innovaTopia

ーTech for Human Evolutionー

OpenAI×Hyperlambda:AIにマイナーなプログラミング言語を教える壮大な挑戦 – 8万行のコードと1,500ドルで実現したファインチューニングの全貌

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-04-08 16:10 by admin

AIはマイナーなプログラミング言語をどこまで理解できるのか” – この素朴な疑問が、OpenAIの新言語モデルの微調整技術に私の目を向けさせた。
プログラマーなら誰しも経験するマイナー言語や専門用語での苦労。それをAIが理解できるようになれば…?
マイナーな技術用語でもAIと的確にコミュニケーションできる未来は、すぐそこまで来ているのかもしれない。

この記事はAIモデルに新しいプログラミング言語を教える挑戦についてのものです。DZoneに掲載された記事では、ある開発者がOpenAIのモデルに「Hyperlambda」というマイナーなプログラミング言語を理解させるためのファインチューニングプロセスを詳細に解説しています。

この取り組みは、AINIRO.IOの創設者であるThomas Hansen氏によるものと思われます。Hansen氏は2025年4月5日にAINIRO.IOのブログで、GPT-40-miniモデルをHyperlambdaに対応させるためのファインチューニングに成功したことを発表しています。

OpenAI×Hyperlambdaファインチューニングの記事概要

  • 開発者がOpenAIのAIモデルに「Hyperlambda」という比較的マイナーなプログラミング言語を教えるためにファインチューニングを実施。
  • 3,500の訓練スニペットと約550の検証スニペット(合計約8万行のコード)を作成。
  • GPT-4o-mini(記事中ではGPT-40-miniと表記)を使用し、デフォルトの学習率乗数1.8が最良の結果。
  • ファインチューニング後のモデルは単純なHyperlambdaコードで約80〜90%の精度を達成。
  • コスト:GPT-4o-miniは1回のランにつき2〜5ドル、GPT-4oは50〜100ドル、合計約1,500ドルを投資。
  • 新言語の習得レベル目安:3,500スニペットで「許容できる」、5,000スニペットで「良い」、10,000スニペットでPythonやJavaScriptと同等。
  • 技術の民主化:専門知識の壁を下げ、より多くの人々がテクノロジーを活用できる可能性を示した事例。

from: How I Taught OpenAI a New Programming Language With Fine-Tuning

【編集部解説】

ファインチューニングは一見シンプルに思えますが、実際には膨大な労力を要する作業です。記事の著者は3,500の訓練スニペットと550の検証スニペットを作成し、合計約8万行のコードを書きました。これは単純計算で、一般的な中規模のソフトウェアプロジェクト全体に相当する量です。

特筆すべきは、これらのコードが「LLMに新言語を教える」という目的以外に全く使い道がないという点です。開発者は1日3〜6時間、週7日、1ヶ月間にわたってコードを書き続けたと述べています。これはAI開発の裏側にある地道な作業の一端を示しています。

記事から得られた重要な知見として、ハイパーパラメータの設定があります。ChatGPTやClaudeが推奨する学習率乗数0.1〜0.2は新しいプログラミング言語の学習には不十分で、デフォルト値の1.8が最良の結果をもたらしたとのことです。

また、トレーニングデータの作成においては、既存のシステムフォルダから約1,000の高品質スニペットを取得し、残りの2,500スニペットを新たに実装するという効率化も図られました。さらに、カスタムGPTを使って単一のファイルから複数のバリエーションを生成する工夫も行われています。

ファインチューニングのコスト面も見逃せません。GPT-4o-mini(記事中ではGPT-40-miniと表記)の場合、1回のトレーニングランにつき2〜5ドルかかります。一方、GPT-4o(記事中ではGPT-40と表記)は50〜100ドルと大幅に高額になります。開発者は合計約1,500ドルを費やしてこのプロジェクトを完了させました。

OpenAIは最近、ファインチューニング機能をすべての有料ユーザーに提供し始めています。これにより、少数の例からでも強力な結果を得られるようになったと主張しています。

記事の著者によれば、新しいプログラミング言語をAIに教える際の目安として、3,500スニペットで「許容できる」レベル、5,000スニペットで「良い」レベル、10,000スニペットでPythonやJavaScriptと同等のレベルになるとされています。

