YouTubeは2026年1月14日、ストリーム内ブースト機能「Promote」の新たなアップデートを発表した。今回のアップデートにより、クリエイターは興味・関心に基づいて視聴者に動画を表示できるようになる。ゲーマー、美容愛好家、旅行好きといった特定のコミュニティに向けてコンテンツをプロモートすることが可能だ。興味・関心ターゲティングは現段階ではデスクトップでのプロモーション設定時にのみ利用可能で、まもなくモバイルアプリにも導入される予定である。
また、YouTubeは「Ingredients(イングリーディエンツ)」と呼ばれる新機能もテスト中だ。この機能では、最大3枚の画像を選択し、それらをVeo生成AIモデルを使用して8秒の動画クリップに変換できる。Googleは今週、VeoAI動画生成システムの大規模アップデートを発表しており、これがYouTubeに統合されている。このアップデートはVeo3.1の拡大展開の一環である。
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YouTube Adds More Promote Targeting Options, Image-to-Video AI

【編集部解説】
今回のYouTubeのアップデートは、単なる機能追加ではなく、クリエイターエコノミーにおける広告とコンテンツ制作の両面で重要な転換点を示しています。
まず、プロモート機能への興味・関心ベースターゲティングの追加について考察します。これまでクリエイターが利用できた広告ターゲティングは、年齢、性別、地域といった人口統計学的な属性に限られていました。しかし今回の更新により、Googleのエコシステム全体から収集した匿名化されたデータを活用し、視聴者の実際の関心事に基づいてリーチできるようになります。これは、Google広告で長年提供されてきた高度なターゲティング機能が、ようやくクリエイター向けの簡易ツールにも開放されたことを意味します。
初期導入者のデータによれば、従来の人口統計ターゲティングと比較して2倍から3倍のエンゲージメント率を記録しており、一部のニッチなクリエイターでは購読者獲得コストが4倍改善したという報告もあります。これは、チャンネル立ち上げ期の小規模クリエイターにとって、限られた予算でより効率的にオーディエンスを構築できる可能性を示唆しています。
一方、Veo3.1の「Ingredients」機能は、生成AI動画の根本的な課題に取り組んでいます。これまでAI動画生成の最大の弱点は、シーン間でのキャラクターや背景の一貫性を保つことでした。今回のアップデートでは、最大3枚の参照画像を提供することで、キャラクターの外見や背景の質感を複数シーンにわたって維持できるようになりました。
特に注目すべきは、縦型動画のネイティブサポートです。YouTube ショートやTikTokなどのプラットフォームでは、モバイル視聴が全体の75%以上を占めており、縦型動画が標準となっています。これまでクリエイターは横型で生成した動画をトリミングする必要があり、画質の劣化やフレーミングの問題が生じていました。ネイティブ縦型生成により、AIがモバイル画面に最適化された構図で動画を生成できるようになり、ワークフローの効率が大幅に向上します。
また、1080pおよび4Kへのアップスケーリング機能は、プロフェッショナルな制作環境への対応を意図しています。これにより、Veoはソーシャルメディア向けの実験的ツールから、放送品質のコンテンツ制作にも対応できる本格的なツールへと進化しつつあります。
ただし、これらの技術進歩には慎重な視点も必要です。AI生成動画が手軽になればなるほど、実際の体験や撮影に基づくコンテンツとの境界が曖昧になります。GoogleがSinthIDという透かし技術を導入し、Geminiアプリで動画の検証機能を提供しているのは、この懸念への対応と言えます。
今後、クリエイターは「何を実際に撮影し、何をAIで補完するか」という新たな判断を迫られることになるでしょう。現時点では8秒のクリップに限定されているものの、技術の進歩を考えれば、より長尺の生成が可能になるのは時間の問題です。クリエイティブツールとしてのAIと、オーセンティシティ(真正性)の保持という、一見矛盾する両立が、これからのコンテンツ制作における重要なテーマになっていくはずです。
【用語解説】
