Last Updated on 2025-06-26 09:01 by TaTsu
ボストン本社のCRM企業Creatioが2025年6月25日、最新プラットフォーム「8.3 Twin Release」を正式発表した。
同社CEOのKatherine Kosterevaと製品マーケティング・戦略担当グローバルVPのBurley Kawasakiが発表した。このアップデートは会話型ユーザーインターフェース、事前構築済み役割ベースAIエージェント、ノーコードエージェントビルダーを含むAIネイティブ機能を導入する。
営業エージェントはアカウント調査と見積もり生成、マーケティングエージェントはキャンペーンメッセージング作成、サービスエージェントはケース解決、ノーコードエージェントはダッシュボード構築を支援する。
プラットフォームはMicrosoft OutlookとTeamsと統合済み。既存顧客は追加コストなしで利用可能。OpenAI、Anthropic、Geminiの基盤モデルをサポートし、企業固有文書での検索拡張生成(RAG)機能を搭載。顧客の文書は専用インスタンスに安全に保存される。
【編集部解説】
今回のCreatio 8.3「Twin」リリースは、CRM業界における重要な転換点を示しています。多くのCRMベンダーがAI機能を後付けで追加し、追加料金を課す戦略を取る中、Creatioは全く異なるアプローチを選択しました。
AIネイティブ戦略の真の意味
Katherine Kostereva CEOが強調するように、Creatioは「人間中心」のアプローチを採用しています。AIを人間の代替ではなく、協働パートナーとして位置づけることで、従来のCRMの概念を根本から変革しようとしています。
特に注目すべきは、既存顧客が追加ライセンスや統合作業なしに、すぐにAI機能を利用できる点です。この戦略は、AI導入の民主化を加速させる可能性があります。
検索拡張生成(RAG)技術の実装
Creatio 8.3が採用するRAG技術は、企業固有の文書やメタデータに基づいてAIが回答を生成する仕組みです。これにより、汎用的なAIではなく、各企業のコンテキストに特化した支援が可能になります。
この技術により、営業担当者は顧客情報を瞬時に把握し、マーケターは過去のキャンペーンデータを活用した戦略立案が可能となります。
役割ベースAIエージェントの革新性
従来のCRMが単一の汎用AIを提供するのに対し、Creatioは営業、マーケティング、サービス、ノーコード開発それぞれに特化したエージェントを提供します。これにより、各部門の専門性に応じた最適化された支援が実現します。
企業級セキュリティとガバナンス
AIエージェントの普及において最重要となるデータガバナンスについて、Creatioは各顧客専用のセキュアなインスタンスでの文書保存を実現しています。外部の大規模言語モデルとの情報共有を回避することで、機密性の高い業界でも安心して利用できる環境を構築しています。
業界への波及効果
No-Code Days Floridaでの事前披露やグローバルな発表イベントの実施は、Creatioが単なる製品アップデートではなく、業界標準の変革を目指していることを示しています。
この動きは、AI技術の企業導入を加速させ、結果として日本企業の生産性向上にも寄与することが期待されます。特に中小企業市場において、高額なAI機能を提供する既存ベンダーは戦略の見直しを迫られるでしょう。
将来への展望
Creatioの「Twin」コンセプトは、人間とデジタルエージェントの協働という新しいワークスタイルを提案しています。これは単なる技術的進歩を超えて、企業文化や組織運営の根本的変革を促す可能性を秘めています。
【用語解説】
CRM(Customer Relationship Management)
顧客関係管理システム。顧客情報を一元管理し、営業、マーケティング、サービスの各部門が連携して顧客満足度向上を図るためのソフトウェア。
RAG(Retrieval-Augmented Generation)
検索拡張生成。AIが外部データベースから関連情報を検索し、その情報に基づいて回答を生成する技術。企業固有の文書やデータを活用して、より正確で個別化された回答が可能。
ノーコード開発
プログラミング知識なしに、GUI上で直感的にアプリケーションやワークフローを構築できる開発手法。ドラッグ&ドロップ操作により、非技術者でも業務アプリケーションの作成が可能。
AIエージェント
特定の役割や機能を持つAIアシスタント。営業、マーケティング、サービスなどの業務領域において、データ入力、分析、コンテンツ生成などのタスクを自動化する。
ALM(Application Lifecycle Management)
アプリケーションの企画から開発、テスト、デプロイ、運用、保守までの全ライフサイクルを管理する手法。企業級システムの品質と効率性を確保する。
【参考リンク】
Creatio公式サイト(外部)
ボストン本社のCRM企業。AIネイティブプラットフォームでCRMとワークフローの自動化を提供
Creatio 8.3 Twin Release特設ページ(外部)
8.3 Twinリリースの詳細情報と機能説明。AIネイティブCRMとノーコード自動化について解説
OpenAI公式サイト(外部)
GPTシリーズを開発するAI研究企業。汎用人工知能が全人類に利益をもたらすことを使命とする
Anthropic公式サイト(外部)
Claudeを開発するAI安全性研究企業。信頼性、解釈可能性、制御可能性を重視したAIシステムを構築
【参考動画】
【参考記事】
Creatio Launches 8.3 “Twin” Release(外部)
Creatio公式プレスリリース。Katherine Kostereva CEOのコメントを含む詳細機能と企業戦略を解説
Creatio CRM Introduces AI Agents for Enterprise Automation(外部)TechRepublicによる8.3リリースの分析記事。企業向けAI自動化機能の詳細と業界への影響を解説
Salesforce Agentforce 3発表、AIエージェント可視化とMCPサポートで企業AI運用を革新(外部)
SalesforceのAgentforce 3発表に関する記事。Creatioの競合動向を理解するための参考情報
【編集部後記】
AIがビジネスの「当たり前」になりつつある今、皆さんの職場ではどのような変化を感じていらっしゃいますか?Creatioのような統合型AIプラットフォームが普及すると、従来の業務フローが根本から変わる可能性があります。
特に営業やマーケティングの現場で働く方々にとって、役割特化型AIエージェントとの協働は新たな働き方の選択肢となるかもしれません。皆さんは「AIに任せたい作業」と「人間が担うべき領域」をどう線引きされているでしょうか?ぜひSNSで、現場の生の声をお聞かせください。