Last Updated on 2025-05-13 16:11 by 乗杉 海
VR冒険パズルゲーム「Bearly Escape」が2025年5月1日(現地時間、日本時間5月2日)にアーリーアクセス版としてMeta Quest 3|3SおよびSteamVR向けに発売された。開発元は香港のTime Traveller社で、価格は14.99米ドル(約2,200円)となっている。
「Bearly Escape」は、プレイヤーが行方不明になった愛犬ロビンを探す少年となり、神秘的な森「エバーウッド」を探索するゲームだ。その過程で悪の科学者Dr.キッドの陰謀を発見し、彼によってぬいぐるみに変えられ捕らわれた動物たちを救出するミッションに挑む。
ゲームプレイは三つの異なるスタイルで構成されている。一人称視点のパズル、三人称視点のプラットフォーミング、そしてクレーンゲーム(UFOキャッチャー)のチャレンジだ。プレイヤーはクマのアバターを操作して障害物を乗り越え、専用ドローンを使って動物たちを救出し、罠だらけのプラットフォームステージを通じて彼らを安全な場所へ導く。
ゲーム内には8つの研究所と最大40種類の救助を必要とする動物が存在する。各プラットフォームレベルには複数の解決策があり、プレイヤーはストーリーを完了した後も再挑戦して追加の報酬を獲得できる。また、各レベルにはリーダーボードが実装されており、動物を救助することで追加の報酬を得ることができる。
Time Traveller社の創設者であるケルビン・ホウ氏は、「Bearly Escapeは映画的なストーリーテリングとインタラクティブなVRゲームプレイを組み合わせた没入型体験を提供します」とコメントしている。同社は元マイクロソフト幹部で北京の映画マーケティング会社Mtimeの創設者であるホウ氏によって2023年に設立され、現在40人以上のゲーム業界の専門家がチームに所属している。
UploadVRのレビューによると、ゲームはアーリーアクセス版であるため完璧ではないものの、特にクレーンゲームの要素は実際のアーケードマシンの適度に歯ごたえのある再現として高く評価されている。
References:Bearly Escape Hands-On: An Arcade Adventure Filled With Critters & Claw Machines
【編集部解説】
Bearly Escapeは、VR市場に新たな風を吹き込む作品として注目を集めています。このゲームが特徴的なのは、一人称視点のパズル、クレーンゲーム、そして三人称視点のプラットフォーミングという3つの異なるゲームプレイスタイルを組み合わせている点です。この多様性は、VRゲームにおいて珍しい試みと言えるでしょう。
特に興味深いのは、クレーンゲーム(UFOキャッチャー)の要素です。実際のアーケードゲームのような操作感を再現しながらも、現実のクレーンゲームよりも遥かに成功率が高く設計されています。これにより、プレイヤーはフラストレーションを感じることなく、ゲームの世界観に没入できるよう工夫されています。
ただし、このゲームはまだアーリーアクセス版であり、いくつかの課題も指摘されています。The Elite Instituteのレビューによれば、バグやグリッチが存在し、コントロールに関する問題点も報告されています。これらの問題は今後のアップデートで改善されることが期待されますが、現時点では完成度の面で不安が残ります。
Time Traveller社は、このゲームを通じて自然保護の重要性というメッセージも伝えようとしています。プレイヤーが動物たちを救出するたびに、荒廃した森が元の美しい姿を取り戻していくという環境回復のテーマは、ゲームに深みを与えています。
VRゲームとしては、Meta Quest 3|3Sに最適化されたグラフィックスを採用しており、水彩画風のアートスタイルが特徴的です。このスタイルは技術的に最先端というわけではありませんが、ゲームの世界観と調和しており、独特の雰囲気を醸し出しています。
価格設定は14.99ドル(約2,200円)と、アーリーアクセス版としては標準的です。開発元のTime Traveller社は、今後約3ヶ月のアーリーアクセス期間を予定しており、その間に新たなキャラクターやレベル、さらにはストーリーエンディングの追加も検討しているとのことです。
VRプラットフォーマーとしては、過去の『Moss』や『Lucky’s Tale』、『Ven VR Adventure』といった作品と比較されることが多いようです。特に『Moss』との類似点が指摘されていますが、『Moss』がファンタジー世界の小さなネズミを操作するのに対し、Bearly Escapeは現代的な設定でクマのぬいぐるみを操作する点が異なります。また、クレーンゲームの要素は完全にオリジナルであり、他のVRプラットフォーマーには見られない独自の魅力となっています。
Time Traveller社は元マイクロソフト幹部のケルビン・ホウ氏が2023年に香港で設立した比較的新しいスタジオであり、Bearly Escapeは同社初のVRタイトルとなります。40人以上のゲーム業界の専門家を抱える同社の今後の展開にも注目が集まっています。
VRゲーム市場において、家族向けのコンテンツは重要なセグメントを形成しています。Bearly Escapeのような親しみやすいキャラクターと直感的な操作性を持つタイトルは、VR初心者や若年層のユーザーを取り込む可能性を秘めています。
今後のアップデートでどのように進化していくのか、そして完全版ではどのような新要素が追加されるのか、VRゲームファンにとって見逃せない作品となりそうです。
【用語解説】
VR(バーチャルリアリティ):コンピュータによって作られた仮想空間をヘッドセットを通じて体験できる技術。現実とは異なる世界に没入感を得られる。
MR(複合現実):現実世界とバーチャル世界を融合させる技術。実際の環境にデジタル情報を重ねて表示する。
Meta Quest 3|3S:Metaが開発・販売するVR/MRヘッドセット。高性能なプロセッサと高解像度ディスプレイを搭載し、ハンドトラッキング機能も備えている。
SteamVR:Valve Corporationが開発したVRプラットフォーム。様々なVRヘッドセットに対応したVRゲームやアプリケーションを提供している。
プラットフォーマー:キャラクターを操作して足場から足場へジャンプしながら進むゲームジャンル。マリオシリーズなどが代表例。
アーリーアクセス:開発途中のゲームを一般ユーザーに先行公開する販売形態。ユーザーからのフィードバックを得ながら開発を進められる利点がある。
リーダーボード:ゲーム内でのプレイヤーのスコアや成績をランキング形式で表示するシステム。競争要素を高める役割がある。
Moss:Polyarc社が開発したVRプラットフォームアドベンチャーゲーム。プレイヤーは小さなネズミの冒険を手助けする。Bearly Escapeと比較される代表的なVRプラットフォーマー。
【参考リンク】
Bearly Escape(Me)(外部)Time Traveller社が開発したVRパズルアドベンチャーゲーム「Bearly Escape」の公式サイト。ゲームの特徴、トレーラー、スクリーンショットなどが掲載されている。Meta Quest 3|3SとSteamVRに対応。
SteamVR(外部)Valve Corporationが運営するPCゲームプラットフォームSteamのVR部門。様々なVRヘッドセットに対応したゲームやアプリケーションを提供している。