Shining 3D Technology Japan株式会社は2025年10月11日、新型3Dスキャナー「EINSTAR Rockit」と「EINSTAR 2」を発表した。
EINSTAR Rockitは完全ワイヤレス設計で、青色レーザーと赤外VCSELのハイブリッド光源を搭載し、最大90fpsのスキャン速度と5MPカラーカメラを備える。EINSTAR 2はわずか重量420gで、17本の青色レーザーラインと赤外VCSELを搭載し、人間全身を約60秒でスキャン可能である。バッテリーは交換式で最大3時間連続使用できる。
SHINING 3Dは2004年の設立以来、20年以上にわたり高精度3Dビジョン技術の研究開発に取り組んでいる。本社は中国・杭州にあり、ドイツ、スペイン、米国、日本に拠点を構える。


From: SHINING 3D、新型3Dスキャナー「EINSTAR Rockit」と「EINSTAR 2」を同時発表
【編集部解説】
今回SHINING 3Dが発表した2製品は、3Dスキャン技術の民主化において重要な転換点を示しています。特に注目すべきは、両製品ともワイヤレス接続に対応した点が大きな特徴です。特にEINSTAR Rockitは完全ワイヤレス設計を謳っています。従来の3Dスキャナーは電源ケーブルやデータケーブルが必要で、スキャン範囲や作業環境が制約されていました。
EINSTAR Rockitのポケットサイズという設計は、3Dスキャン技術のモビリティを劇的に向上させます。建築現場や考古学調査、文化財の記録など、これまで大型機材の持ち込みが困難だった場所でも高精度なデジタル化が可能になります。青色レーザーと赤外VCSELのハイブリッド光源は、光沢のある金属面や深い穴といった従来スキャンが困難だった対象物にも対応できる技術です。
一方、EINSTAR 2は人間全身を約60秒でスキャンできる性能を持ちます。これはデジタルファッション、バーチャルアバター制作、医療分野でのカスタムフィット製品開発など、人体データが必要な用途で大きな意味を持ちます。17本の青色レーザーラインという仕様は、スキャン範囲の広さとディテール精度のバランスを追求した結果でしょう。
エントリーレベルの3Dスキャナー市場は、これまで価格と性能のトレードオフが課題でした。プロフェッショナル向けは数百万円規模、一方で数万円の製品は精度や安定性に難がありました。SHINING 3Dは20年以上の技術蓄積を持つ企業として、この中間層を埋める製品群を展開しようとしています。
潜在的な課題としては、ワイヤレス化に伴うデータ転送の安定性があります。Wi-Fi接続でリアルタイムに大容量の3Dデータを転送する際、環境によっては通信品質が影響を受ける可能性があります。また、バッテリー駆動時間の最大3時間という仕様は、大規模プロジェクトでは予備バッテリーが必要になるでしょう。
この技術が普及すれば、製造業のリバースエンジニアリング、教育現場での3Dモデリング教育、個人クリエイターによるデジタルアート制作など、幅広い分野で3Dデータの活用が加速します。特にAR/VR分野では、リアルな3Dアセット制作のボトルネックが解消され、コンテンツ制作の効率化が期待されます。
【用語解説】
VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)
垂直共振器面発光レーザーの略称で、半導体基板に垂直方向にレーザー光を放射する光源である。従来の端面発光レーザーと比べて低消費電力で量産性に優れ、スマートフォンの顔認証や3Dセンシング技術に広く採用されている。赤外VCSELは環境光の影響を受けにくい特性を持つ。
マーカーレススキャン
対象物に位置合わせ用のマーカー(目印シール)を貼らずにスキャンできる技術である。物体の幾何学的特徴を自動認識してトラッキングを行うため、作業効率が向上し、文化財や人体など直接マーカーを貼れない対象にも対応できる。
fps(frames per second)
1秒あたりのフレーム数を示す単位である。3Dスキャナーにおいては、1秒間に取得できるスキャンデータの枚数を表し、数値が高いほど滑らかなトラッキングが可能になる。動きのある対象や複雑な形状のスキャンでは高いfps性能が求められる。
リバースエンジニアリング
既存の製品や部品を分析・計測し、設計図やCADデータを再構築する技術である。3Dスキャンによって物理的な対象物をデジタル化し、修正や改良、互換部品の製作などに活用される。製造業における設計改善や廃番部品の復元に有効である。
【参考リンク】
SHINING 3D公式サイト(グローバル)(外部)
中国・杭州に本社を置く3Dデジタル化技術のグローバルリーダー。工業計測、歯科医療、消費者向け3Dスキャナーなど多様な製品ラインを展開。
EINSTAR製品シリーズ公式ページ(外部)
SHINING 3Dが展開するコンシューマー向け3Dスキャナーブランドの公式サイト。製品ラインナップ、技術仕様、活用事例などの情報を提供。
【参考動画】
【参考記事】
SHINING 3D Launches EINSTAR Rockit: Rock-It in Your Pocket(外部)
SHINING 3D本社による公式プレスリリース。ポケットサイズの「EINSTAR Rockit」とアップグレードモデル「EINSTAR 2」の同時発表に関する一次情報。
SHINING 3D Expands Entry-Level Lineup with EINSTAR Rockit and EINSTAR 2(外部)
3Dプリンティング専門メディアによる新製品発表のニュース記事。両モデルの主要機能、技術仕様、そしてエントリーレベル市場における位置づけについての解説。
SHINING 3D Launches EINSTAR Rockit And EINSTAR 2(外部)
初心者向け3Dプリント情報サイトによる製品紹介記事。ワイヤレス設計やハイブリッド光源といった、ユーザーの利便性に焦点を当てた機能の特長を解説。
【編集部後記】
ワイヤレスでポケットサイズの3Dスキャナーが登場したことで、デジタル化の敷居がまた一つ下がりました。皆さんは、もし手軽に3Dスキャンができるとしたら、何をデジタル化してみたいですか?思い出の品、お気に入りのフィギュア、それとも自分自身の等身大アバターでしょうか。
3Dプリンターの普及と相まって、個人がモノづくりに参加できる時代が本格的に到来しつつあります。こうした技術が身近になることで、私たちの創造性や表現の幅はどのように広がっていくのか、一緒に考えていけたら嬉しいです。