Intelは2026年1月のCES 2026でPanther Lakeモバイルチップセットを発表する予定だが、同社のGaming XアカウントがNova LakeとArc B770 GPUに関する示唆を行い注目を集めている。現在Intelが消費者向けに販売しているBattlemageアーキテクチャのデスクトップGPUはArc B570とB580のみだが、より強力なBMG-G31ベースのカードの開発証拠が存在する。
Intel GamingはX上でArc B770が登場予定であること、そしてPanther Lake、Nova Lake、Arc B770のパフォーマンスが「非常にエキサイティング」であると示唆した。最近の出荷マニフェストでは、約300Wの新型GPU「N38341-001」の存在が明らかになっており、その高ワット数からArc B770である可能性が高いと見られている。
【編集部解説】
IntelのGPU戦略は、NvidiaとAMDが支配するグラフィックスカード市場において重要な転換点を迎えています。現時点でIntelの単体GPU市場シェアは約1%にとどまっており、Nvidiaが92%を占める状況です。Arc B770は32個のXe2コアを搭載し、16GBのGDDR6メモリと256ビットメモリバスを備えると見られています。300WというTDPは、前世代のA770の225Wと比較して約33%高く、Intelが本格的なハイエンド市場への参入を目指していることを示唆しています。
技術的な観点から注目すべきは、アーキテクチャの進化です。Battlemageは実行ユニット(EU)あたりのALU数が2倍、XeコアあたりのEU数が半分という構成変更により、効率性の向上が期待されます。さらにTSMC N5Pプロセスで製造され、Nvidiaのフラッグシップに採用されているAD103と同等のダイサイズ(約379平方mm)となる見込みで、A770よりも大幅に小型化されます。
ただし、現実的な性能予測には慎重さが必要です。前世代のA770はRTX 4070と比較して大幅に劣るパフォーマンスを示しています。B770がこの差を埋められるかどうかは、アーキテクチャの刷新とドライバの成熟度次第と言えるでしょう。
長期的視点では、IntelのGPU事業は単なるゲーミング市場への参入以上の意義を持ちます。AI学習やレンダリング用途で高VRAM容量を必要とするクリエイターやデータサイエンティスト向けに、コストパフォーマンスに優れた選択肢を提供できる可能性があります。市場における第三の選択肢として確立できれば、GPU価格の適正化や技術革新の加速にも寄与するでしょう。
【用語解説】
Battlemage(バトルメイジ)
Intelの第2世代Arc GPUアーキテクチャのコードネーム。Xe2コアを採用し、前世代Alchemistから効率性とパフォーマンスを向上させた設計となっている。
BMG-G31
Battlemageアーキテクチャの最上位GPUダイの型番。32個のXeコアと256ビットメモリバスを搭載し、Arc B770に採用される見込みのチップ。
Panther Lake(パンサーレイク)
Intelの次世代モバイルプロセッサのコードネーム。Core Ultra 300シリーズとして2026年1月のCES 2026で発表予定で、AI処理能力が大幅に向上する。
Nova Lake(ノバレイク)
Panther Lakeの次に登場するIntelプロセッサアーキテクチャのコードネーム。詳細な仕様はまだ明らかになっていないが、開発が継続されている。
Xe2コア
Battlemage世代で採用されるIntelのGPUコア設計。実行ユニットあたりのALU数を2倍にするなど、前世代から大幅に再設計されている。
TDP(Thermal Design Power)
熱設計電力。GPUやCPUが定格動作時に発する熱量を示す指標で、冷却システムの設計基準となる。Arc B770は約300Wとされている。
GDDR6
Graphics Double Data Rate 6の略。グラフィックスカード向けの高速メモリ規格で、Arc B770には16GB搭載される見込み。
【参考リンク】
Intel Arc Graphics 公式サイト(外部)
Intelの単体GPU製品ラインであるArcシリーズの公式ページ。製品仕様、ドライバダウンロード、サポート情報が提供されている。
Intel Newsroom(外部)
Intelの公式ニュースルーム。新製品発表、企業情報、技術革新に関する最新のプレスリリースや記事が掲載されている。
CES 2026 公式サイト(外部)
2026年1月にラスベガスで開催されるCESの公式サイト。Panther Lakeをはじめとする各社の新製品発表が予定されている。
【参考記事】
Intel Arc B770 のリーク情報、300W の高消費電力なモデルが登場か(外部)
出荷マニフェストから判明したArc B770の消費電力情報と、BMG-G31チップの仕様について詳細に解説している。
Intel Arc B770 の消費電力は最大300W? 出荷情報から判明(外部)
部品番号「N38341-001」の出荷情報からArc B770の存在が明らかになった経緯を報じている。
Intel confirms “Big Battlemage” GPU, Arc B770 could debut at CES 2026(外部)
RedditのHardwareコミュニティでの議論。Arc B770の予想スペック、価格帯、RTX 4070との性能比較について分析されている。
Updated Intel Arc Battlemage specifications for flagship BMG G31 and mid-range G21 leak(外部)
BMG-G31とBMG-G21の詳細スペックのリーク情報。32Xeコア、16GB GDDR6、256ビットバスなど技術仕様が報じられている。
Intel is back on the graph with 1% discrete GPU market share yet Nvidia outsells it by 92x(外部)
2025年第3四半期のGPU市場シェア分析。Intelが1%のシェアを獲得したもののNvidiaが92%を占める状況が報告されている。
Intel confirms its next-gen Panther Lake CPUs will launch at CES 2026 on January 5(外部)
Panther Lakeの正式発表日が2026年1月5日と確定。前世代比50%以上のパフォーマンス向上が報じられている。
Intel Confirms Arc Battlemage BMG-G31 GPU On Software Update Notes(外部)
Intelのソフトウェアアップデートノートに「BMG-G31」の記載が発見され、公式に存在が確認された経緯を報じている。
【編集部後記】
IntelがGPU市場で1%のシェアしか持たない中、300WのArc B770を投入する判断は大胆です。NvidiaのRTX 4070に匹敵する性能を実現できるのか、前世代のような苦戦を繰り返すのか。興味深いのは、高VRAM容量を活かしたAI開発者向け市場への展開可能性です。Panther LakeやNova Lakeと合わせて、2026年はIntelにとって正念場の年になりそうです。































