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Ledgerハードウェアウォレットを狙った誘拐事件、フランスで暗号資産犯罪が深刻化

Ledgerハードウェアウォレットを狙った誘拐事件、フランスで暗号資産犯罪が深刻化 - innovaTopia - (イノベトピア)

2025年6月、フランス・パリ郊外のメゾン・アルフォールで23歳男性が誘拐された。

犯人らは被害者を数時間拘束し、パートナーに対して5,000ユーロ(約84万円)の現金とLedgerハードウェアウォレットの鍵の引き渡しを要求した。犯人らは暴力を使って被害者から暗号資産に関する情報を聞き出した。被害者は火曜日に拉致され、クレテイユで解放された。現時点で警察は逮捕者が出たとは発表していない。

フランスでは2025年に暗号資産関連の誘拐事件が急増しており、1月にはLedger共同創設者David Balland氏の誘拐事件、5月にはPaymium CEOのPierre Noizat氏の家族を狙った誘拐未遂事件が発生している。

これらの事件は「レンチ攻撃」と呼ばれ、世界的な問題となっている。暗号資産保管会社Casa共同創設者のJameson Lopp氏は過去11年間で232件の暗号資産保有者への物理的攻撃を記録している。

From: 文献リンクCrypto user attacked in France over Ledger hardware wallet — Report

【編集部解説】

フランスで発生した今回の事件は、暗号資産業界が直面している深刻な物理的脅威の最新事例です。2025年に入ってからフランスでは暗号資産関連の誘拐事件が相次いでおり、1月のLedger共同創設者David Balland氏の誘拐事件、5月のPaymium CEO Pierre Noizat氏の家族を狙った誘拐未遂事件に続く深刻な状況となっています。

この現象の背景には、フランスの暗号資産普及率の高さと、犯罪組織の手口の巧妙化があります。今回の犯人は被害者の暗号資産保有状況を事前に把握しており、Ledgerハードウェアウォレットの存在まで知っていました。これは単なる偶発的犯罪ではなく、計画的かつ組織的な犯行であることを物語っています。

「レンチ攻撃」という用語は、どれほど強固な暗号化技術も物理的な暴力の前では無力になることを表現した皮肉な表現です。ハードウェアウォレットは確かにハッキングに対しては強固な防御力を持ちますが、所有者が脅迫されれば秘密鍵やパスフレーズを明かさざるを得なくなります。

この問題は技術的解決策だけでは対処できない複合的な課題を提起しています。暗号資産セキュリティ専門家のJameson Lopp氏が過去11年間で232件の物理的攻撃を記録している事実は、この問題が世界規模で拡大していることを示しています。

特に注目すべきは、犯罪者の手口が年々洗練されていることです。今回の事件では、被害者のパートナーに電話をかけさせ、具体的な要求(5,000ユーロの現金とLedgerウォレット)を伝える手法が使われました。これは犯人が暗号資産の仕組みを理解し、効率的な犯行計画を立てていることを意味します。

フランス当局は対応を強化しており、5月31日には暗号資産関連誘拐事件に関与した25人を起訴するなど、取り締まりが本格化しています。しかし、根本的な解決には国際的な協力体制の構築と、暗号資産保有者の行動様式の変化が不可欠でしょう。

長期的な視点では、この問題は暗号資産の大衆普及に対する重要な障壁となる可能性があります。技術的な革新だけでなく、物理的セキュリティの確保、法執行機関との連携強化、そして投資家教育の充実が急務となっています。

【用語解説】

レンチ攻撃(Wrench Attack)
暗号資産保有者に対して物理的な暴力や脅迫を用いて、秘密鍵やパスフレーズを強制的に聞き出す犯罪手法。どれほど強固な暗号化技術も、物理的な暴力の前では無力になることを皮肉った表現である。

シードフレーズ(Seed Phrase)
暗号資産ウォレットの復元に必要な12〜24個の英単語の組み合わせ。この単語列を知られると、ウォレット内の全ての暗号資産にアクセスされてしまう重要な情報である。

秘密鍵(Private Key)
暗号資産の所有権を証明し、取引を実行するために必要な暗号学的な鍵。この鍵を持つ者がその暗号資産の真の所有者となる。

ハードウェアウォレット
暗号資産の秘密鍵をオフライン環境で保管する物理的なデバイス。インターネットから切り離された状態で鍵を管理するため、ハッキングに対して高い耐性を持つ。

スワッティング(Swatting)
偽の緊急通報により、SWAT(特殊部隊)を標的の自宅に派遣させる嫌がらせ行為。暗号資産保有者への脅迫手段として使われることがある。

サイファーパンク(Cypherpunk)
暗号技術を用いてプライバシーと個人の自由を守ることを目指す活動家や思想家の総称。ビットコインの初期採用者に多く見られる。

【参考リンク】

Ledger(外部)
フランス発の世界最大手ハードウェアウォレットメーカー。ビットコインやイーサリアムなど多数の暗号資産に対応

Casa(外部)
ビットコインのマルチシグ保管サービスを提供する企業。個人や企業向けに高度なセキュリティソリューションを提供

Paymium(外部)
2011年設立のフランス初のビットコイン取引所。Pierre Noizat氏が共同創設者兼CEOを務める

【参考記事】

France hit by 10th crypto ‘wrench attack’ of 2025 as kidnappers target 23-year-old near Paris
2025年にフランスで発生した10件目の暗号資産関連誘拐事件として今回の事件を位置づけ、世界的な「レンチ攻撃」の増加傾向を分析している。

Physical Attacks Against Bitcoin Holders Surge As BTC Price Rises
2025年に暗号資産保有者への物理的攻撃が急増していることを報告。Jameson Lopp氏の統計データを基に、ビットコイン価格上昇と攻撃件数の相関関係を分析している。

2025 on track to be record year for crypto crime – report
2025年が暗号資産犯罪の記録的な年になる可能性を警告。年初から6月6日までに19.3億ドルが盗まれ、2024年全体を10%上回っていることを報告している。

【編集部後記】

今回のフランスでの事件を受けて、皆さんはご自身の暗号資産セキュリティについてどのようにお考えでしょうか。技術的な防御だけでなく、物理的な安全性についても改めて見直す時期かもしれません。

ハードウェアウォレットを使用されている方は、保管場所や使用時の環境について、どのような工夫をされていますか。また、家族や身近な人に暗号資産保有について話すべきか悩まれている方も多いのではないでしょうか。

私たちinnovaTopia編集部も、セキュリティと利便性のバランスについて日々考えさせられています。読者の皆さんの実践されているセキュリティ対策や、今回の事件を受けて感じられたことがあれば、ぜひお聞かせください。共に学び合いながら、より安全な暗号資産環境を築いていければと思います。

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TaTsu
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