Tianmushan-1が水素動力で188.605km達成、ギネス認定|BVLOS時代の長距離マルチローター

[更新]2025年12月14日

Tianmushan-1が水素動力で188.605km達成、ギネス認定|BVLOS時代の長距離マルチローター - innovaTopia - (イノベトピア)

中国のドローンTianmushan-1が、水素動力のマルチローター/ドローンとして最長距離188.605kmの飛行を達成した。ギネス世界記録は2025年12月11日、浙江省杭州市で開催された第7回 浙江国際インテリジェント交通産業博覧会で発表した。

Beihang Universityによれば、同機は2025年11月16日に杭州市で4時間超の飛行を完了し、飛行はリアルタイムで監視され公式に検証された。Tianmushan Laboratoryの成果として、2024年8月に初飛行し、2025年4月に生産に入った。ホイールベース1,600mm、空虚重量19kg、最大ペイロード6kg、無負荷240分、動作温度-40〜50℃、BVLOSで100kmの自律運用が可能だ。

From: 文献リンクChina’s hydrogen-powered drone sets longest distance flight record

【編集部解説】

水素で飛ぶマルチローターが「188.605km」を飛行したという事実は、記録ニュースであると同時に、低空域での長距離運用が現実の選択肢として浮上してきたことを示します。ギネス世界記録が杭州市で開催された第7回 浙江国際インテリジェント交通産業博覧会で発表し、機体はBeihang Universityに関連するTianmushan Laboratoryの成果として紹介されています。

ここで重要なのは、固定翼機ではなく「multirotor(マルチローター)」で距離を伸ばしている点です。マルチローターは垂直離着陸や低速・定点運用に強い一方、一般的には航続距離で不利になりがちです。そのカテゴリで188.605kmが示されたことで、「離着陸場所を選びにくい現場でも遠距離へ届く」運用設計が語りやすくなります。

また、記事は「hydrogen-powered(水素動力)」と表現しており、方式(燃料電池など)を断定できる書き方ではありません。とはいえ、水素をエネルギー源にした電動系ドローンが、長時間・長距離を狙うアプローチとして存在感を増していることは読み取れます。バッテリーのみの運用と比べ、補給(燃料供給)という発想が前面に出るため、運用は“機体性能”だけでなく“供給網”で決まる比重が大きくなります。

記事中の運用キーワードとしてBVLOS(目視外飛行)が挙げられています。BVLOSは、機体の自律性・通信・監視体制・手順・責任分界といった要素をセットで整えないと成立しません。距離記録が伸びるほど、飛行ルートのリスク評価や緊急時の対応設計の重要性が増すため、技術進化と同じ速度でガバナンスも問われます。

ポジティブな側面としては、点検・巡視・災害対応・島嶼補給など、地上移動や有人機に依存していた領域で、時間とコストの再設計が進む可能性があります。一方で潜在リスクとしては、水素の取扱いを含む安全管理、BVLOS運用の社会受容、低空域の混雑といった課題が同時に立ち上がります。記録達成の次に注目したいのは、「どの用途で」「どの頻度で」「どんなルールとインフラで」このクラスの運用が回り始めるかです。

【用語解説】

水素動力ドローン(hydrogen-powered drone)
水素をエネルギー源として機体を駆動するドローンの概念です(方式は文脈により異なり得ます)。

マルチローター(multirotor)
複数の回転翼で揚力を得て飛行する機体形式です。

BVLOS(Beyond Visual Line of Sight)
操縦者の目視範囲外で行うドローン運用のことです。

低空経済(low-altitude economy)
低い高度の空域利用を、物流や点検、監視などの産業に結びつける文脈で使われる概念です。

ペイロード(payload)
機体が搭載して運べる荷物や機器の重量を指します。

エンデュランス(endurance)
補給なしで飛行を継続できる時間(または能力)を指します。

【参考リンク】

ギネス世界記録(Guinness World Records)(公式)(外部)
世界記録の認定や申請方法、公式記録情報を掲載する公式サイトだ。

Beihang University(公式・研究系サイト)(外部)
北京航空航天大学配下の研究・教育系サイトで、ニュースや研究情報を確認できる。

Tianmushan Laboratory関連(Beihang University)(外部)
Tianmushan Laboratoryの公開に触れる大学側ページとして参照できる。

【参考記事】

Chinese hydrogen-powered drone sets longest distance flight record(Xinhua)(外部)
188.605km飛行の認定や11月16日の4時間超飛行など、主要事実を伝える。

Chinese hydrogen-powered drone sets longest distance flight record(China Daily)(外部)
杭州市での発表や監視・検証、機体仕様と用途などの要点を伝える。

China’s hydrogen drone sets new world record with 117-mile flight(Interesting Engineering)(外部)
認定内容に触れつつ、点検・補給・緊急対応など用途の文脈で紹介する。

Chinese hydrogen-powered drone sets longest distance flight record(SCIO)(外部)
新華社配信として、188.605kmや杭州市での発表などを短くまとめて掲載する。

【編集部後記】

188.605kmという記録は、遠くへ届くドローン運用を考える材料にもなります。点検・物流・災害対応のうち、読者のみなさんの現場に近いのはどれでしょうか。

もし日本で同様のBVLOS運用を広げるなら、制度、監視体制、燃料供給など、何が“最初の条件”になりそうか。ぜひ一緒に想像してみたいです。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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