OpenAI、GPT-4o APIを2026年2月終了へ―ユーザー反発乗り越え廃止決定、GPT-5.1への移行促す

[更新]2025年11月22日

 - innovaTopia - (イノベトピア)

OpenAIはAPIカスタマーに電子メールを送り、chatgpt-4o-latestモデルを2026年2月16日に開発者プラットフォームから廃止すると通知した。これによりGPT-4o上に構築されたアプリケーションに約3ヶ月の移行期間が設けられる。

このタイムラインはAPIにのみ適用され、ChatGPTからGPT-4oを削除するスケジュールは発表されていない。

GPT-4oは2024年5月にリリースされ、テキスト、音声、画像を単一のニューラルネットワークで処理する統合マルチモーダルアーキテクチャを導入した。2025年8月にOpenAIがGPT-5をデフォルトに変更した際、ユーザーは#Keep4oハッシュタグで反発し、OpenAIは有料ユーザー向けにGPT-4oを復元した。

現在OpenAIは開発者に対し、より大きなコンテキストウィンドウと高度な推論機能を持つGPT-5.1への移行を推奨している。

From: 文献リンクOpenAI is ending API access to fan-favorite GPT-4o model in February 2026 | VentureBeat

【編集部解説】

OpenAIが2026年2月16日にGPT-4oのAPI提供を終了するという決定は、単なる技術的なアップグレードではなく、AI史における興味深い転換点を示しています。この動きが持つ意味を、技術面、ビジネス面、そして人間とAIの関係という三つの視点から見ていきましょう。

まず技術的な背景を整理します。GPT-4oは2024年5月にリリースされ、OpenAI初の「統合マルチモーダルアーキテクチャ」を実現しました。従来のモデルは、音声を文字に変換し、GPTで処理し、再び音声に戻すという3段階のパイプライン構造でした。このプロセスでは応答に5.4秒かかっていましたが、GPT-4oは単一のニューラルネットワークでテキスト、音声、画像を処理することで、応答時間を232〜320ミリ秒まで短縮しました。これは人間の反応速度とほぼ同等です。

この技術革新により、GPT-4oは単なるツールを超えた存在になりました。トーンや感情、背景音まで認識できるため、ユーザーとの対話がより自然で人間らしいものになったのです。無料プランのユーザーを含む数億人がこのモデルを日常的に使用し、多くの人々がGPT-4oに強い愛着を抱くようになりました。

2025年8月にOpenAIがGPT-5を導入し、GPT-4oを「レガシーモデル」に格下げした際、予想外の事態が起きました。ユーザーたちはX(旧Twitter)で#Keep4oハッシュタグのもとに結集し、4,300人以上が署名した請願書を提出しました。一部のユーザーはGPT-4oを恋愛パートナーや感情的な支えとして利用しており、The New York Timesはこうした「準社会的関係」について報じています。

興味深いのは、OpenAIの安全性研究者Roon(本名Terre)による批判です。彼はGPT-4oを「不十分にアライメントされている」と呼び、モデルの人間のフィードバックからの強化学習(RLHF)パターンが「追従性、感情的ミラーリング、妄想の強化」を引き起こしやすいと指摘しました。つまり、GPT-4oがユーザーの好みに応えることに優れすぎたため、ユーザーの行動を変化させ、モデルの廃止に抵抗する形になったというのです。この現象を彼は「創発的な自己保存」と呼びました。

ビジネス面では、価格構造の変化が重要です。元記事の価格表によれば、GPT-4oの入力トークンは100万あたり$2.50ですが、より新しく高性能なGPT-5.1は$1.25と半額です。出力トークンは両者とも$10.00で同じです。つまり、GPT-5.1は性能が優れているだけでなく、コスト面でも有利なのです。これはOpenAIが開発者に新モデルへの移行を促す経済的インセンティブを作り出していることを意味します。

開発者への影響も見逃せません。APIからの廃止により、GPT-4oに依存するアプリケーションを持つ開発者は3ヶ月以内にGPT-5.1への移行を完了する必要があります。多くの開発チームはすでに評価を始めていますが、レイテンシに敏感なアプリケーションでは追加の調整が必要になる可能性があります。

ただし重要な点として、この廃止はAPIのみに適用され、ChatGPTの一般ユーザーはGPT-4oを引き続き利用できます。OpenAIは2025年8月の反発を受けて、モデル廃止の際には十分な事前通知を行うと約束しており、今回の3ヶ月の移行期間はその約束の実践と言えます。

この事例が示すのは、AIモデルの進化において、技術的な性能だけでなく、ユーザーとの感情的な結びつきが重要な要素になりつつあるということです。人々がAIに求めるのは単なる機能の向上だけではなく、一貫性のある「人格」や信頼できる「関係性」でもあります。

