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Claude Code、Google開発チームの1年分を1時間で実現──AI支援コーディングの転換点

[更新]2026年1月5日

Claude Code、Google開発チームの1年分を1時間で実現──AI支援コーディングの転換点 - innovaTopia - (イノベトピア)

Googleのプリンシパルエンジニアであるヤナ・ドーガン氏が、AnthropicのClaude Codeを使用して、Googleチームが1年間開発してきた分散型エージェントオーケストレーションシステムに匹敵するものを、わずか1時間で生成したと報告しました。

ドーガン氏はGemini APIを担当するプリンシパルエンジニアで、Xへの投稿で「冗談ではなく、笑い事でもない」と前置きした上で、Claude Codeに問題の説明を与えたところ、チームが昨年から構築してきたものを1時間で生成したと明かしました。このタスクは、複数のAIエージェントを調整する分散型エージェントオーケストレーターに関するもので、Googleはこの問題に対してさまざまなアプローチを探求してきましたが、合意には達していませんでした。

AIコーディングツールの急速な進化

ドーガン氏はまた、AI支援プログラミングの急速な進化について概説しました。2022年には、システムは個々の行を完成させることができました。2023年には、セクション全体を処理しました。2024年までに、複数のファイルにわたって作業し、シンプルなアプリを構築できるようになりました。2025年には、コードベース全体を作成し再構築できます。

2022年当時、彼女は2024年のマイルストーンがグローバルな開発者製品として実際にスケールすることが実現可能だとは信じていませんでした。2023年には、今日のレベルは5年先に思えました。「この分野における品質と効率の向上は、これまで誰もが想像できたものを超えています」と彼女は書きました。

Claude Code開発者のワークフローのヒント

ほぼ同時期に、Claude Codeの開発者であるボリス・チャーニー氏が、このツールを使用するためのヒントを公開しました。彼の最大の推奨事項は、Claudeに自身の作業を検証する方法を与えることです。このフィードバックループにより、最終出力の品質が2倍または3倍になります。

チャーニー氏は、ほとんどのセッションをプランモードで開始し、プランが確実になるまでClaudeと反復することを提案しています。その後、Claudeは通常、1回のパスでタスクを完了できます。繰り返しのワークフローには、コードの簡素化やアプリのテストなど、特定のタスクを自動化するスラッシュコマンドとサブエージェントを使用します。

より長いタスクの場合、チャーニー氏は作業が完了したときにClaudeの作業をレビューするバックグラウンドエージェントを実行します。また、異なるタスクに同時に取り組むために、複数のClaudeインスタンスを並行して実行します。彼のデフォルトモデルはOpus 4.5です。

コードレビュー中、チャーニー氏のチームは同僚のプルリクエストにClaudeを直接タグ付けしてドキュメントを追加します。Claude Codeはまた、データ分析のためのSlack、BigQuery、エラーログのためのSentryなどの外部ツールと統合されているとチャーニー氏は述べています。

From: 文献リンクGoogle engineer says Claude Code built in one hour what her team spent a year on

【編集部解説】

Googleのプリンシパルエンジニアであるヤーナ・ドーガンの発言は、AI支援コーディングツールの能力が予想を超えるスピードで進化していることを示す象徴的な出来事です。ただし、この発言の背景には重要なニュアンスがあります。

ドーガン氏は後に、彼女が構築したのは「プロダクショングレード」ではなく「トイバージョン」であることを明確にしました。つまり、本番環境で使用できる完成品ではなく、概念実証のための簡略化されたプロトタイプです。Googleチームが1年間取り組んできたのは、複数のバージョンを試行錯誤し、トレードオフを検証してきた過程であり、単純な比較はできません。

それでも、この事例が示す意義は小さくありません。ドーガン氏が強調するのは、「知識とパターンを持つ専門家」であれば、AIツールを使って自分の知見を迅速に再構築できる時代になったということです。過去には不可能だったこの能力こそが、真の変化なのです。

分散型エージェントオーケストレーションとは何か

この技術は、複数のAIエージェントを効率的に調整・管理するシステムです。各エージェントは特定のタスクに特化しており、中央のオーケストレーターがそれらを統制します。例えば、カスタマーサポートシステムであれば、請求担当エージェント、技術サポートエージェント、商品情報エージェントなどが連携して動作します。

AIコーディングツールの進化曲線

ドーガン氏が示したAI支援プログラミングの進化は驚異的です。2022年には単一行の補完しかできなかったシステムが、2023年にはコードブロック全体を、2024年には複数ファイルにわたる小規模アプリを、そして2025年にはコードベース全体の作成と再構築ができるようになりました。

Claude Codeの実力と限界

Claude Codeは、ターミナル上で動作するエージェント型コーディングツールです。コードベース全体を理解し、ファイルの編集、コマンドの実行、Gitワークフローの処理を自然言語コマンドで行います。最大20万トークンのコンテキストウィンドウを持ち、システム全体の構造を把握できます。

開発者のボリス・チャーニーが推奨する最も重要な使い方は、Claudeに自身の作業を検証させることです。このフィードバックループにより、出力品質が2〜3倍向上するといいます。また、プランモードで計画を固めてから実装に移る、複数のインスタンスを並列実行するなど、効果的な活用パターンが確立されつつあります。

