先月、Remote Controlが一番直してほしいものだと言われました——Anthropicの発表は、そんな一文から始まります。続いたのは、新しい看板より、すでに配った機能を確実に動かすための5つの改善でした。スマートフォンからの起動は、実は3月にはすでに動いていました。
Anthropicの開発者向け公式アカウント@ClaudeDevsは日本時間2026年8月22日(UTC8月21日)、Claude CodeのRemote Controlの信頼性を改善したと発表した。先月寄せられたフィードバックで「最も直してほしい」項目だったとしている。claude remote-controlを実行中のマシンはCodeタブ最上部にデバイスカードとして表示され、選んでディレクトリを指定すればそのマシンでセッションが始まる。
ノートPCで再開してもスマートフォンはライブセッションを保持し、Claudeがタスク実行中でなければ終了後は数秒でオフラインと表示される。切断からは自動で再接続する。モデルとエフォートレベルは端末間で同期し、iOSでは重いセッションの起動が速くなった。
From:
Continue local sessions from any device with Remote Control – Claude Code Docs
【編集部解説】
「先月、Remote Controlが一番直してほしいものだと言われました」。Anthropicの開発者向け公式アカウントは、そう書き出しました。続いたのは、新機能を前面に出す発表というより、Remote Control全体の信頼性改善をまとめた報告です。
新しい看板を掲げるより、すでにある機能を確実に動かす。発表の重心は、そちらに置かれています。
示されたのは5つです。claude remote-control を実行しているマシンがCodeタブの最上部にデバイスカードとして並び、選んで作業ディレクトリを指定すればそのマシンでセッションが始まること。ノートPC側でセッションを再開してもスマートフォンがライブのセッションを表示し続けること。切断から自動で復帰すること。モデルとエフォートレベルが端末間で揃い、iOSで重いセッションの起動が速くなったこと。そしてスラッシュコマンドの挙動が整理されたことです。
土台そのものは、以前からありました。サーバーモードの claude remote-control は接続を待ち受けて常駐し、要求に応じてセッションを生成します。現行仕様では既定で最大32セッションを扱い、gitリポジトリなら –spawn worktree でオンデマンドのセッションごとにworktreeを分けられます。モバイルから新しいセッションを生成すること自体も、3月には動いていました。今回の発表では、マシンとディレクトリを選んで起動する導線を含め、その周辺の信頼性改善がまとめて示されました。
念のため書いておくと、スマートフォンから起動できても、コードが動く場所は変わりません。実行もファイルシステムへのアクセスも、手元のマシンに残ります。画面は窓であって、作業場ではない。2月から一貫した設計で、クラウド側で走るClaude Code on the webとは別の道具です。
残る改善は、どれも「ズレ」を潰す作業だと言えます。ラップトップでセッションを再開したらスマートフォン側がアーカイブしてしまう。Claudeがタスク実行中でないのに古いセッションが残り続ける。Wi-Fiを切り替えただけで切れる。
実行はローカルに残る一方で、接続中のトランスクリプトはAnthropic側にも保存され、端末間の同期と切断後の再接続に使われます。こうした同期や再接続の挙動は、地味ですが、遠隔操作の使い心地を大きく左右します。
提供の範囲も、この半年で静かに動いてきた
2月の公開時はMax向けのリサーチプレビューで、Proは近日提供予定、Team・Enterpriseは対象外でした。その後、対象はPro・Max・Team・Enterpriseへ広がり、現行ドキュメントからはリサーチプレビューの表記も外れています。Team・EnterpriseではOwnerが管理設定で有効にします。実験から、組織で運用する機能へ。線は少しずつ引き直されてきました。
組織で使うとなると、データの置き場所の話になります。接続中は、メッセージ、Claudeの応答、ツールの動作を含むトランスクリプトがAnthropicのサーバーにも保存されます。保存後の保持期間はData usage policyに従います。Zero Data Retentionのように、Remote Controlと両立しないコンプライアンスポリシーが適用された組織では、そもそも有効化できません。
