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ビル・ゲイツとLinux開発者リーナス・トーバルズが初対面│30年の対立を超えた歴史的会談が実現

 - innovaTopia - (イノベトピア)

マイクロソフト共同創設者ビル・ゲイツとLinuxオペレーティングシステム開発者リーナス・トーバルズが2025年6月、初めて公の場で会談した。

この会談はMicrosoft Azure最高技術責任者(CTO)マーク・ルシノビッチが主催した夕食会で実現し、マイクロソフトのデビッド・カトラーも同席した。ルシノビッチはLinkedInでこの会談の写真を公開し、「ビル・ゲイツ、リーナス・トーバルズ、デビッド・カトラーとの夕食会を主催する生涯で最もスリリングな体験をした。リーナスはビルに会ったことがなく、デイブはリーナスに会ったことがなかった。重要なカーネルの決定は行われなかったが、次の夕食会では何かあるかもしれません😉」と投稿した。

Linuxは無料でオープンソースのオペレーティングシステムで、かつてマイクロソフトの最大の競合相手とされていた。ゲイツはクローズドソースの商用ソフトウェアエコシステム構築に焦点を当て、トーバルズはオープンソース開発とソフトウェアの自由を推進してきた。両者は数十年間テクノロジー業界で活動してきたが、友好的な場での公の会談は今回が初めてである。

From:
文献リンクBill Gates meets the man who created software once regarded as one of the ‘biggest Microsoft enemy’

【編集部解説】

この歴史的な出会いが示すのは、テクノロジー業界における30年以上の対立構造の劇的な変化です。マイクロソフトは1990年代後半から2000年代初頭にかけて、いわゆる「ハロウィン文書」で明らかになったように、Linuxを最大の脅威として認識し、オープンソースソフトウェアに対して敵対的な姿勢を取り続けてきました。

かつてビル・ゲイツはオープンソースソフトウェアについて「反資本主義的」として批判していました。一方のトーバルズも、マイクロソフトのオペレーティングシステムを「本当にお粗末」と辛辣に評価するなど、両者の溝は深く刻まれていたのです。

しかし、2014年にサティア・ナデラがマイクロソフトCEOに就任して以降、同社のオープンソースに対する姿勢は劇的に変化しました。2016年にWindows Subsystem for Linux(WSL)を導入し、2018年にはGitHubを7.5億ドルで買収するなど、「Microsoft loves Linux」というスローガンのもと、積極的にオープンソースコミュニティとの協業を進めています。

現在のLinuxは、サーバー市場において45%程度のシェアを占める圧倒的な存在となっており、特にクラウドインフラストラクチャーにおいては不可欠な技術基盤となっています。Microsoft Azureでも、Linux仮想マシンの利用率がWindowsを上回っているのが現実です。

この会談が持つ象徴的な意味は、単なる和解を超えています。両者が代表する「プロプライエタリ」と「オープンソース」という異なる哲学が、現代のハイブリッドクラウド時代において共存・協調する新たなパラダイムの始まりを示唆しているのです。

今回の会談で「重要なカーネルの決定は行われなかった」とのコメントがありましたが、これは逆に今後の協力可能性を暗示しています。マイクロソフトの技術フェローであるデビッド・カトラーの同席も、Windows NTの設計者とLinux開発者の技術的な対話の可能性を示唆する重要な要素といえるでしょう。

【用語解説】

Linux:1991年にリーナス・トーバルズが開発したオープンソースのオペレーティングシステム。無料で利用でき、ソースコードが公開されているため誰でも改変・配布が可能である。

カーネル:オペレーティングシステムの中核部分で、ハードウェアとソフトウェア間の仲介役を担う。システムリソースの管理やプロセス制御を行う。

オープンソース:ソフトウェアのソースコードが一般に公開され、誰でも自由に利用、改変、配布できるソフトウェア開発手法である。

プロプライエタリソフトウェア:企業や個人が著作権を保有し、ソースコードが非公開で、使用許諾が制限されているソフトウェアの形態である。

ハロウィン文書:1998年にマイクロソフトから流出した内部文書群で、同社のLinuxやオープンソースソフトウェアに対する戦略が記されていた。。

【参考リンク】

Microsoft(外部)
マイクロソフトの公式サイト。AI、クラウド、生産性ツール、コンピューティング、ゲーム等を提供

Microsoft Azure(外部)
マイクロソフトのクラウドプラットフォーム。オープンで柔軟なクラウドサービスを提供

Linux Foundation(外部)
Linuxとオープンソースプロジェクトを支援する非営利組織の中立的なハブ

GitHub(外部)
世界最大のソフトウェア開発プラットフォーム。1億5000万人以上が利用

Windows Subsystem for Linux (WSL)(外部)
WindowsでLinux環境を実行できる機能。仮想マシン不要でLinuxツールを利用可能

Sysinternals(外部)
Windowsシステム管理ユーティリティと技術情報を提供するマイクロソフト運営サイト

【参考動画】

How Linux is Built – The Linux Foundation
Linux Foundationが制作したLinuxの構築プロセスを説明する動画。Linuxがスマートフォンやソーシャルネットワーク、金融取引などで広く利用されている現状と開発体制を紹介している。

Microsoft Azure Overview – Microsoft Developer
マイクロソフト公式チャンネルによるAzureの概要説明動画。Azureが提供する幅広い機能とサービスについて2分半で簡潔に解説している。

【参考記事】

Bill Gates and Linus Torvalds meet for the first time. – The Verge(外部)
マイクロソフト共同創設者とLinux開発者の初対面を報じた記事。歴史的な出会いの詳細を解説

Long-time rivals Bill Gates and Linus Torvalds meet for the first time – Tom’s Hardware(外部)
技術業界の2つの伝説的人物の初対面を詳しく解説。異なるソフトウェア哲学の象徴的意味を分析

A Historic Photo: Torvalds and Gates Together – Linuxiac(外部)
オープンソースとマイクロソフトが出会った歴史的瞬間の写真について意義を解説した記事

The Halloween Documents: Microsoft’s Anti-Linux Strategy 15 Years Later – Channel Futures(外部)
1998年に流出したマイクロソフトの内部文書について、15年後の視点から同社の戦略を振り返る

Microsoft’s Open Source Journey: From Calling It a ‘Cancer’ to Embracing GitHub – Visual Studio Magazine(外部)
マイクロソフトがオープンソースを「がん」と呼んだ2001年からGitHub買収までの姿勢変化を追った記事

【編集部後記】

今回の歴史的な会談を見て、私たちはテクノロジー業界の変化の速さと深さを改めて実感しました。かつて対立していた両陣営が歩み寄る姿は、オープンソースとプロプライエタリの境界線が曖昧になりつつある現在を象徴しているように思えます。

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乗杉 海
新しいものが大好きなゲーマー系ライターです!

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