ファストフードチェーンSteak n Shakeは、2026年3月1日から直営店舗の時給従業員に対し、労働時間1時間あたり0.21ドルのビットコインボーナスを支給すると発表した。報酬は2年後に権利が確定する。
このボーナスは連邦最低賃金の約1~3%に相当し、ビットコイン報酬アプリFoldとの提携により運営される。同社は2025年5月に全米店舗でLightning Network経由のビットコイン決済を導入し、COOダン・エドワーズによればカード処理手数料が半減し、2025年第2四半期の既存店売上高は10%以上増加した。先週には1000万ドル相当のビットコインを企業資産に追加している。
週30時間働く従業員は、ビットコイン価格が安定している場合、年間約327ドルのBTCを獲得できる。
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Fast-food chain Steak n Shake to pay hourly workers a bitcoin bonus
【編集部解説】
このビットコインボーナス制度で最も注目すべきは、2年間のベスティング期間です。従業員は働いた分のビットコインをすぐには受け取れず、2年間勤続することで初めてアクセスできます。レストラン業界の離職率が年間70%を超える現状を考えると、これは単なる報酬制度ではなく、人材定着のための戦略的投資と言えるでしょう。
技術面では、同社が2025年5月から導入したLightning Networkの活用が重要な意味を持ちます。従来のビットコイン決済では手数料が高く確認に時間がかかりましたが、Lightning Networkは1セント未満の手数料で即時決済を実現し、ファストフード業界のような薄利多売のビジネスモデルでも実用的な選択肢となりました。
ただし、従業員側には注意点もあります。米国内国歳入庁(IRS)はビットコインを資産として扱うため、ベスティング時点で課税対象となり、適切な税務書類の提出が必要になります。また、ビットコイン価格の変動性も考慮すべき要素です。2年後に受け取る時点で価値が上昇している可能性もあれば、下落しているリスクもあるためです。
Steak n Shakeの事例は、企業資産のビットコイン化と従業員報酬の暗号資産化を同時に進める先進的なモデルとなっています。今後、他の外食チェーンや小売業がこの動きに追随するかどうかが、実体経済におけるビットコイン普及の試金石となるかもしれません。
【用語解説】
Lightning Network
ビットコインのブロックチェーン上に構築された第2層プロトコルである。オフチェーンで取引を処理することで、ほぼ即時かつ低コストの送金を実現する。従来のビットコイン取引では手数料が高く確認に時間がかかったが、Lightning Networkは1セント未満の手数料で決済が可能となり、小売業での実用性を大幅に向上させた。
ベスティング期間(vesting period)
報酬や株式オプションなどが従業員に完全に帰属するまでの待機期間を指す。今回のケースでは2年間勤続することで、蓄積されたビットコインボーナスへのアクセス権が確定する。テクノロジー企業のストックオプション制度と同様の仕組みであり、人材定着を促進する目的がある。
COO(Chief Operating Officer)
最高執行責任者。企業の日常業務や運営全般を統括する役職である。CEOの次に位置し、事業戦略の実行や業務効率化を担当する。
既存店売上高(same-store sales)
一定期間以上営業している店舗のみを対象とした売上高の指標である。新規出店の影響を除外することで、既存事業の実質的な成長率を測定できる。小売業や外食産業で重要な業績指標として用いられる。
【参考リンク】
Steak n Shake公式サイト(外部)
創業89年以上の歴史を持つアメリカの老舗ファストフードチェーン。ステーキバーガーと手作りミルクシェイクを主力商品とする。
Fold公式アプリ(外部)
ビットコインの購入、売却、送金機能に加え、日常の買い物でビットコインリワードを獲得できる個人向け金融アプリ。
Lightning Network解説(Simplex)(外部)
ビットコインのスケーラビリティ問題を解決する第2層プロトコルの仕組みを詳細に解説する技術資料。
【参考動画】
Steak ‘n Shake’s Bitcoin Adoption Story | Dan Edwards
The Bitcoin Conference公式チャンネル(7分40秒)
Steak n ShakeのCOOダン・エドワーズが、同社がビットコイン決済を導入した経緯と成果を語る。カード処理手数料が半減し、若い世代の顧客獲得に成功した事例を紹介。
How To Earn Bitcoin Back On Your Phone With The Fold App
Altcoin Daily(4分32秒)
Foldアプリの使い方を実際の画面操作で解説。ギフトカード購入によるビットコインリワード獲得の仕組みと、紹介プログラムによる報酬の受け取り方を具体的に示している。
【参考記事】
Steak ‘n Shake Announces A Bitcoin Bonus For Employees(外部)
時給0.21ドルのビットコインボーナスプログラムの詳細を報じる記事。週30時間勤務で年間約327ドル相当のBTCを獲得できる試算を提示。
Bitcoin Bonus Revolution: Steak ‘n Shake’s Bold Move to Pay Part of Wages in BTC(外部)
レストラン業界の高い離職率(年間70%超)に対する人材定着策としてのビットコインボーナスの意義を分析。
Steak ‘n Shake Introduces Bitcoin Payments via Lightning Network at U.S. Locations(外部)
2025年5月のLightning Network導入時の詳細を伝える記事。1セント未満の手数料と即時決済を実現した技術的背景を解説。
Steak ‘n Shake Embraces Bitcoin Lightning Network Payments(外部)
Lightning Networkのスケーラビリティとプライバシー保護機能について技術的な観点から分析した詳細レポート。
【編集部後記】
日本で同様の制度が導入される日も近いかもしれません。暗号資産に限らず、前澤友作さんのKABU&のような極小株式をボーナスとして付与し、ベスティング期間を1年程度に設定するアイデアも考えられます。
法的には通常の賃金契約にプラスアルファであれば問題なさそうですが、労働基準法における「賃金の通貨払い原則」との兼ね合いや、税務上の取り扱いなど、実務面での整理が必要になるでしょう。従業員にとっては資産形成の機会となり、企業にとっては離職率の低下につながる。両者にメリットがある仕組みだけに、日本での先行事例が現れるのを注目していきたいところです。



































