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サンディエゴ・コミコン、2026年イベントでAI生成アート完全禁止へ:アーティスト主導の反発が方針転換を実現

サンディエゴ・コミコンは2026年のアートショーから、AIによって部分的または全体的に生成された作品の展示を完全に禁止すると発表した。

以前はAIアートワークの展示が明示と非販売を条件に認められていたが、新規則では持ち込みも不可となった。この決定は404 Mediaの報道によるとアーティスト主導の反発に応えたものだ。

『コナン・ザ・バーバリアン』や『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のライターであるJim Zubはこの決定を支持し、他のコンベンションも追随することを期待している。

生成AIの使用は近年、コミックやポップカルチャー分野で論争を呼んでおり、2023年の俳優ストライキでも中心的な争点となった。

NetflixのCEOTed Sarandosは2025年の決算説明会でAIを称賛したが、ゲーム業界ではIndie Game Awardsが『Clair Obscur: Expedition 33』のAI製プレースホルダーアセット使用により2つの賞を取り消すなど、反発が続いている。

From: 文献リンクSan Diego Comic-Con Draws a Line: No AI Art Allowed at 2026 Event

【編集部解説】

サンディエゴ・コミコンのAIアート完全禁止という決定は、実は2年越しの物語の結末です。

驚くべきことに、AIアートの展示を認めるポリシーは2024年頃から存在していました。しかし誰もそれに気づかず、2026年1月中旬になってようやく発覚したのです。

発覚の契機となったのは、Marvelの『ブラックパンサー』や『ドクター・ストレンジ』などでコンセプトアーティストを務め、Stability AI、Midjourney、DeviantArtを相手に著作権侵害の集団訴訟を起こしているKarla Ortizらの声でした。Ortizは自身の作品がMidjourneyで2,500回以上も無断で模倣されている現実に直面し、「tone deaf(空気が読めない)」と痛烈に批判しました。

アーティストコミュニティからの激しい反発を受けて、コミコンの主催者は24時間以内にポリシーを180度転換します。新規則では「AIによって部分的または全体的に作成された素材は、アートショーでは許可されない」と明記されました。判断の最終権限は、38年間にわたってアートショー・コーディネーターを務めているLaFrance Braggが持っています。

この動きは決して孤立したものではありません。GalaxyCon(2025年9月)、Anthrocon(2024年)など、他のコンベンションも既にAI禁止の方針を打ち出しています。Dragon Conに至っては、2025年にAIプリントを販売していたベンダーを警察が退場させるという強硬措置に出ました。

ゲーム業界でも同様の動きが加速しています。Indie Game Awardsは2025年12月、ヒットRPG『Clair Obscur: Expedition 33』から「Game of the Year」と「Debut Game」の2つの賞を剥奪しました。開発元のSandfall Interactiveは応募時に「AI不使用」と同意していましたが、実際には2022年にAI生成のプレースホルダーテクスチャーを使用していたことが判明したのです。これらは2025年4月のリリース直後にパッチで差し替えられましたが、規則違反という事実は変わりません。

一方で、エンターテインメント業界全体を見渡すと、AI活用に対する姿勢は二極化しています。NetflixのCEOテッド・サランドスは2025年の決算説明会で「AIはクリエイターが映画やシリーズをより良く作るための信じられないほどの機会」と称賛し、アルゼンチンのSFシリーズ『El Eternauta』で既にAI生成画像を使用しています。

この対立の根底にあるのは、著作権とフェアユースをめぐる未解決の法的問題です。Ortizらの訴訟は現在も継続中で、2024年8月には連邦判事が一部の主張を認めて訴訟の前進を許可しました。判事は、Stable DiffusionがLAIONデータセット(50億枚の画像を含む)から作られ、「著作物の圧縮コピーを含む可能性」があり、「意図的に侵害を促進するよう設計された」可能性を認めています。

AIの学習データとして無断で使用されたアーティストたちは、今や自分の作品を元にした模倣品と競争を強いられています。Ortizが指摘するように、AIは単なる技術ではなく「私の時間、経験、人生、訓練、感情、家族、友人の気持ち」の集積である個人のスタイルを、同意なく搾取しているのです。

サンディエゴ・コミコンの決定は、年間数十万人が訪れる世界最大級のポップカルチャーイベントが「人間性こそが最も重要」というメッセージを発したことを意味します。Jim Zubが言うように「アーティスト、ライター、俳優、その他のクリエイティブが対面で集まり、ポップアートを祝うのは、方程式の人間の部分が最も重要だから」なのです。

ただし、この問題は依然として進行形です。AI技術の進化は止まらず、判別が困難になるにつれて、禁止ポリシーの実効性が問われるでしょう。また、制作コスト削減を狙う企業側の圧力も続くと予想されます。

サンディエゴ・コミコンの決定は象徴的な一歩ですが、クリエイティブ産業全体での長期的な解決には、技術開発者、アーティスト、法制度が協調して取り組む必要があります。この戦いは、まだ始まったばかりなのです。

