Google CloudはAIコーディングスタートアップReplitと複数年のパートナーシップを結び、vibe-codingをエンタープライズ領域へ広げようとしている。
この提携により、ReplitはGoogle CloudサービスとGoogleのAIモデルを自社プラットフォームに統合し、企業向けのAIコーディング活用を加速させる。Replitは非エンジニアでも扱いやすい開発環境を掲げており、プロダクトマネージャーやデザイナー、営業などもAIを介してアプリ開発プロセスに参加できる点が特徴だ。
一方で市場では、AnthropicのClaude CodeやCursorがARR 10億ドル規模・数十ビリオンドル評価額で急成長しており、AIコーディング分野の競争は激化している。GoogleはGemini 3を中核モデルとして押し出しつつ、Replitを主要パートナーとしてロックインすることで、開発者だけでなく「社内の誰もが開発に関わる」vibe-coding時代の主導権を狙っている。
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Google partners with Replit, in vibe-coding push
【編集部解説】
今回の提携は、クラウド契約のニュースにとどまらず、「ソフトウェア開発そのものを誰が担うのか」という前提を書き換える動きとして捉えたほうが理解しやすいです。Replitはブラウザ上でAIと対話しながらアプリをつくれる環境を提供し、GoogleはGemini 3をはじめとするモデル群とクラウド基盤を提供することで、両社は互いの弱みを補完しています。
vibe-codingは、自然言語で「作りたいものの雰囲気(vibe)」や要件を伝えるだけで、AIがコード生成から環境構築、UI作成までを一貫して行う開発スタイルです。これにより、従来は「コードを書かない側」にいたプロダクトマネージャーやデザイナー、ビジネスサイドのメンバーも、直接プロトタイプづくりに関与できるようになります。実際、大手ITサービス企業のHexawareでは、Replitと提携して全従業員32,000人規模で「Secure Vibe Coding」環境を展開しており、「全員が開発プロセスに参加する組織」が現実味を帯びてきています。
一方で、この流れにはリスクも伴います。AIが大量のコードを自動生成することで、誰も全体像を把握していないシステムが生まれやすくなり、品質やセキュリティ、責任の所在が不透明になる懸念があります。実際、vibe-coding系サービスでは運用面のトラブルや説明責任が問われた事例もあり、「誰でも触れる」ことと「安全に運用できる」ことのバランス設計が不可欠です。
それでも、GoogleがこのタイミングでReplitを「主要パートナー」として長期契約し、Gemini 3を前面に押し出している事実は重いと感じます。生成AIはチャット体験から、コード生成・エージェント・業務アプリ自動生成といったよりコアな業務領域へ重心を移しつつあります。企業ITやプロダクト開発の現場は数年単位で再編されていくはずで、読者のみなさんのチームにとっても「どこまでをAIに任せ、どこからを人が設計するのか」を早い段階で言語化しておくことが、この波を主体的に活かす鍵になりそうです。
【用語解説】
vibe-coding
自然言語で要件やイメージを入力すると、AIがコードやアプリを生成してくれる開発スタイルの総称である。
AI coding assistant / AI code generation
コード生成や補完、バグ修正などをAIが支援する機能やツールの総称で、開発効率や品質向上を目的として利用される。
Secure Vibe Coding
企業がガバナンスやセキュリティポリシーを適用した状態で、従業員にvibe-coding環境を提供する概念。Hexawareなどが提唱。
【参考リンク】
Google Cloud(外部)
Googleが提供するクラウドプラットフォームで、コンピュートやAI、データ分析などを企業向けに提供している。
Replit(外部)
ブラウザ上でコードを実行できる開発環境を提供し、AIコーディングやvibe-coding機能で非エンジニアも支援している。
Anthropic(Claude / Claude Code)(外部)
生成AIモデルClaudeシリーズとエンタープライズ向けAIアシスタントやコーディング支援サービスを展開するAI企業である。
Cursor(外部)
AI対応コードエディタを提供し、IDE体験にコード生成やエージェント機能を統合するスタートアップである。
Ramp(外部)
企業向けの支出管理・コーポレートカードサービスで、SaaSベンダーの利用動向などもデータとして分析している。
AI’s vibe-coding era: How the shift to apps changed the race(外部)
vibe-codingの概念と、大手各社がアプリ中心のAI競争へ移行する流れを解説した特集記事である。
【参考動画】
【参考記事】
Bringing vibe-coding to the enterprise with Replit(外部)
Google CloudとReplitの提携内容や、Gemini 3連携、エンタープライズ向けvibe-coding事例を公式視点で解説している。
Google partners with Replit to challenge Claude and Cursor(外部)
今回の提携をClaude CodeやCursorとの競争軸から整理し、各社のポジションと市場戦略をわかりやすくまとめた記事である。
AI startup Cursor raises $2.3 billion funding round at $29.3 billion valuation(外部)
Cursorが29.3Bドルの評価額で2.3Bドルを調達し、ARR 1Bドル規模に到達したことを報じる、AIコーディング市場の成長を示す記事である。
Cursor Hit $1B ARR in 24 Months: The Fastest Scaling …(外部)
Cursorが非常に短期間でARR 1Bドルに到達した要因やビジネスモデルを分析し、AIコーディングツールの商用ポテンシャルを解説している。
AI Coding: Google Cloud Locks Down Replit as ‘Primary’ Partner(外部)
Google CloudがReplitをprimary partnerとして位置付ける意図や、エンタープライズ向けAIコーディング戦略を補足的に説明している。
A new era of intelligence with Gemini 3(外部)
Gemini 3の技術的特徴や提供形態を説明し、GoogleのAI戦略における中核モデルとしての位置づけを示している。
The 8 Things No One Tells You About ‘Prosumer’ Vibe Coding(外部)
vibe-codingをB2Bアプリ開発に活かす際の落とし穴や現実的な課題を整理し、運用やガバナンス面の注意点を示している。
【編集部後記】
生成AIがコードを書く世界は、いよいよ一部のエンジニアだけの話ではなくなってきました。プロダクトマネージャーやデザイナー、営業の方でも、アイデアをそのまま小さなツールやアプリにしてみるハードルが下がりつつあります。
もし、自分のチームでvibe-codingを取り入れるとしたら、まずどんな業務から任せてみたいでしょうか。そんな問いを一緒に考えながら、少しずつ現場側からこの技術との付き合い方をデザインしていけたらうれしいです。






