生産性向上の実態

興味深いことに、Claude Codeというプロダクト自体の開発において、そのコードの90%がClaude Code自身によって書かれています。一方、Anthropic全社レベルでも、CEOダリオ・アモデイが2025年10月に「多くのチームで90%のコードがAIによって書かれている」と述べています。

役割は「コードを書く人」から「AIシステムを管理する人」へとシフトしています。比較優位の原理により、人間は戦略的思考、複雑な問題解決、AIの監督といった高次のタスクに集中できるようになりました。

技術的課題とリスク

AI生成コードには現実的な課題もあります。エントリーレベルのポジションが影響を受けており、人材パイプラインの断絶が懸念されます。また、サイバーセキュリティの観点からも課題が指摘されています。AIが生成するコードには、人間が書くコードと比較してセキュリティ上の脆弱性が含まれやすいという研究結果もあり、AIは効率的ですが、セキュリティや品質の観点からは人間によるレビューと検証が不可欠です。

長期的な視点

GoogleとAnthropicのTPUパートナーシップは、2026年に1ギガワット以上の計算能力を提供する予定です。これはAI業界史上最大級のハードウェア投資の一つです。この計算リソースの拡大は、次世代AIコーディングツールの開発をさらに加速させるでしょう。

ドーガン氏が競合他社の技術を称賛したことも注目に値します。「この業界はゼロサムゲームではない」という彼女の発言は、AI開発における協調的な競争の重要性を示しています。実際、GoogleはAnthropicの投資家でもあり、両社の関係は単純な競争関係ではありません。

innovaTopiaが今このニュースを報じる理由は、AIツールが「人間の仕事を奪う」のではなく、「人間の能力を拡張する」段階に入ったことを示す転換点だからです。専門知識を持つ人間とAIツールの協働により、かつては数ヶ月かかった作業が数時間で完了する時代が、すでに現実のものとなっています。

【用語解説】

分散型エージェントオーケストレーションシステム
複数のAIエージェントを協調させて動作させるための管理システム。各エージェントが特定のタスクに特化し、中央のオーケストレーターがそれらを調整・統制する。カスタマーサポートや複雑なワークフローの自動化などで使用される。

プロダクショングレード
本番環境で実際に使用できる品質と信頼性を持つソフトウェアやシステムのこと。セキュリティ、パフォーマンス、エラー処理などが十分に考慮され、エンドユーザーに提供できる水準にある。

トイバージョン
概念実証や学習目的で作られた簡略化されたプロトタイプ。基本的な機能は動作するが、本番環境で使用するには機能や品質が不十分なもの。

プリンシパルエンジニア
技術組織における上級技術職。技術的な意思決定や設計の責任を持ち、複数のチームや製品にまたがる技術戦略を主導する役割。Googleなどの大手テック企業における高位のエンジニアリングポジション。

エージェント型コーディングツール
単なるコード補完を超え、自律的にタスクを遂行できるAIツール。ユーザーの指示に基づいて、コードの生成、ファイルの編集、テストの実行、デバッグなどを自動的に行う。

コンテキストウィンドウ
AIモデルが一度に処理できる情報量の上限。トークン数で表され、Claude Codeの場合は最大20万トークン。大きいほど、より多くのコードベースや会話履歴を同時に理解できる。

プランモード
Claude Codeの動作モードの一つ。実際のコーディングに入る前に、タスクの計画を立てる段階。ユーザーと対話しながら計画を固めてから実装に移ることで、より質の高い結果が得られる。

【参考リンク】

Claude Code – Anthropic(外部)
ターミナルで動作するエージェント型コーディングツール。最大20万トークンのコンテキストウィンドウを持つ。

Anthropic(外部)
Claude AIを開発するAI安全性研究企業。元OpenAI研究者によって2021年に設立された。

Google Gemini(外部)
Googleが開発したマルチモーダルAIモデル。本記事ではGemini API担当のドーガン氏が登場。

Google Cloud TPU(外部)
Googleの機械学習専用チップ。AnthropicはTPUでClaudeのトレーニングを実施。

Claude Code GitHub(外部)
Claude Codeの公式リポジトリ。インストール方法やプラグイン情報を公開。

【参考記事】

Claude Code Built In An Hour What My Team Had Built In A Year – OfficeChai(外部)
Doganの発言詳細とAnthropicやGoogle、Microsoftの数字を報告。

Is 90% of code at Anthropic being written by AIs? – LessWrong(外部)
Amodeiの予測を検証。

Anthropic CEO says 90% of code written by teams – Yahoo Tech(外部)
Amodeiが2025年10月に多くのチームで90%がAI生成と発言。

How Claude Code is built – Pragmatic Engineer(外部)
Claude Code自体のコードの90%がClaude Codeで書かれていると解説。

Claude Code overview – Claude Code Docs(外部)
Claude Codeの公式ドキュメント。インストール方法と基本的な使い方を説明。

AI Agent Orchestration – IBM(外部)
分散型エージェントオーケストレーションの概念と実装方法を詳細に解説。

【編集部後記】

みなさんは、普段の業務でAIコーディングツールを使われているでしょうか。もし使っているなら、ドーガン氏が語る「専門知識を持つ人間がAIで自分の知見を再構築できる時代」という感覚に、共感される部分があるかもしれません。逆に、まだ使ったことがない方は、この記事を読んでどのような印象を持たれたでしょうか。

AIツールは私たちの仕事を奪うのではなく、むしろ「より高次の課題に集中できる」可能性を示しているように思えます。

投稿者アバター
TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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