差拡大が深刻な社会問題となっている。ブルッキングス研究所の分析によれば、サンノゼ地域では労働者の約43%がAIや自動化による影響を受ける可能性がある。こうした動向は、パンデミックや景気後退などの社会的要因と相まって、オートメーション化の加速や中間層の衰退、ホームレスの増加など、都市社会の構造変化を促進している。シリコンバレーの起業家や専門家の間では、ベーシックインカム(UBI)など新たな社会保障の必要性も議論されている。
References:
For Silicon Valley, AI isn’t just about replacing some jobs – it’s about replacing all of them | The Guardian
The Brookings Institution(ブルッキングス研究所) | Brookings
OpenAI公式 | OpenAI
Elon Musk tells Rishi Sunak AI will put an end to work | BBC News
【編集部解説】
AIによる雇用の全面的な代替というテーマは、単なる技術革新の枠を超え、現代社会の根幹に関わる問題です。シリコンバレーでは、AIが知的労働やクリエイティブな職種にまで進出し、従来の「自動化=肉体労働の代替」という構図が大きく変化しています。ブルッキングス研究所の最新報告や現地の社会状況を見ても、AI・自動化の進展が格差拡大や中間層の消失、都市部の貧困・ホームレス問題の深刻化と密接に結びついていることが明らかです。
また、パンデミックや景気後退といった外的ショックが、企業の自動化投資を加速させる要因となっており、これまで「安定職」とされてきた業種も例外ではありません。一方で、AIや自動化が新たな雇用や産業を生み出す可能性も指摘されていますが、その恩恵が広く社会に行き渡るには、教育・再訓練やセーフティネットの拡充が不可欠です。
シリコンバレーの起業家たちがベーシックインカム(UBI)などの新しい社会保障制度を提唱する動きは、テクノロジー主導の社会変革が既存の経済・福祉モデルを根本から問い直している証拠と言えるでしょう。今後は、AIの進化と社会制度の再設計が同時並行で進むかどうかが、持続可能な未来の鍵となります。
【用語解説】
汎用人工知能(AGI):
人間と同等、またはそれ以上の幅広い認知能力を持ち、未知の状況にも柔軟に対応できる人工知能。特定のタスクに限定されず、学習・推論・問題解決などを自律的に行うことができる。
ベーシックインカム(UBI):
すべての市民に対して、無条件で一定額の現金を定期的に支給する社会保障制度。AIや自動化による雇用減少への対策として注目されている。
ブルッキングス研究所:
アメリカ合衆国ワシントンD.C.に本部を置く、公共政策や経済問題に関する世界的に著名なシンクタンク。
【参考リンク】
OpenAI公式(外部)
AI研究開発をリードする米国企業。ChatGPTやGPTシリーズなど、最先端の生成AIモデルを開発している。
The Brookings Institution(ブルッキングス研究所)(外部)
アメリカの代表的なシンクタンク。経済・社会・政策分野の調査研究を行う。
The Guardian(外部)
イギリスの有力紙。国際ニュースやテクノロジー、社会問題に関する深い分析記事を多数掲載している。