Microsoftは2025年8月19日、8月のWindowsセキュリティアップデートがWindows 10および古いバージョンのWindows 11でリセットおよび復旧操作を破損させることを確認した。
影響を受けるのはWindows 11 23H2とWindows 11 22H2のKB5063875、Windows 10 22H2とWindows 10 Enterprise LTSC 2021、Windows 10 IoT Enterprise LTSC 2021のKB5063709、Windows 10 Enterprise LTSC 2019とWindows 10 IoT Enterprise LTSC 2019のKB5063877をインストールしたシステムである。
問題により「PCをリセット」機能やWindows Updateを使用した問題修正ツール、RemoteWipe構成サービスプロバイダーを使用したリモートリセットが失敗する可能性がある。
同社は今後数日間で影響を受けるすべてのプラットフォーム向けに帯域外アップデートを通じて修正を提供すると発表した。
From: Microsoft: August security updates break Windows recovery, reset
【編集部解説】
今回のMicrosoftによる8月のセキュリティアップデートの問題は、セキュリティ強化とシステム安定性の両立という現代的な課題を象徴的に示しています。特に注目すべきは、Microsoftが迅速に緊急修正パッチをリリースしたことで、同社が問題の深刻さを認識していることが伺えます。
この問題の技術的な側面を詳しく見ると、影響を受けるのは「PCをリセット」機能や「Windows Updateを使用して問題を修正」ツールといった、Windows の核心的な復旧システムです。Windows Latestによる実際のテストでは、Windows 11 23H2においてリセットプロセスが開始されても即座にロールバックし、復旧機能そのものが使用不能になることが確認されています。
企業環境への影響は特に深刻で、RemoteWipe構成サービスプロバイダーを使用したリモート端末管理も機能しなくなります。これは、テレワークが一般化した現在のIT環境において、システム管理者にとって重大なリスクとなっています。
興味深いのは、最新のWindows 11 24H2は影響を受けていない点です。これは、Microsoftが新しいバージョンでは異なるアーキテクチャやコードベースを採用していることを示唆しており、同社の開発戦略の変化を反映しているかもしれません。
長期的な視点で見ると、この問題はMicrosoftの品質管理プロセスに疑問を投げかけています。The Registerが指摘するように、セキュリティパッチによって重要な機能が破損するという事態は、テスト工程の不備を示している可能性があります。
今回の事案は、セキュリティアップデートを適用するリスクと、脆弱性を放置するリスクという、IT管理者が直面する根本的なジレンマを浮き彫りにしています。この教訓は、企業のパッチ管理戦略の再考を促すきっかけとなるでしょう。
【用語解説】
PCをリセット
Windowsに組み込まれた復旧機能で、個人ファイルを保持したままWindows OSを初期状態に復元する機能である。システムに問題が発生した際の一般的な修復手段として用いられている。
RemoteWipe構成サービスプロバイダー(RemoteWipe CSP)
企業の管理サーバーがネットワーク経由でWindowsデバイスをリモートでリセット・初期化するためのMicrosoft提供のサービスである。紛失・盗難されたデバイスのデータ保護や企業の端末管理に用いられる。
Known Issue Rollback(KIR)
Microsoftが開発した技術で、Windows更新プログラムの特定の修正項目のみを無効化し、問題のないコードに自動的に戻す仕組みである。セキュリティ以外の不具合修正に対して適用され、更新プログラム全体をアンインストールすることなく問題を解決できる。
帯域外アップデート(Out-of-band Update)
通常の月次更新スケジュール外に緊急でリリースされるWindows更新プログラムである。重要な問題やセキュリティ脆弱性が発見された際に配信される。
Windows Server Update Services(WSUS)
企業が社内のWindowsシステムの更新プログラムを集中管理するためのMicrosoft提供のサーバーソフトウェアである。
【参考リンク】
Microsoft Windows(外部)
Microsoftが開発・販売するPC向けオペレーティングシステムWindows 11の公式サイト
BleepingComputer(外部)
サイバーセキュリティとコンピュータニュースを専門とする技術メディア
Microsoft Learn – RemoteWipe CSP(外部)
RemoteWipe構成サービスプロバイダーの技術仕様と実装方法についての公式ドキュメント
【参考記事】
Microsoft’s August 2025 security updates are breaking recovery tools(外部)
Tom’s Hardwareによる技術分析記事。Windows 11 23H2での実際のテスト結果を含む
Microsoft cleans up latest Windows Update mess(外部)
The Registerが品質管理プロセスの問題点を指摘した分析記事
Microsoft August 2025 Update Breaks Windows Reset and Recovery Tools(外部)
Guru3Dによる包括的な分析記事。企業環境への影響について詳述
Microsoft releases emergency updates to fix Windows recovery(外部)
Microsoftが緊急修正パッチをリリースしたことを報じる記事
Known Issue Rollback: Helping you keep Windows devices protected(外部)
Microsoft公式によるKnown Issue Rollback技術の詳細解説
【編集部後記】
一昨日、私たちinnovaTopiaでは「Windows 11セキュリティアップデートがSSDを『破壊』」という記事をお届けしたばかりですが、今度はリセット・復旧機能の破損という新たな問題が発覚しました。わずか2日の間に、Microsoftの8月セキュリティアップデートが引き起こした2つの深刻な問題を連続してお伝えすることになり、改めてソフトウェアアップデートの複雑さと予期せぬリスクを実感しています。
SSDの物理的破損とシステムリセット機能の停止-異なる性質の問題でありながら、どちらも企業や個人ユーザーにとって深刻な影響をもたらします。特に今回の復旧機能の問題は、まさにトラブル時の「最後の砦」が使えなくなるという皮肉な状況です。皆さんの環境では、このような不測の事態への備えはいかがでしょうか?定期的なバックアップはもちろんですが、システムの復旧手段を複数確保しておくことの重要性を、今回の件で改めて感じました。テクノロジーの進歩と信頼性のバランスについて、皆さんのご意見やご経験をお聞かせいただければと思います。