街を走りながら、リアルタイムで番組を収録し、電波に乗せて届ける。自動運転EVバスが「移動するラジオ局」に生まれ変わる瞬間が、横浜・みなとみらいで始まります。移動空間は単なる通過点ではなく、新しい体験を生み出すメディアプラットフォームへ。FMヨコハマとマクニカが仕掛ける、前例のない挑戦です。
株式会社マクニカ、横浜エフエム放送株式会社、横浜未来機構、株式会社LEALIANの4団体は、自動運転EVバスを移動型ラジオスタジオとして活用する共同プロジェクト「MOBILE STUDIO MM」を2026年1月下旬から2月上旬に実施する。
みなとみらい地区を走行する自動運転EVバス内でFMヨコハマの番組「Keep Green & Blue」を収録し、1月26日から29日の21時50分から22時に放送する予定である。
また人気番組「Kiss & Ride」のリポーターが走行中のバスから街の魅力を伝える。
1月31日と2月1日開催の「YOXO FESTIVAL 2026」では、ラジオブース仕様に改装された自動運転EVバスへの乗車体験を無料で提供する。
使用するのはNavya Mobility社製の自動運転EVバス「EVO」で、乗車定員12名、最高速度18km/h、自動運転レベル2の車両である。
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FMヨコハマ×マクニカ、みなとみらいで自動運転EVバスを「移動型ラジオスタジオ」として活用する共同プロジェクトを開始
【編集部解説】
自動運転技術とラジオという一見異なる領域が融合する興味深い取り組みが横浜で始まります。このプロジェクトは単なる技術実証ではなく、移動体験そのものに新たな価値を創出しようとする試みです。
自動運転EVバスを活用したメディアコンテンツ制作は国内でも珍しい事例です。従来、ラジオスタジオは固定された空間で番組を制作してきましたが、移動しながらリアルタイムに街の様子を伝えることで、リスナーに臨場感のある体験を届けることができます。FMヨコハマにとって走行中の自動運転EVバスでの収録は初の試みとなり、新しい放送表現の可能性を探る実験的な側面も持っています。
使用される車両はNavya Mobility社製の「EVO」です。この車両は技術的には自動運転レベル4相当の能力を持ちながら、現行法規上はレベル2として運用されます。最高速度18km/h、平均速度15km/h程度という低速走行は、安全性を最優先にした設計であり、同時にラジオ収録という音声メディアにとっても安定した環境を提供します。1回の充電で約9時間または100kmの走行が可能という航続距離は、みなとみらい地区のような限定されたエリアでの運用には十分なスペックです。
このプロジェクトが注目に値するのは、4つの異なる専門性を持つ組織が連携している点です。マクニカは自動運転技術とオペレーション、FMヨコハマはメディアコンテンツ制作、横浜未来機構は地域連携のコーディネート、LEALIANは充電インフラという具合に、それぞれが明確な役割を担っています。
「YOXO FESTIVAL 2026」との連動は、一般市民が自動運転技術に触れる貴重な機会となります。ラジオブース仕様に改装された車両への乗車体験を無料で提供することで、自動運転EVバスへの理解促進と心理的なハードルの低下が期待されます。実際に走行はしませんが、車内で収録された番組を聴くことで、プロジェクトの全体像を体感できる設計となっています。
移動空間の再定義という観点から見ると、このプロジェクトは重要な示唆を含んでいます。自動運転が普及した未来において、移動時間は単なる通過時間ではなく、何らかの体験を享受する時間へと変化する可能性があります。ラジオという音声メディアは、視覚的注意を必要としないため、移動中のエンターテインメントとして親和性が高いメディアです。
地域活性化の側面でも効果が見込まれます。走行しながら街の魅力を発信することで、観光客や地域住民の回遊性向上につながる可能性があります。音声による情報発信は、視覚だけでは伝わりにくい街の雰囲気や文化を伝える手段として有効です。
ただし課題も存在します。自動運転レベル2という制約は、常に運転手による監視が必要であることを意味します。完全な自動運転が実現されるまでは、人的コストを削減することは難しいでしょう。また低速での走行は安全面では利点ですが、実用的な移動手段としての魅力を損なう可能性もあります。
今後の展開として、このモデルが他の地域や用途に展開される可能性があります。例えば観光地での移動型ガイドシステム、イベント会場での情報発信プラットフォーム、あるいは高齢者向けの移動サービスなど、応用範囲は広いでしょう。スマートシティの文脈では、移動体がデータ収集のノードとして機能し、都市全体の最適化に貢献することも考えられます。
