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モスバーガー、AIドライブスルー実証実験を開始—AI Order Thruでハイブリッド応対を実現

[更新]2026年1月22日

モスバーガー、AIドライブスルー実証実験を開始——AI Order Thruでハイブリッド応対を実現

McDonald’sが撤退したAIドライブスルーに、モスバーガーが新たなアプローチで挑戦する。AIと人間の「ハイブリッド応対」は、完全自動化が抱える課題を乗り越えられるのか。


株式会社モスフードサービス(代表取締役社長:中村栄輔)は2026年1月21日、AIドライブスルーの実証実験を開始した。同社は2025年12月に株式会社New Innovations(代表取締役:中尾渓人、山田奨)と次世代型店舗開発に向けたAI活用のパートナーシップを締結しており、今回がその具体的施策となる。

実験ではNew Innovationsが開発した音声対話AIシステム「AI Order Thru」を活用し、AIが受注を担い店舗スタッフがサポートする「ハイブリッド応対」方式を採用する。実施店舗はモスバーガー吉川美南店(埼玉県吉川市美南4丁目1-6)で、2026年度中に合計5カ所程度で実証実験を行い、複数店舗での常設を目指す。

将来的にはカロリー指定でのメニュー提案や、キャンペーン期間中のキャラクター応答などの展開を視野に入れる。

From: 文献リンクAIドライブスルーの実証実験を開始

【編集部解説】

モスバーガーが採用した「ハイブリッド応対」は、欧米のAIドライブスルーが直面した課題への明確な回答です。McDonald’sは2024年6月、IBMと共同で展開していたAIドライブスルーを100店舗以上から撤退させました。音声認識の精度不足により、注文ミスが頻発し、顧客満足度が低下したためです。

業界調査によれば、ドライブスルー注文では1割以上で何らかの不正確さが生じるとされており、完全な正確性を維持することは容易ではありません。AIによる完全自動化では、方言やアクセント、雑音環境下での音声認識、注文の訂正や変更への対応が困難でした。特に「ビッグマックのピクルス抜き…やっぱり多めで」といった途中変更に対応できず、顧客体験を損なうケースが目立ちました。

モスバーガーの実証実験は、AIに受注の第一段階を任せ、店舗スタッフがサポートする方式です。これにより、AIの処理速度と人間の柔軟な判断力を組み合わせられます。New Innovationsが開発した「AI Order Thru」は、ブランドごとのガイドラインに沿った対話設計を特徴としており、モスバーガーが大切にする「真心と笑顔のサービス」という企業理念をAI応対にも反映できる設計になっています。

日本の飲食業界では、深刻な人手不足が続いています。2025年8月時点で、飲食物調理従事者の有効求人倍率は2.37倍、接客・給仕職は2.42倍と、全体平均の1.18倍を大きく上回ります。さらに、飲食店マネージャーの約30%が週60時間以上労働しており、過労死リスクの水準に達しています。

将来的には、「500キロカロリー以下のセットメニュー」といった条件指定でのメニュー提案や、キャンペーン期間中のキャラクター音声による応対など、AI特有の付加価値も視野に入れています。これは単なる省力化ではなく、顧客体験の拡張という位置づけです。

ただし、AIドライブスルーには潜在的なリスクもあります。システムダウン時のバックアップ体制、プライバシー保護、音声データの取り扱い、高齢者や障がい者への配慮などが今後の課題となるでしょう。2026年度中に5カ所での実証実験を経て、これらの課題への対応策を検証していく計画です。

【用語解説】

AIドライブスルー
ドライブスルーの注文受付にAI音声認識システムを導入し、顧客との対話を自動化する仕組みである。従来は店舗スタッフがインターホン越しに注文を受けていたが、AIが音声を認識してオーダーを処理する。

ハイブリッド応対
AIと人間のスタッフが協働して接客を行う方式である。AIが注文の第一段階を担当し、複雑な要望や修正が必要な場合にスタッフがサポートする。完全自動化ではなく、両者の強みを組み合わせたアプローチである。

音声対話AI
人間の音声を認識し、自然言語で会話を行うAI技術である。単なる音声認識だけでなく、文脈を理解して適切な応答を返す能力を持つ。チャットボットの音声版と考えるとわかりやすい。

有効求人倍率
求職者1人あたりに何件の求人があるかを示す指標である。1.0を超えると求人数が求職者数を上回り、人手不足の状態を示す。数値が高いほど労働力不足が深刻である。

OMO(Online Merges with Offline)
オンラインとオフラインの境界をなくし、統合された顧客体験を提供する概念である。実店舗とデジタル技術を融合させ、シームレスなサービスを実現する。

【参考リンク】

モスフードサービス企業サイト(外部)
モスバーガーを展開する株式会社モスフードサービスの公式企業サイト。会社概要、IR情報、ニュースリリースなどを掲載している。

New Innovations公式サイト(外部)
OMOソリューションやロボティクス技術を提供する企業。AI Order ThruやBurger Cookerなどの自動化プロダクトを開発している。

AI Order Thru製品情報(外部)
New Innovationsが開発した実店舗向け音声対話AIシステムの詳細情報。モスバーガーでの実証実験に関するプレスリリースを掲載している。

【参考記事】

McDonald’s is ending its drive-thru AI test(外部)
McDonald’sは2024年6月にIBMと共同展開していたAIドライブスルーを100店舗以上から撤退。音声認識の精度不足による注文ミスが原因。

McDonald’s ends AI drive-thru orders — for now(外部)
McDonald’sは2024年7月までにAIドライブスルー実験を終了。顧客からの注文ミスに関する苦情が多く、SNSでは誤注文の動画が拡散された。

We Need to Overcome These 8 Problems With Fast-Food Technology(外部)
ファストフード店の注文精度は最高でも89.6%にとどまり、約5件に1件は何らかのミスが発生。テクノロジー導入における課題を指摘。

【2025】飲食店の人手不足の解決策|原因と対策をわかりやすく解説(外部)
2025年8月時点で飲食物調理従事者の有効求人倍率は2.37倍、接客・給仕職は2.42倍と、全体平均の1.18倍を大きく上回る状況。

11 QSR Chains Using AI Drive-Thru Technology (and What We Can Learn)(外部)
AIドライブスルーの主な課題として、方言やアクセント、雑音環境下での音声認識、注文の訂正や変更への対応の困難さを指摘。

Nearly 30% of Japan’s Restaurant Managers Work 60-Hour Weeks(外部)
日本の飲食店マネージャーの約30%が週60時間以上労働しており、過労死リスクの水準に達している。労働環境の改善と業務効率化が急務

【編集部後記】

AIと人間の「ハイブリッド応対」という発想は、テクノロジーとの付き合い方を考える上で興味深い視点です。私たち自身も日常で、ChatGPTなどのAIツールと協働する機会が増えています。

完全自動化を目指すのではなく、AIと人間がそれぞれの得意分野を活かす——この考え方は、ドライブスルーに限らず、あらゆる業務に応用できるかもしれません。みなさんの職場や生活では、どんな場面でAIとの「ハイブリッド」が活きると思いますか。ぜひ一緒に考えてみたいです。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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