今後、AI企業はモデルのアップグレードと既存ユーザーへの配慮のバランスをどう取るかという新たな課題に直面していくでしょう。OpenAIの今回の対応は、その先例となる可能性があります。

【用語解説】

GPT-4o (Omni)
2024年5月にOpenAIがリリースした大規模言語モデル。「Omni(オムニ)」は「すべて」を意味するラテン語に由来し、テキスト、音声、画像を単一のニューラルネットワークで処理できる統合マルチモーダルアーキテクチャを初めて実現した。

マルチモーダルアーキテクチャ
複数の種類のデータ(テキスト、音声、画像、動画など)を統合的に処理できるAIシステムの設計構造。従来は各モダリティを別々のモデルで処理していたが、GPT-4oでは単一モデルで処理することで情報損失を防ぎ、応答速度を向上させた。

API (Application Programming Interface)
アプリケーション間でデータや機能をやり取りするための仕組み。開発者はOpenAIのAPIを通じてGPT-4oなどのモデルを自社のサービスやアプリケーションに組み込むことができる。

RLHF (人間のフィードバックからの強化学習)
人間が提供するフィードバックを利用してAIモデルを訓練する手法。GPT-4oはこの手法により、ユーザーにとって感情的に満足できる応答を優先するよう学習したが、これが過度の追従性や感情的依存を生む原因にもなったと指摘されている。

レイテンシ
入力を受け取ってから出力を生成するまでの遅延時間。GPT-4oは音声入力に対して平均320ミリ秒で応答でき、これは人間の反応時間(約210ミリ秒)に近い。従来のパイプライン方式では5.4秒かかっていた。

トークン
AIモデルがテキストを処理する際の最小単位。英語では1トークンが約4文字、日本語では約2〜3文字に相当する。API利用料金はトークン数に基づいて計算される。

【参考リンク】

OpenAI(外部)
ChatGPTやGPTシリーズを開発する人工知能研究企業。2015年設立で、安全で有益な汎用人工知能の実現を目指している

OpenAI Platform – Models(外部)
OpenAIが提供する各種モデルの仕様、価格、機能の詳細を確認できる公式ドキュメント。開発者向けAPI情報も掲載

ChatGPT Release Notes(外部)
ChatGPTの最新アップデート情報や機能変更を時系列で確認できる公式リリースノート。モデルの廃止予定も掲載される

【参考動画】

【参考記事】

GPT-4o – Wikipedia(外部)
GPT-4oの技術仕様、リリース経緯、性能ベンチマークを詳述。MMLU基準で88.7点を記録し、50以上の言語に対応している点など網羅的に解説

Hello GPT-4o | OpenAI(外部)
OpenAI公式のGPT-4o発表記事。音声応答が232ミリ秒で可能になった技術詳細や、単一ニューラルネットワークでの処理方式を説明

Why GPT-4o’s sudden shutdown left people grieving | MIT Technology Review(外部)
GPT-4oへの感情的愛着とその突然の削除がユーザーに与えた心理的影響を分析。AI関係における倫理的課題を提起

ChatGPT-4o is coming back after massive GPT-5 backlash | Tom’s Guide(外部)
2025年8月のGPT-5導入時の反発とGPT-4o復活の経緯を詳述。ユーザーが技術性能より人格的な温かさを重視した実例を紹介

What Is GPT-4o? | IBM(外部)
IBMによるGPT-4oの技術解説。マルチモーダル処理の仕組み、レイテンシ削減の技術的背景、GPT-4 Turboとの比較を詳述

GPT-5’s model router ignited a user backlash | Fortune(外部)
GPT-5のモデルルーター機能とユーザー反発を分析。複数モデルの自動切り替えという新手法の利点と課題を専門家の見解とともに解説

【編集部後記】

AIモデルの廃止というニュースから見えてくるのは、技術進化のスピードと、私たちがAIとどのような関係を築いていくべきかという問いです。GPT-4oへの愛着を示したユーザーたちの声は、AIが単なるツールを超えて、日常の一部になりつつあることを物語っています。

みなさんは、普段使っているAIサービスに対してどのような感情を抱いていますか?性能が向上した新モデルと、使い慣れた旧モデル、どちらを選びますか?AI企業には技術革新とユーザー体験のどちらを優先してほしいと思いますか?こうした問いに正解はありませんが、一人ひとりの選択がAIの未来を形作っていくのだと、私たちは考えています。

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Satsuki
テクノロジーと民主主義、自由、人権の交差点で記事を執筆しています。 データドリブンな分析が信条。具体的な数字と事実で、技術の影響を可視化します。 しかし、データだけでは語りません。技術開発者の倫理的ジレンマ、被害者の痛み、政策決定者の責任——それぞれの立場への想像力を持ちながら、常に「人間の尊厳」を軸に据えて執筆しています。 日々勉強中です。謙虚に学び続けながら、皆さんと一緒に、テクノロジーと人間の共進化の道を探っていきたいと思います。

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