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AIセラピストは人間の代替となるか?共感・倫理・未来を問う

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-12 16:29 by さつき

2025年5月11日(現地時間、日本時間5月11日)、英国の心理学者でBritish Psychological Society会長のロマン・ラチカ博士は、AIを活用したセラピーチャットボットが人間のセラピストの代替にはならないと指摘した。

AIセラピストは24時間匿名で利用でき、相談のハードルを下げる利点がある一方で、真の共感や深い対話を再現することは難しく、利用者に「つながりの錯覚」を与えるリスクがあると述べている。

また、データプライバシーやAIへの過度な依存、AIが人間の専門家の代わりとして誤用される懸念も示された。英国の国民医療制度(NHS)ではメンタルヘルス支援の待機リストが過去最長となっており、AIの活用が期待される場面も増加しているが、AIはあくまで補助的な役割にとどめるべきであり、人間中心のケアが不可欠であると強調された。専門家団体でもAIセラピストのガイドライン策定が検討されている。

References:
文献リンクAI therapists can’t replace the human touch | The Guardian
文献リンクThis Therapist Helped Clients Feel Better. It Was A.I. | The New York Times
文献リンクCan AI chatbots make good therapists? | BBC News
文献リンクThe (artificial intelligence) therapist can see you now | WFAE

【編集部解説】

AIセラピストは、メンタルヘルス支援へのアクセスを広げる新たな手段として注目されています。特に医療リソースが不足している地域や、相談への心理的ハードルが高い層にとって、AIによる即時・匿名のサポートは大きなメリットです。英国NHSのように待機リストが長期化するなか、AIが一次相談の窓口として活用されるケースも増えています。

一方で、AIは過去のデータやアルゴリズムに基づいて応答するため、個々の文脈や感情の機微を十分に理解することは難しく、画一的なアドバイスや誤った判断がなされるリスクもあります。特に緊急性の高いケースでは、AIが適切な対応をできない可能性が指摘されています。AIとのやり取りが「疑似的なつながり」にとどまり、実際の人間関係を避ける傾向を強める懸念も無視できません。

現在、欧米の心理学団体や医療機関では、AIセラピストの倫理ガイドラインやデータ保護基準の策定が進められています。今後は、AIを「治療の代替」ではなく「支援ツール」として適切に位置づけ、人間の専門家と協働するハイブリッド型のケアモデルが主流となるでしょう。

 【用語解説】

AIセラピスト
人工知能を用いて、ユーザーのメンタルヘルスや心理的な悩みに対話形式で対応するソフトウェアやサービスの総称。自然言語処理技術を活用し、相談者の発言内容を理解し、返答や助言を行う。

【参考リンク】

British Psychological Society(外部)
英国の心理学者による公式団体で、心理学の推進や倫理基準の策定、研究支援などを行っている。

NHS(外部)
イギリス全土で運営されている国民保健サービスの公式サイト。医療機関の検索や健康情報の提供を行っている。

Therabot(外部)
ダートマス大学が開発したAIセラピスト「Therabot」の公式紹介ページ。臨床試験や研究内容が掲載されている。

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さつき
社会情勢とテクノロジーへの関心をもとに記事を書いていきます。AIとそれに関連する倫理課題について勉強中です。ギターをやっています!

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