Promote(YouTube Promote)
YouTubeが提供するクリエイター向けの簡易広告ツール。複雑な広告設定を必要とせず、数ステップで自分の動画をYouTube内で宣伝できる機能。従来は年齢、性別、地域などの基本的な属性でしかターゲティングできなかったが、今回のアップデートで興味・関心ベースのターゲティングが可能になった。
Veo 3.1
Googleが開発したAI動画生成モデル。テキストプロンプトや参照画像から動画を自動生成する技術で、2025年10月に初版が発表され、2026年1月に大幅なアップデートが実施された。画像の一貫性や垂直フォーマット対応など、実用性を重視した改良が加えられている。
イングリーディエンツ(Ingredients)
Veo3.1の「Ingredients to Video」機能の通称。最大3枚の参照画像(ingredients)を材料として提供し、それらを組み合わせて8秒の動画クリップを生成する機能。キャラクター、背景、オブジェクトなどの視覚的一貫性を保ちながら動画を作成できる。
クリエイターエコノミー
YouTuber、インフルエンサー、配信者などの個人クリエイターが、コンテンツ制作を通じて収益を得る経済圏。広告収入、スポンサーシップ、商品販売など多様な収益化手段が存在し、近年急速に拡大している市場。
エンゲージメント率
視聴者がコンテンツに対してどれだけ積極的に反応したかを示す指標。いいね、コメント、シェア、視聴時間などの行動を数値化したもの。広告やプロモーションの効果測定に使用される。
アップスケーリング
低解像度の画像や動画を、AI技術などを用いて高解像度に変換する技術。Veo3.1では、生成された動画を1080pや4Kに高画質化できる機能として実装されている。
SynthID
Googleが開発したAI生成コンテンツ用の電子透かし技術。人間の目には見えないが、検証ツールで検出可能なマークを埋め込むことで、AI生成コンテンツと実写コンテンツを識別できるようにする。透明性確保のための取り組み。
オーセンティシティ(Authenticity)
真正性、本物らしさを意味する概念。コンテンツ制作の文脈では、実際の体験や撮影に基づいた「本物」のコンテンツであることの価値を指す。AI生成が容易になる中で、創作物の真正性をどう担保するかが課題となっている。
【参考リンク】
YouTube(ユーチューブ)(外部)
世界最大の動画共有プラットフォーム。月間20億人以上のユーザーを持つ。
YouTube Shorts(ユーチューブショート)(外部)
最大60秒の縦型動画を投稿・視聴できるプラットフォーム。
Google AI(グーグルAI)(外部)
Googleの人工知能研究開発部門。Veoの開発を担当。
Google DeepMind(グーグルディープマインド)(外部)
Google傘下のAI研究機関。Veoの開発を主導している。
Gemini(ジェミニ)(外部)
Googleの対話型AIサービス。Veo3.1の機能にアクセス可能。
【参考記事】
YouTube’s Interest-Based Ad Targeting Updates(外部)
興味関心に基づくROI向上の具体的データを紹介。
Veo 3.1 Ingredients to Video(外部)
Google公式ブログによるVeo3.1の発表記事と技術詳細。
YouTube gives creators smarter ad targeting(外部)
プロモート機能の興味・関心ターゲティング追加について解説。
Google upgrades AI video generation with Veo 3.1(外部)
Veo3.1のアップデートについて技術的な詳細を解説。
【編集部後記】
AIが8秒の動画を生成できるようになった今、皆さんは「本物の体験」と「生成されたコンテンツ」の境界線をどこに引きますか。クリエイターとして、あるいは視聴者として、この技術をどう捉えているでしょうか。
私たち編集部も、効率化ツールとしてのAIと、創作における真正性のバランスについて日々考えています。YouTubeのこれらの新機能は、コンテンツ制作の民主化を進める一方で、「何が本物か」という問いを私たちに突きつけています。皆さんのご意見やお考えを、ぜひSNSで共有していただければ嬉しいです。



































