「QUICKビットコイン指数」×リアルタイム指数 日本のビットコイン市場インフラが一段階進化

「QUICKビットコイン指数」×リアルタイム指数 日本のビットコイン市場インフラが一段階進化 - innovaTopia - (イノベトピア)

ビットコインの「価格」は、見る場所によって微妙に違う、その前提を揃えるための“共通の物差し”が、日本にも立ち上がろうとしています。

​その第一歩となるのが、国内取引所のBTC/JPY現物価格を束ねて算出される「QUICKビットコイン指数」です。


株式会社QUICKは2025年12月1日、国内で取引されるビットコインの円建て現物取引価格をベンチマークとする「QUICKビットコイン指数」の本格的な算出・公表を開始しました。

試験運用時は週1回だった公表サイトでの更新頻度を、月曜日から金曜日まで毎日1回(15時30分の確報値)に高め、日本市場におけるBTC/JPYの“共通の物差し”として位置づけています。

12月22日からは、同指数がQUICKのマーケット情報サービス上でも利用可能となり、さらに15秒間隔で算出される「QUICKビットコインリアルタイム指数」も提供されます。

QUICKビットコイン指数は直近60分の約定価格を用いた売買高加重平均、リアルタイム指数は直近15秒の約定価格を用いた単純平均で算出され、日本のビットコイン市場を複数の時間軸から捉えるための基盤が整備されつつあります。

From: 文献リンク「QUICKビットコイン指数」の本格的な算出・公表を開始

【編集部解説】

ビットコインの取引はすでに日本でも広がっていますが、「日本の市場全体として、いまいくらなのか」を示す共通の物差しは、これまで十分に整ってはいませんでした。 QUICKビットコイン指数は、国内の暗号資産交換業者におけるBTC/JPY現物価格を集約し、公表ルールを明確にしたうえで指標化することで、日本発の円建てビットコインベンチマークを本格的に立ち上げる動きだと言えます。

この整備によって、とくに影響を受けるのは機関投資家やプロダクト設計に関わるプレイヤーです。 暗号資産ベンチマーク研究会では、ETFや先物などの参照指標として利用できる指数の要件やガバナンスが議論されており、信頼できる円建てインデックスの存在は、日本市場で本格的な暗号資産関連金融商品の裾野を広げる前提条件になります。

一方で、QUICKは安定した基準値としてのビットコイン指数と、15秒間隔で動くリアルタイム指数をあえて分けて設計しています。 60分の売買高加重平均はノイズを抑えた「基準価格」としての性格が強く、リアルタイム指数はトレーディングやリスク管理の現場で、瞬間ごとの市場温度を測る“体温計”として機能する設計です。

この二層構造が普及すると、金融機関の内部システムやアルゴリズム取引、リスクモニタリングのロジックに、暗号資産市場のシグナルがより自然に組み込まれていく可能性があります。 すでに海外では、ビットコイン指数がETFやデリバティブの清算などに利用されており、日本でも“指数を前提としたプロダクト設計”が増えていくと、暗号資産と従来金融の境界はさらに曖昧になっていくはずです。

もっとも、指数の整備はポジティブな側面だけではありません。 価格指標が整えばレバレッジ商品や複雑なストラクチャー商品も設計しやすくなり、個人投資家が自分で把握しきれないリスクを取ってしまうケースも増えかねません。 規制当局にとっては、市場を可視化するツールが増える一方で、「どの程度まで高度な商品を許容するか」という新しいルールメイクが求められる局面でもあります。

重要なのは、このニュースを「指数が一つ増えた」という表層だけで捉えないことだと感じています。 日本発のビットコインベンチマークは、ブロックチェーン・Web3プロジェクト、既存企業のトークン活用、そして国際的な資本の受け皿としての日本市場の立ち位置に、じわじわと影響していきます。 未来の金融インフラの一部として、この指標がどのように組み込まれていくのかを、中長期の視点で追いかけていく価値は大きいはずです。

【用語解説】

QUICKビットコイン指数
国内の暗号資産交換業者におけるビットコインの円建て現物価格をもとに算出されるベンチマークで、5分間隔で計算され、15時30分に確報値が公表される指数である。

ベンチマーク(指標)
資産価格や運用成績を比較・評価するための基準となる数値で、インデックス連動商品やリスク管理で“ものさし”として利用される概念である。

QUICKビットコインリアルタイム指数
直近15秒間のビットコイン約定価格を単純平均で算出する参照指標で、15秒ごとに更新され、市場のリアルタイムな価格動向を把握する用途を想定している指数である。

暗号資産ベンチマーク研究会
QUICKが運営し、暗号資産交換業者や運用会社、信託銀行、証券会社、法律専門家などが参加して、円建て暗号資産ベンチマークの設計や活用方法を検討するための研究会である。

暗号資産ETF
ビットコインなどの暗号資産の価格に連動することを目的とした上場投資信託で、既存の証券口座を通じて売買できるように設計された金融商品である。

【参考リンク】

株式会社QUICK 公式サイト(外部)
日本経済新聞社グループの金融情報サービス企業で、市場データや指数算出、各種ソリューションを提供している。

暗号資産ベンチマーク公表サイト(外部)
QUICKビットコイン指数など暗号資産ベンチマークの最新値や概要、算出方法を一覧で確認できる公式情報ページである。

「QUICKビットコイン指数」の本格的な算出・公表を開始(外部)
指数の算出ロジックや更新頻度、リアルタイム指数の概要などを詳しく説明したQUICKによる公式プレスリリースである。

暗号資産ベンチマーク研究会 発足リリース(外部)
円建て暗号資産ベンチマーク整備の目的や参加機関、今後の活用イメージをまとめた研究会の立ち上げ告知ページである。

【参考記事】

国内取引所BTC価格を反映、「QUICKビットコイン指数」が開始(外部)
国内暗号資産交換業者のBTC/JPY価格を反映する指数の開始と、その仕様やETF・デリバティブなどでの活用可能性を整理した解説記事である。

日経グループQUICK、ビットコイン指数の算出開始(外部)
指数の開始日、更新頻度、リアルタイム指数の算出間隔や公開予定時期など、仕様のポイントを日本語でわかりやすく整理しているニュース記事である。

「QUICKビットコイン指数」の本格的な算出・公表を開始(転載)(外部)
QUICK公式リリースの内容をもとに、指数の算出頻度や時間帯、算出方法などの要点を簡潔に紹介している転載記事である。

国産暗号資産ベンチマークがもたらすエコシステム構築と波及効果(外部)
国産暗号資産ベンチマークが市場インフラや商品設計、規制面に与える波及効果を分析した報告書で、本記事の長期的な文脈理解に役立つ資料である。

【編集部後記】

ビットコインの値動きそのものよりも、「どんな物差しでその数字を見ているのか」が問われ始めたタイミングで、このニュースが出てきた印象があります。 日々チャートを追いかけている方も、一度「自分が見ている指標は、どの市場をどんなルールで切り取ったものなのか?」を意識して眺めてみると、新しい発見があるかもしれません。

この指数が、みなさんそれぞれの投資スタイルやテクノロジーとの付き合い方を見直す小さなきっかけになればうれしいです。​

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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