公益信託みなとみらい21まちづくりトラストからの助成を受けている点も注目すべきです。公的支援を受けながら、民間企業が協働して新しいモビリティサービスを実証するこの枠組みは、日本における自動運転実装の一つのモデルケースとなり得ます。
【用語解説】
自動運転レベル2
運転支援システムがアクセル、ブレーキ、ステアリングの一部を制御するが、ドライバーは常に運転を監視し、いつでも介入できる状態を維持する必要がある。本プロジェクトで使用されるEVOは技術的にはレベル3相当の能力を持つが、日本の現行法規ではレベル2として運用される。
自動運転レベル4
特定の条件下において、システムがすべての運転タスクを実施し、ドライバーの介入を必要としない完全自動運転。限定されたエリアや条件内であれば、運転手なしでの走行が可能となる。
YOXO(よくぞ)
「Yokohama Open X Organization」の略称で、横浜をフィールドにしたイノベーション創出のムーブメントおよびエコシステムを表す言葉。企業、大学、行政、スタートアップなどが組織の垣根を越えて連携し、未来都市の実現を目指す取り組みの総称である。
MaaS(マース)
「Mobility as a Service」の略称で、様々な交通手段を統合し、利用者にシームレスな移動サービスを提供する概念。自動運転技術やICT技術を活用して、移動の最適化と利便性向上を図る次世代交通システムである。
みなとみらい21まちづくりトラスト
横浜みなとみらい21地区の良好な都市環境の形成と地域活性化を目的とした公益信託。企業や団体からの寄付金を原資として、まちづくり活動や調査研究、イベント開催などに助成を行っている。
【参考リンク】
FMヨコハマ公式サイト(外部)
1985年開局の独立系FMラジオ局。周波数84.7MHz。神奈川県を放送対象として地域密着の番組を提供し、2025年12月に開局40周年を迎える。
株式会社マクニカ(外部)
半導体、サイバーセキュリティ、自動運転などの先端技術を扱う技術商社。横浜市に本社を置き、自動運転EVバスの実証実験や社会実装を推進している。
横浜未来機構(外部)
横浜をフィールドにイノベーション創出を推進する産学公民連携組織。スタートアップ支援、実証実験のコーディネート、未来都市の実現を目指す活動を展開。
YOXO FESTIVAL 2026公式サイト(外部)
2026年1月31日・2月1日開催のイノベーション都市型フェス。企業、スタートアップ、アカデミア、個人が最先端技術を出展し、未来体験を提供するイベント。
株式会社LEALIAN(外部)
2021年設立のエネルギーベンチャー。小型バッテリーのシェアリングモデルによる分散型エネルギーネットワーク構築を目指し、Smart Area構想を推進している。
Navya Mobility自動運転EVバス(外部)
フランスNavya Mobility社製の自動運転EVバス。レベル4対応のEVOは最大15名乗車可能で、1回の充電で約9時間(100km)の走行が可能。
【参考記事】
マクニカ、子会社である仏Navya Mobility製の新型自動運転EVバス「EVO3」を発表(外部)
マクニカが2025年10月に発表した最新型自動運転EVバス「EVO3」に関する情報。従来モデルから安全性と走行性能が向上し、最高時速30kmで都市交通に対応する。
自動運転レベル4対応のEVバス「NAVYA EVO」が定常運行を開始。予約不要で運賃無料(外部)
茨城県常陸太田市での定常運行開始に関する記事。EVOの主要諸元や実用化に向けた取り組みが詳述されている。
横浜未来機構 公式サイト(外部)
横浜未来機構の設立趣旨、活動内容、YOXOの概念について解説。イノベーション創出の推進機関としての役割が説明されている。
YOXO FESTIVAL 2026開催情報(外部)
2026年のイベント詳細。出展内容、開催日程、会場情報が掲載されており、自動運転EVバスの展示も告知されている。
【編集部後記】
自動運転技術とラジオという、一見すると結びつかない二つの要素が融合することで、移動体験そのものが新しいメディアプラットフォームへと生まれ変わろうとしています。みなとみらいの街を走りながらリアルタイムで番組を収録し、その場の空気感や街の息吹を直接届けるこの試み。それは単なる技術実証を超えて、未来の都市における「移動」と「体験」の関係性を問い直す挑戦でもあります。
YOXO FESTIVAL 2026では、実際にラジオブース仕様の自動運転EVバスに乗車し、収録された番組を聴くことができます。こうした新しいモビリティサービスが、私たちの日常にどのような変化をもたらすのか。みなさんはこの「走るラジオスタジオ」から、どんな未来の可能性を感じ取るでしょうか。



































