連邦航空局(FAA)が8月7日に「目視外での無人航空機システム運用の正常化」と題する規則制定案通知(NPRM)を発表した。
ニュースメディア・アライアンス(NMA)がこの提案が報道機関に与える影響について分析を公表した。NPRMは報道業務を具体的に扱っていないが、報道収集を「空中測量」カテゴリーに分類している。
の分類にはビデオ撮影や写真撮影も含まれる。FAA再承認法2024がこの提案規則の策定を指示した。提案規則は無人航空機システム(UAS)を国家航空システム(NAS)に統合し、目視外(BVLOS)での低高度運用を可能にすることを目的とする。
対象となる運用にはパッケージ配送、農業、空中測量、市民利益、運用訓練、実証、娯楽、飛行試験が含まれる。
NPRMへのパブリックコメントは10月6日が締切である。NMAは米国内の2,200以上の出版社に支持されている。
From: FAA Considers New Rules for How Newsrooms Use Drones
【編集部解説】
今回のFAAによる新規制案は、ドローンを使った報道活動に大きな変革をもたらす可能性があります。従来のPart 107規則では目視範囲内でのみドローン運用が可能でしたが、新しい「Part 108」規則では目視外飛行(BVLOS)が認められる道筋が示されています。
特に注目すべきは、報道活動が独立したカテゴリーとして扱われず、「空中測量」という一般的な分類に含まれている点です。これは報道の特殊性が十分考慮されていない可能性を示唆しています。
新規制では、報道機関は24ヶ月有効の「運用許可」または期限のない「運用証明書」のいずれかを取得する必要があります。許可は監視が少ない代わりに短期間で、証明書は無期限ですがFAAによる頻繁な監視が伴います。
技術的な制約も重要なポイントです。報道機関は最大25機のドローンで構成されるフリートでの運用が可能ですが、機体重量は110ポンドまでに制限されます。なお、一般的なBVLOS運用では最大1,320ポンドまで許可される中で、報道機関への制約は特に厳しいものとなっています。運用エリアは「カテゴリー3」の人口密度地域に限定され、大都市圏や商業地域では使用できません。
この規制は報道の即座性という本質的な特徴と矛盾する可能性があります。緊急時の取材において、事前許可や人口密度制限は大きな制約となります。一方で、災害報道や山火事取材など、従来は有人航空機でしかアクセスできなかった危険地域での安全な取材が可能になる利点もあります。
パブリックコメント期間が10月6日まで設定されており、2,200以上の出版社を代表するニュースメディア・アライアンスが積極的に意見提出を呼びかけています。この動きは、報道業界が規制策定プロセスに積極的に関与し、報道の自由と公共の利益のバランスを取ろうとする姿勢を示しています。
【用語解説】
BVLOS(Beyond Visual Line of Sight)
目視外飛行。操縦者が直接視認できない距離でのドローン運用を指す。従来は個別の許可が必要だったが、新規制により標準化される。
NPRM(Notice of Proposed Rulemaking)
規則制定案通知。米国政府機関が新しい規制を制定する前に公表する提案書で、パブリックコメントを受け付ける。
Part 107
FAAが2016年に制定した小型ドローンの商業利用に関する規制。重量55ポンド以下、目視範囲内での運用が条件。
Part 108
今回新たに提案された目視外飛行用の規制枠組み。Part 107と並行して運用される予定で、最大1,320ポンドまでの機体を対象とする。
Category 3人口密度地域
FAA分類における人口密度区分の一つ。中程度の人口密度エリアで、一戸建て住宅地など。大都市圏や商業施設は除外される。
UAS(Unmanned Aircraft Systems)
無人航空機システム。ドローン本体だけでなく、地上制御装置や通信システムを含む総称。
UTM(UAS Traffic Management)
無人航空機交通管理システム。複数のドローンが安全に運用されるための交通制御システム。
ADSP(Automated Data Service Provider)
自動データサービス提供者。ドローン間の安全な分離を確保するためのサービス事業者。
【参考リンク】
News Media Alliance(外部)
米国の2,200以上の出版社を代表する業界団体。今回のFAA規制案について詳細な分析を発表
Federal Aviation Administration (FAA)(外部)
米国連邦航空局。航空安全規制の策定・執行を担当する政府機関。今回のBVLOS規制案を発表
Federal Register(外部)
米国政府の公式文書公開サイト。規制案や最終規則が掲載され、パブリックコメントの受付も行う
【参考記事】
FAA Releases Drone Rulemaking | News/Media Alliance(外部)
報道機関への具体的な制約内容を詳細分析。24ヶ月有効の運用許可、25機までのフリート運用等を明記
U.S. Transportation Secretary Sean P. Duffy Unveils Proposed Rule(外部)
FAA公式発表。BVLOS運用の標準化により最大1,320ポンドのドローンまで400フィート以下で運用可能と発表
Drone Beyond Line of Sight Proposed Rule: Top 10 Things You Need to Know(外部)
法律事務所による規制案の包括的分析。重量1,320ポンドまでの機体、400フィート以下の高度制限等を整理
【編集部後記】
この規制案は、日本の報道業界にも影響を与える可能性があります。国土交通省も米国の動向を注視しており、類似の制度導入が検討されるかもしれません。みなさんは、報道の自由と安全性のバランスをどうお考えでしょうか。
また、災害報道や緊急時の取材において、ドローンの目視外飛行がもたらす可能性と制約について、どのような意見をお持ちですか。テクノロジーが報道のあり方を変える今、読者のみなさんと一緒にこの変化の意味を考えていきたいと思います。