その手前に置かれたのが、Team・Enterprise向けにベータ提供されているTrusted Devicesです。既定ではオフで、Ownerが組織全体に有効化します。有効にしたあとで始まったセッションでは、登録済みの端末であることと、18時間以内の認証の両方が必要になります。更新はFace IDやTouch ID、Windows Hello、パスキーで済みます。生体情報そのものはAnthropicに渡らず、保存されるのは公開鍵と端末名やプラットフォームといった情報です。すでに動いているセッションには遡って適用されません。アカウントを持っていることと、その端末がいま本人の手の中にあることを、分けて確かめる作りです。
同じ問いに、二つの答えが出ている
遠隔から自分のマシンを動かすという発想は、いま各社が同時に触っている領域です。Googleも8月21日付で、Antigravity 2.0のRemote Controlとheadless daemonを発表しました。デーモンはセットアップ時に一度Googleアカウントで認証すると、以後は再起動をまたいで自動でサインインします。LinuxとWindowsではOSにログインしていなくても起動し、macOSではユーザーのログイン時に起動します。
Claude CodeのRemote Controlは、いまもローカルの claude プロセスが生きていることを前提にしています。ターミナルを閉じればセッションはオフラインになり、一定の条件を満たせば同じディレクトリから約4時間は再開できます。SSH越しに動かし続けたい場合はtmuxやscreenが案内されています。今回の自動再接続は、この前提を変えないまま、日常的に起きる細かい切断——ラップトップを一瞬閉じる、Wi-Fiを切り替える——を吸収する改善です。
Claude CodeはローカルのClaude Codeプロセスを維持し、Antigravityは専用のheadless daemonをバックグラウンドで動かす。どちらが優れているという話ではなく、「手元の環境をどこまで手元に置いたままにするか」という一つの問いに、二つの答えが出ていると読むほうが正確でしょう。
日本の読者にとっての実利は、思ったより手前にあるかもしれません。社内ネットワークの中にしかないデータベース、オンプレミスのMCPサーバー、ライセンスが端末に紐づいたツール。クラウドセッションへ持っていけない仕事は、まだたくさんあります。そういう環境ほど、実行は手元、操作はどこからでも、という形が効いてきます。移動時間の長い都市で働いているなら、なおさらです。
なお、デバイスカードの説明は、8月23日時点で公式ドキュメントにはまだ反映されていません。CLI・デスクトップ・モバイルアプリを最新にし、自動更新を有効にしておくよう案内されているので、手元で見え方が違うときはまずそこを確かめるとよさそうです。改善はまだ続くとも書かれています。半年かけて広げてきた機能を、半年目で改めて磨き直す。次に何を足すかより、いまある機能をどう確実に動かすかを見せた発表でした。
【関連記事】
Claude Codeがスマホ対応—Remote Controlでどこからでもローカルセッションを操作可能に
2026年2月の公開時を伝えた記事。今回の記事が起点にした「半年前」のRemote Controlの姿は、ここで読める。
Antigravity、遠隔操作を常駐化|ログイン不要のデーモン
Googleの同時期の動きを伝えた記事。タイトルの「ログイン不要」は初回のGoogle認証が必要という公式仕様を踏まえ、訂正を予定している。
Claude Code「/design」始動|デザインが手元の能力に
8月19日のClaude Code関連の更新を伝えた記事。今回の発表と同じ週に起きた動きとして、並べて読める一本である。
【編集部後記】
GitHubのIssueを遡ると、7月18日の投稿に「phone’s device card」という語が出てきます。スマートフォンの画面にカードが並ぶ景色は、少なくともそのころには存在していたことになります。
発表日と、機能が実際に使われ始めた日は、必ずしも同じではないようです。その二つの間には、ときどき数か月の距離があります。今日あなたが「新機能」として読んだものは、いつからそこにあったものでしょうか。
【用語解説】
Remote Control
手元のマシンで動いているClaude Codeのセッションを、claude.ai/codeやiOS・AndroidのClaudeアプリから操作する機能。コードの実行とファイルシステムへのアクセスは手元に残り、Web・モバイル側はその窓として働く。
サーバーモード
claude remote-control の起動方式のひとつ。接続を待ち受ける常駐プロセスとして動き、要求に応じてセッションを生成する。既定で最大32セッションを扱う。