これは、AIモデルの学習曲線を理解する上で重要な指標です。現在のHyperlambdaジェネレーターは、まだ「許容できる」レベルにあり、日々スニペットを追加してモデルを改善している段階です。

このファインチューニング技術の応用範囲は広大です。特に、マイナーなプログラミング言語や専門分野の知識をAIに教えることで、より多様な開発環境やドメイン固有の問題解決が可能になります。

この事例が示す最も重要な点は、技術の民主化です。記事の著者は「昨日まではHyperlambdaバックエンドコードを作成できる人は地球上で私一人だけでした。今日では多くの人が自分で『管理』でき、単純な英語をHyperlambdaジェネレーターに入力するだけで、バックエンドとAPIの問題を解決する(ほぼ正確な)Hyperlambdaコードを出力できます」と述べています。

これは、専門知識の壁を下げ、より多くの人々がテクノロジーを活用できるようにする重要な一歩です。同時に、このような技術の進化は、プログラミング言語やフレームワークの多様性を促進し、特定の大手企業や主流言語への依存を減らす可能性を秘めています。

ファインチューニングは確かに労力を要しますが、その成果は技術の民主化と多様化という形で私たち全員に還元されるでしょう。今後も、このような取り組みがAI技術の応用範囲をさらに広げていくことを期待しています。

【用語解説】

Hyperlambda
C#をより動的にするために開発された特殊なプログラミング言語。実行ツリーを宣言する形式で、通常のプログラミング言語とは異なるアプローチを取る。従来のプログラミング言語の制約を取り除き、再利用可能なコンポーネントの作成を容易にする。

ファインチューニング
既存の学習済みAIモデルを特定のタスクやデータセットに合わせて調整するプロセス。ゼロから学習させるよりも少ないリソースで高い成果を得られる手法。

LLM(Large Language Model)
GPT-4などの大規模言語モデル。膨大なテキストデータから学習し、人間のような文章生成や理解を行うAIモデル。

GPT-4o-mini
OpenAIの高速で低コストなAIモデル。記事中ではGPT-40-miniと表記されているが、正式名称はGPT-4o-miniである。

JSONL
JSON Lines形式。各行が独立したJSON形式のデータを表す形式で、ファインチューニングのトレーニングデータとして使用される。

RAG(Retrieval-Augmented Generation)
検索拡張生成。外部知識ベースから関連情報を検索し、AIの回答生成に活用する手法。ファインチューニングの代替手段として多くの場合に有効。

【編集部追記】

今回この元記事を読んでとても興味を惹かれ、それはなぜかというと、一人が何時間、何か月もかけていること、マイナー言語をAIが覚えた場合のこと、なにもかもが興味の対象でした。
” マイナーなプログラミング言語や専門分野の知識をAIに教えることで、より多様な開発環境やドメイン固有の問題解決が可能になります。”
こう発言している通り、これからの個人開発/仕事のスピードがアップしたり、そもそもマイナーな言語はネット上に情報が転がっていることが少ないので、
そこをAIが対応できるようになるのは開発者としても助かりますし、本当に凄いことです。
” 合計約8万行のコードを書きました。” ← いい意味で狂気を感じました……。

【参考リンク】

AINIRO.IO(外部)
Thomas Hansen氏が創設したAI開発企業。Hyperlambdaを活用したAIエージェント作成プラットフォームを提供している。

OpenAI(外部)
ChatGPTやGPT-4oなどのAIモデルを開発する企業。ファインチューニング機能も提供している。

Magic Cloud(外部)
AINIRO.IOが提供するNo-Code/Low-Codeソフトウェア開発自動化プラットフォーム。

DZone(外部)
ソフトウェア開発者向けの技術情報共有プラットフォーム。記事の元の掲載先。

【関連記事】

AI(人工知能)ニュースをinnovaTopiaでもっと読む

author avatar
アリス
プログラミングが好きなオタク
ホーム » AI(人工知能) » AI(人工知能)ニュース » OpenAI×Hyperlambda:AIにマイナーなプログラミング言語を教える壮大な挑戦 – 8万行のコードと1,500ドルで実現したファインチューニングの全貌