【用語解説】

生成AI(Generative AI)
テキストや画像などのコンテンツを自動生成する人工知能技術である。Stable Diffusion、Midjourney、DALL-Eなどが代表例で、テキストプロンプトから画像を生成できる。学習データとして大量の既存作品を使用するため、著作権問題が議論されている。

LAIONデータセット
機械学習研究者Christoph Schuhmannらが作成した、約50億枚の画像を含むオープンソースデータベースである。Stability AIとRunway AIがStable Diffusionの学習に使用した。インターネットから画像を「スクレイピング」(自動収集)して構築されたため、著作権者の同意なく作品が含まれている点が訴訟の焦点となっている。

フェアユース(Fair Use)
米国著作権法における例外規定で、限定的な条件下での著作物の無許可使用を認める。教育、批評、報道、研究などが該当するが、AI学習データとしての使用がこれに当たるかは法廷で争われている。判断には使用目的、性質、量、市場への影響などが考慮される。

Stable Diffusion
Stability AIとRunway AIが開発したオープンソースの画像生成AIモデルである。LAIONデータセットを使って学習され、MidjourneyやDeviantArtのDreamUpなど、他の多くのAIツールの基盤技術となっている。

【参考リンク】

Comic-Con International: San Diego(外部)
サンディエゴ・コミコンの公式サイト。年間数十万人が訪れる世界最大級のポップカルチャーイベントの情報を提供。

404 Media(外部)
今回のAI禁止ポリシー変更を詳しく報じた独立系テクノロジーメディア。調査報道に強みを持つ。

Midjourney(外部)
テキストから高品質な画像を生成するAIサービス。Discord上で動作し、アーティストの名前を指定したスタイル模倣が可能。

Stability AI(外部)
Stable Diffusionを開発した企業。オープンソース戦略でAI画像生成技術を広く普及させた。

LAION(外部)
50億枚の画像を含むデータセットを作成した非営利研究組織。AI学習用のオープンソースデータを提供している。

【参考記事】

Comic-Con Bans AI Art After Artist Pushback(外部)
404 Mediaによる詳細な報道。2年間存在していたAI許可ポリシーが発覚し、アーティストの反発により24時間以内に完全禁止に転換した経緯を報じている。

San Diego Comic-Con Bans AI-Generated Art from 2026 Show Amid Protests(外部)
Karla Ortizらアーティストの抗議活動の詳細と、GalaxyCon、Anthroconなど他のコンベンションの先行事例を解説。

After Two Years Of No-One Noticing, SDCC Changes Its A.I. Art Policy(外部)
Bleeding Coolの報道。AIアートポリシーが2年間気づかれずに存在していた事実と、38年間アートショー・コーディネーターを務めるLaFrance Braggの役割について言及。

Judge Advances Copyright Lawsuit by Artists Against AI Art Generators(外部)
Karla OrtizらのStability AI、Midjourney、DeviantArtに対する集団訴訟について、2024年8月の連邦判事の判断を詳しく報じている。

Expedition 33 Has Been Disqualified from the Indie Game Awards 2025 Due Use of Gen AI(外部)
Clair Obscur: Expedition 33が2025年12月にIndie Game Awardsから2つの賞を剥奪された経緯を報道。プレースホルダーテクスチャーのAI使用と規則違反の詳細。

Clair Obscur: Expedition 33 Has Indie Game Awards Revoked Due To Generative AI Use(外部)
Sandfall Interactiveが応募時に「AI不使用」と同意していたにもかかわらず、El Paíとのインタビューで使用を認めていた事実を報じている。

No, teaching AI to copy an artist’s style isn’t ‘democratization’(外部)
Karla Ortizへのインタビュー記事。自身の作品がMidjourneyで2,500回以上模倣されている現実と、「私の時間、経験、人生」が無断で搾取されている苦悩を語っている。

【編集部後記】

クリエイティブな仕事に携わる方にとって、今回のサンディエゴ・コミコンの決定は大きな意味を持つ出来事かもしれません。AIが創作プロセスをどこまで変えるのか、そして人間のクリエイティビティの価値がどう再定義されるのか。この問いは、アーティストだけでなく、私たち全員に関わるテーマです。あなたは、創作における「人間らしさ」とは何だと考えますか。技術の進化と創作者の権利保護、この両立は可能でしょうか。皆さんのご意見をぜひお聞かせください。

投稿者アバター
Satsuki
テクノロジーと民主主義、自由、人権の交差点で記事を執筆しています。 データドリブンな分析が信条。具体的な数字と事実で、技術の影響を可視化します。 しかし、データだけでは語りません。技術開発者の倫理的ジレンマ、被害者の痛み、政策決定者の責任——それぞれの立場への想像力を持ちながら、常に「人間の尊厳」を軸に据えて執筆しています。 日々勉強中です。謙虚に学び続けながら、皆さんと一緒に、テクノロジーと人間の共進化の道を探っていきたいと思います。

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