デバイスカード
Claudeアプリの「Code」タブ最上部に並ぶ、claude remote-control を実行中のマシンの一覧。選んで作業ディレクトリを指定すると、そのマシンでセッションが始まる。
エフォートレベル
Claudeが1回の応答にかける思考量の設定。段階で指定し、Remote Controlでは端末間で揃うようになった。
worktree
ひとつのGitリポジトリから複数の作業ディレクトリを切り出す仕組み。–spawn worktree を渡すと、オンデマンドで生成されるセッションごとに別のworktreeが割り当てられる。
トランスクリプト
セッションの記録。メッセージ、Claudeの応答、ツールの動作を含む。Remote Controlの接続中はAnthropicのサーバーにも保存され、端末間の同期と切断後の再接続に使われる。
Trusted Devices
Team・Enterprise向けにベータ提供されている組織単位の設定。有効にすると、claude.aiやClaudeモバイルアプリ、Claude DesktopからRemote Controlのセッションを閲覧・操作する際に、登録済みの端末と18時間以内の認証が必要になる。
Zero Data Retention(ZDR)
Claude for Enterpriseの対象組織に個別に適用されるデータ保持設定。対象となるモデル推論のプロンプトと応答を、原則として応答後にAnthropicが保持しない。Remote Controlはサーバー側へのトランスクリプト保存を必要とするため、ZDR適用組織では利用できない。
headless daemon
画面を持たず背景で動き続ける常駐プログラム。Google Antigravityが今回提供したもので、LinuxとWindowsではOSにログインしていなくても起動する。
tmux/screen
ターミナル上に仮想的な画面を保持するツール。SSH接続が切れても、その中で動かしていたプロセスは終了しない。
【参考リンク】
Claude Code on mobile(Claude Code Docs)(外部)
Claudeアプリの「Code」タブから、クラウドセッションとRemote Controlのどちらに接続するかを整理した公式ページ。
Data usage(Claude Code Docs)(外部)
Claude Codeを通じて流れるデータの扱いを説明する公式ページ。保存されたトランスクリプトの保持期間もこの方針に従う。
Remote Control(Google Antigravity Docs)(外部)
Antigravity 2.0の遠隔操作とheadless daemonの公式資料。一度きりのサインインとOS別の起動条件が示されている。
Antigravity Anywhere with Remote Control(Google Antigravity Blog)(外部)
2026年8月21日付のGoogle公式発表。Antigravityの遠隔操作とheadless daemonを告知した、本文の対比の出典。
anthropics/claude-code Releases(GitHub)(外部)
Claude Codeの公式リポジトリにあるリリースノート。バージョンごとの変更点と修正内容を、一覧で確認できるページ。
【参考記事】
Allow terminal attachment to phone-spawned Remote Control sessions(GitHub Issue #40310)(外部)
2026年3月28日の機能要望。スマートフォンやWebから生成されたセッションが、ローカルの端末から再開できないという内容。
Claude Code Remote Control(Simon Willison’s Weblog)(外部)
公開直後に実際に触った記録。同時に動かせるセッションが1つだったことなど、公開当時の制約を具体的に挙げている一本である。
Anthropic reveals Remote Control, a mobile version of Claude Code to keep you productive on the move(TechRadar)(外部)
2026年2月25日の報道。ローカル実行とクラウド版の違いや初期の制約を整理する。当時は公式発表とドキュメントでProの表記に差があった。
Claude Code on Your Phone(Builder.io Blog)(外部)
2026年3月2日の記事。当時は開始済みのセッションを引き継ぐだけだったと整理し、開発者側から出ていた要望についても記録している。


















