Last Updated on 2024-04-24 12:11 by TaTsu
朝Photoshopを起動すると
朝、久しぶりにPhotoshopを起動したところ、「Photoshopベータ版を試してみませんか?」のような、案内が表示されました。これが、今回の記事を書くきっかけとなりました。
ちなみに当記事のアイキャッチ画像と本文内の画像のうち1枚はFirefly Image 3で作成しています。(編集者:TaTsu)

Firefly Image 3の飛躍的な進化
アドビは4月23日、クリエイティビティカンファレンス「Adobe MAX London 2024」で、最新の生成AIモデル「Adobe Firefly Image 3 Foundation」をPhotoshopのベータ版に搭載したことを発表しました。この新しいFirefly Image 3は、前バージョンから大幅な性能向上が図られているとのことです。
・フォトリアリスティックな画像生成能力の向上
具体的には、フォトリアリスティックな画像生成能力が飛躍的に向上しました。構図、写実的な細部、光と影のリアリティーが大きく改善されただけでなく、人物の表情や手足のディテールも自然に再現されるようになりました。
・スタイル転移機能の強化
スタイル転移機能が強化されて、高品質で多様な画像出力が可能になりました。新しいスタイルエンジンにより、より高品質でバラエティに富んだ画像を生成できるようになったのです。
・長文プロンプトへの対応改善
長文のプロンプトにも正確に対応できるようになり、テキストレンダリングも改善されています。複雑なシーンや細かいディテールを含む画像生成が可能になりました。
・生成画像へのコンテンツ認証情報付与
生成画像にはコンテンツ認証情報が自動付与されるようになり、AIによる生成がわかるようになりました。
・新機能「Generative Expand」の追加
さらに新機能の「Generative Expand」で、画像の拡張や縦横比の変更もできるようになりました。参照画像に合わせてシームレスに拡張できるようになったのです。
Photoshopベータ版の新機能
Photoshopベータ版には、この強化されたFirefly Image 3が搭載され、以下のような生成AIを活用した新機能が数多く追加されています。
・Adobe Firefly Image 3モデルの搭載
Firefly Image 3モデル自体がPhotoshopベータ版に搭載されました。
・ゼロから画像を生成
「画像を生成」機能でゼロから文章に基づいた画像を生成できるようになりました。
・アップロードした画像を参照
「参照画像」機能でアップロードした画像を参照しながら新規画像を生成できます。
・調整ブラシ
「調整ブラシ」で画像内の特定領域を非破壊的に調整できるようになりました。
・類似画像を生成
「類似を生成」機能で参照画像に似た新規画像を生成できます。
・背景を生成
「背景を生成」機能で背景を入れ替えられるようになりました。
・ディテールを強化
「ディテールを向上」機能で生成画像の鮮明度を強化できます。
これらの新機能により、クリエイターの表現の幅が大きく広がることが期待されているということです。

商用利用は?
Firefly Image 3でも生成した画像の商用利用は全バージョンに引き続き可能です。アドビは2023年9月13日より、Adobe Fireflyで生成した画像の商用利用を許可しています。今回のFirefly Image 3についても、同様に商用利用が認められています。つまり、以前のFireflyバージョンから商用利用が認められており、Firefly Image 3でもその方針が継続されているということになります。ただし、実際の利用に当たっては最新の利用規約など公式情報を再確認することが賢明でしょう。
Adobe Fireflyの特長と課題
著作権リスクが最小限
Fireflyには他社の生成AIツールと一線を画す特長がいくつかあります。最大の強みは、著作権リスクが最小限に抑えられている点です。Fireflyは、Adobe Stockの画像やオープンライセンス画像、著作権期限切れのコンテンツをAIに学習させています。そのため、出力された画像が既存の作品に酷似するリスクが低くなっています。
Adobe製品との緊密な連携
Adobe製品との緊密な連携も大きな強みとなっています。Fireflyは、Photoshop、Illustrator、Adobe Expressなどのアドビ製品に深く統合されており、これらのツールとのシームレスな連携が可能です。
分かりやすいUI設計
Fireflyのユーザーインターフェースは、画像生成AIに慣れていないユーザーでも使いやすいよう設計されています。直感的な操作性が評価されています。
企業向けソリューション
Fireflyは企業のコンプライアンス要件を満たすよう設計されており、大企業が生成AIを利用する際の決定版になると期待されています。
一方での機能の限界と価格面の課題
一方で、機能が画像生成などに限定されていたり、Adobe製品のサブスクリプションが必要になるなどのデメリットも指摘されています。Adobe Creative Cloudのサブスクリプション料金は比較的高額なため、価格面での選択肢は限られます。
倫理的AIの実現に向けた取り組み
アドビは生成AIの発展に伴い、倫理的側面での透明性を重視しています。コンテンツ認証イニシアチブ(CAI)を通じて、AIモデルの透明性確保に取り組んでおり、生成画像にはコンテンツ認証情報が自動付与されるようになり、AIによる生成がわかるようになりました。また、クリエイターの権利を守り、適切な利益が得られる仕組み作りを目指しています。倫理的で透明性の高いAI開発を重視しながら、製品群へのAI統合を進めていく方針です。
AIとクリエイターの共存関係
当初の懸念から共存へ
当初はAIがクリエイターの仕事を奪う脅威と受け止められがちでした。しかし、実際にはAIはクリエイターを支援するツールとして機能し、AIとクリエイターの距離が縮まり、共存関係を築くことができました。
AIによる創作サポート
最新のFirefly Image 3では、フォトリアリスティックな画像生成能力が飛躍的に向上し、Photoshopなどのアプリに深く統合されています。AIはクリエイターの創作をサポートし、新しい表現の可能性を切り拓くツールとなっています。
ワークフロー改善とUI改良
さらに、UIの改良やAdobe製品との緊密な連携により、AIの操作性が向上し、クリエイティブワークフローが大幅に改善されました。AIは一般ユーザーにとっても分かりやすく、生成AIの導入が後押しされています。

クリエイターとの共存共栄を目指す
このように、アドビのAIはクリエイターとの共存共栄を目指しており、倫理的で透明性の高いAI開発を重視しながら、製品群へのAI統合を進めています。AIはクリエイターにとって脅威ではなく、創作を支援する強力なツールとして機能するようになってきました。
生成AIの発展が、クリエイティブ制作の現場にどのような変革をもたらすのか。今後の展開から目が離せません。
【用語解説】
- Adobe Firefly Image 3 Foundation
これはアドビが開発した最新の生成AIモデルで、Photoshopベータ版に搭載されたことで話題になりました。 - コンテンツ認証イニシアチブ(CAI)
生成AIで作成されたコンテンツにAIによる生成であることを示す認証情報を付与する取り組みです。
【参考サイト】
アドビオフィシャルサイト(外部)
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