NVIDIA GeForce NOWが過去最大のアップデートを実施し、RTX 5080クラスの性能をクラウドストリーミングで提供すると発表した。新機能により5Kで120 FPS、1080pで360 FPSのゲーミングが可能になり、NVIDIA DLSS 4 Multi-Frame Generation(マルチフレーム生成)とNVIDIA Reflexに対応する。
新たに追加されたCinematic Quality Streaming(シネマティック品質ストリーミング)モードは画質と色精度を向上させ、最大100 Mbpsのストリーミングをサポートする。Install-to-Play(インストール・トゥ・プレイ)機能により対応ゲーム数が4,500本に倍増し、ゲームをクラウドストレージに直接ダウンロードして即座に起動できる。
RTX 5080クラスのGPUは56.3テラフロップの計算性能と16GBのフレームバッファを提供する。これらの機能を利用するにはGeForce NOW Ultimateメンバーシップ(月額19.99ドル)が必要で、9月からロールアウト開始予定である。
From: GeForce NOW just went RTX 5080 — and cloud gaming will never be the same
【編集部解説】
今回のアップデートは、NVIDIAの最新Blackwell architecture(ブラックウェル・アーキテクチャ)をクラウドに導入する重要な技術的転換点です。従来のコンシューマーGPU をデータセンター向けGPU で置き換える手法により、膨大なVRAM(48GB)と計算能力(62テラフロップ)を実現しています。
DLSS 4 Multi Frame Generation(マルチフレーム生成)の技術的革新は特筆すべき点です。従来のDLSS フレーム生成が2フレーム間に1フレームを挿入するのに対し、新技術では最大3フレームまで生成可能で、理論上8倍のフレームレート向上を実現します。このAIモデルは40%高速化され、VRAM使用量も30%削減されています。
クラウドゲーミング業界に与える影響は深刻です。Xbox Cloud GamingやAmazon Luna等の競合サービスに対し、NVIDIAは圧倒的な性能優位性を確立しました。Install-to-Play機能により、Steam対応の2,200以上の追加タイトルが即座に利用可能となり、パブリッシャーの事前承認プロセスが不要になります。
潜在的なリスクとして、高度なインターネット接続要件があります。100 Mbpsの帯域幅と30ms以下の遅延が求められるため、地域格差や通信インフラの制約が利用者を限定する可能性があります。
長期的には、ハードウェア所有からサービス利用への転換が加速するでしょう。月額19.99ドルで最新GPU相当の性能にアクセスできることは、数千ドルのゲーミングPC購入に対する代替選択肢として機能します。この変化は、ゲーム業界のビジネスモデルとハードウェアメーカーの収益構造に根本的な影響を与える可能性があります。
【用語解説】
GeForce NOW:NVIDIAが提供するクラウドゲーミングサービス。ユーザーの端末で高性能なゲーミングPC相当の処理を遠隔実行する
Blackwell architecture(ブラックウェル・アーキテクチャ):NVIDIAの最新GPU設計技術。前世代比5倍のAI処理性能とFP4演算対応により生成AI処理を大幅に高速化
DLSS 4 Multi Frame Generation(マルチフレーム生成):従来の1フレーム補間から最大3フレーム生成に進化したAI技術。理論上最大8倍のフレームレート向上を実現
Install-to-Play:Steam対応ゲームを直接クラウドストレージにダウンロードして保存する新機能。セッション毎の再ダウンロードが不要になりゲーム起動が高速化される
Cinematic Quality Streaming:YUV 4:4:4クロマサンプリングと10-bit HDR対応により色精度とコントラストを向上させる高画質配信技術
NVIDIA Reflex:CPUとGPUの同期によりゲーミング時の入力遅延を削減するレイテンシー最適化技術
RTX 5080クラス:データセンター向けGPUでコンシューマー向けRTX 5080相当の性能を再現する仕組み。62テラフロップの計算性能と48GBメモリを提供
【参考リンク】
NVIDIA GeForce NOW公式サイト(外部)NVIDIAの公式クラウドゲーミングサービス。対応プラットフォーム、料金プラン、システム要件等の詳細情報を提供
NVIDIA GeForce NOW Powered by au(外部)日本国内向けGeForce NOWサービス。auが運営するローカライズされたクラウドゲーミング プラットフォーム
NVIDIA Blackwell アーキテクチャ解説ページ(外部)Blackwell アーキテクチャの技術仕様とAI処理性能の詳細説明。データセンター向け製品情報を包括的に掲載
DLSS 4技術詳細ページ(外部)DLSS 4 Multi Frame Generationの仕組みとTransformer AI モデルの技術革新について詳しく解説
【参考動画】
【参考記事】
NVIDIA Blackwell Architecture Comes to GeForce NOW(外部)NVIDIA公式プレスリリース。今回のアップデートの全貌とBlackwell アーキテクチャのGeForce NOW導入について包括的に発表
Nvidia’s GeForce Now is upgrading to RTX 5080 GPUs and opening up to more games(外部)The Vergeによる技術解説記事。RTX 5080クラスGPUの性能とInstall-to-Play機能によるゲームライブラリ拡張について詳細に報告
Nvidia’s GeForce Now gets an RTX 5080 upgrade(外部)Tom’s Hardwareによる技術分析記事。Blackwell アーキテクチャの利点とクラウドゲーミング業界への影響について専門的視点から解説
Game Streaming Will Never Be the Same After Nvidia’s GeForce Now Update(外部)Gizmodoによる業界影響分析記事。今回のアップデートがクラウドゲーミング市場に与える長期的影響について考察
NVIDIA GeForce NOW Cloud Gaming Adds RTX 5080 GPU Support(外部)Geek Cultureによる機能詳細記事。新機能のCinematic Quality StreamingとAI強化技術について技術的側面から分析
【編集部後記】
今回のGeForce NOWアップデートで、月額19.99ドルでRTX 5080相当の性能が手に入る時代が到来しました。ハードウェア所有からサービス利用への転換は、ゲーム業界だけでなくPC業界全体のビジネスモデルを根本的に変える可能性があります。一方で、100 Mbpsの安定した回線が必要という条件は、地域格差や通信インフラの課題を浮き彫りにします。皆さんは数十万円のゲーミングPCを購入するか、月額制クラウドサービスを選ぶか、どちらが合理的だと思いますか?また、ゲーム体験における物理的所有の意味は今後どう変化していくでしょうか?